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25、保育

公的責任でどの子も安心して通える保育制度へ ~規制緩和からの転換を~

2024年10月

 現在、約271万人の子どもたちが保育施設等を利用し、多くの時間をその施設で過ごしています。共働きは年々増え続け、保育所等の利用率も大きく伸びています。就学前の子どもの利用率は54.1%になり、1、2歳児の保育利用率は59.3%です。この10年でみても全体で18.2ポイント増え、0~2歳児に限れば24.2ポイントと大きく増えています。多くの子が利用する保育施設は、子どもたちの成長と発達を保障できる安心安全な環境が何より求められています。

この4月、保育士の配置基準の改善が実現しました。低すぎる保育士の配置基準の引き上げは長年の保育士等現場の切実な要望で、76年ぶりに4、5歳児の基準が、30対1から、25対1へ改善したことは大きな一歩です。

自民党政権は、長年「基準緩和」と「詰め込み」で、公的責任を投げ捨て民間・企業頼みの安上がりな保育を推進してきました。2015年からは「子ども・子育て支援新制度」(以下「新制度」)を導入し、市町村の保育の公的責任を後退させ、規制緩和と企業参入を拡大してきました。ビルの一室、園庭・ホールのない保育園が増え、保育施設内での子どもの死亡事故は繰り返し起き、重大事故は増加しています。保育士の働き方も厳しさを増し、人手不足が深刻で余裕がなく、忙しさからいつ事故が起きてもおかしくないと日々緊張が張り詰める中保育を担っています。

政府は、保育の公的責任を投げ捨てるやり方を拡大してきました。待機児童対策も認可保育所の増設をその柱に据えず、小規模保育の推進と認可外の企業主導型保育を推進し導入以来11万人分作られました。地域の保育や子育て支援の要となる公立保育所の統廃合・民間委託を促進し、認可保育所が足りない地域でも進められ大きな問題になっています。

2023年に「こども未来戦略」が閣議決定され、「子ども・子育て支援加速化プラン」をとりまとめました。その中に、6か月~2歳を対象とする「こども誰でも通園制度」の創設や、配置基準の改善が挙げられました。改定子ども・子育て支援法が成立し、医療保険の被保険者等から支援金を含めて保険料を徴収する「こども・子育て支援金制度」を創設し、新たな国民負担で財源を確保するというやり方に、あまりにも税の公平性に欠くと強い批判があるのは当然です。財源は、防衛費増強に使うのではなく、子ども・子育てに使うことが求められています。

子どもたちの成長・発達の面からも、保育士が安心して保育ができるゆとりある保育基準をつくることがどうしても必要です。これまでの自民党政治が進めてきた規制緩和中心の安上がり保育から、保育拡充路線に転換することが必要です。

1、配置基準を改善し、すべての園で保育士を増やします

4、5歳の配置基準が76年ぶりに改善されたことは前進です。しかし、1歳児の基準改正(5対1)は先延ばしとなっています。そして、4、5歳児についても「当面の間は従前の基準で運営することも妨げない」と、期間の定めのない経過措置となっており、すべての施設がその対象となっていないなど不十分な点を残しています。実態に合わせた配置基準へさらなる改善が必要です。

配置基準が改善することは、保育士の負担軽減につながります。保育士は、日常的に時間外労働や不払い賃金が広くあり、開所時間も長くなり業務量の多さが問題になっています。人員が確保できず、休暇を取りづらい状況もあります。保育士資格をもつ人のうち4割弱しか働いていない状況です。

従来、保育所は最低基準を満たす必要な保育士は全員常勤としてきましたが、それを緩和し短時間勤務保育士を導入するなど、正規から非正規への置き換えを進めてきました。公立保育所では56%を非正規が占めます。低い処遇で正規の保育士と同等の仕事をしている状況も少なくありません。また、非正規保育士が増えることで少ない正規保育士に負担が集中しているため、それを敬遠してあえて非正規保育を希望する保育士もいます。保育士がやりがいをもち、働き続けたいと思える保育制度への転換を進めます。

給与の引き上げは必須です。2013年から累次の処遇改善策が行われ、保育士の賃金は上昇してきました。しかし、全産業平均と比べても低く、一定の経験を重ねてもそこから賃金が上がりにくい構造があり、長く働き続けることの足かせになっています。

国立病院機構の院内保育所は運営が委託され、3年や5年で契約更新があり、委託業者の変更で継続して働く保育士が新規採用扱いとなり、賃金が下がるなど問題が生じています。また、院内保育所は認可外となり、累次の保育士処遇改善策の対象外で賃金が上がらず保育士確保も苦労があり、安定した保育の継続が脅かされており改善が必要です。

配置基準の見直しで、処遇改善をはかります

―――他の主要国と比べても低すぎる国基準を改善し、保育士を増やし、保育士の負担を軽減します。

―――保育士を増やし、労働時間の短縮を図り子育てしながら働き続けられる労働環境を整備します。8時間労働、週休2日が保障される保育士が配置できるようにし、7時間労働を目指します。

―――「産休等代替職員設置費補助」をつくり、産休・病休等の代替職員の雇用経費を保障します。

非正規保育士の正規化を推進します

―――非正規保育士の正規化を進めながら、正規と非正規の均等待遇をはかります。

―――正規の保育士を基本に運営ができるよう、現場の実態に即した公定価格への見直しをすすめます。

保育士の賃金を全産業平均並みに引き上げます

―――公定価格を見直し、ただちに5万円引き上げ、急ぎ全産業平均並みにします。

―――賃金の上昇が11年で頭打ちの国基準を見直し、経験年数に応じ賃金が上昇し、長く働き続けられるように改善します。

―――院内保育所の保育士の賃金を引き上げ、安定した雇用を守ります。

保育士の確保が、園の負担とならないようにします

―――保育士確保のために、園が財政的負担を負わないよう、自治体が責任をもって取り組みます。

2、子どもたちが安心して過ごせる保育環境を整備します

日本の保育所の面積基準は、戦後直後に制定されてからほとんど改善がなく、欧米諸国に比べて極めて遅れたものです。保育園での子どもの死亡事故は毎年繰り返し発生しており、死亡に至らない骨折などの重大事故も急増しています。早急に解決が求められています。

園外活動の安全対策も重要です。園庭があるところもないところも、園外へのお散歩や遊びは子ども達の日常の活動で、子どもの成長・発達のうえでも欠かすことができません。昨今の異常気象で夏場は外遊びが難しく、子どもたちが園内でも十分に体を動かし遊べる環境も不可欠です。

保育士の配置がきちんと守られているか、園内で虐待など子どもの人権侵害が起きていないか、保育施設に対する行政の指導監督・監査は重要な役割があり、年1回の実施が義務付けられていました。実施率は平均7割台と十分に実施されていませんでしたが、2023年に書面監査などで代行することを可能とする規制緩和をおこなったことは重大です。認可外施設は実施率が5割を切り、監査で基準不適合とされても改善されないまま運営が継続され、死亡事故を引き起こした施設もあります。指導監督機能が十分果たされることが必要です。

定員が割れても運営ができるようにし、ゆとりある保育環境をつくります

―――面積基準の緩和ではなく認可保育所建設をすすめ、「詰め込み」を解消し、施設や職員配置の基準を計画的にひきあげます。

―――小規模保育などの基準を認可保育所と同等に引き上げます。

―――地域によっては子どもの数が減り統廃合が進められる園や、定員が埋まらず運営が厳しくなっている園もあります。面積基準を引き上げ、一つの園の子どもの数を減らしながらゆとりある保育環境をつくる方向に転換します。定員が割れても運営に支障がでないよう財政支援を強めます。

―――無認可保育所にたいして施設整備の負担軽減、保育士確保や資格取得などの支援をし、認可化をすすめられるようにします。

安全な保育環境をつくります

―――園庭やホールの確保に、自治体や園が積極的に取り組めるようにします。

―――自治体が実態把握、指導・監査を適正に行うための体制を強めます。

3、高すぎる保育料負担を軽減し、誰もが安心して保育を受けられるようにします

2019年から始まった無償化は、対象が3~5歳と、住民税非課税世帯の0~2歳児に限られています。未就学の兄か姉がいる0~2歳の第2子はおおむね半額となりますが、第1子が小学校に入ると半額措置はありません。給食費は実費徴収になり、自治体や保育施設の事務負担となっています。幼保無償と言いますが、0~2歳の保育料、給食費の負担の重さが子育て世帯の負担となっています。

幼児教育・保育の無償化をすすめます

―――所得制限なく、幼児教育・保育の無償化をすすめます。

―――ゼロ歳児~就学前のすべての子どもの給食費の無償化を進めます。

一時保育を拡充し、保育を必要とする子の保育の保障を目指します

政府が2026年から導入しようとしている、家庭で保育している6か月~2歳までの子を対象とした「こども誰でも通園制度」は、子どもの安心・安全が軽視され、預かる保育所の負担が大きいと懸念の声が大きくあります。市町村の関与は限定的で、トラブルがあっても園と当事者の直接契約のため公的責任を負わないものであり、さまざまな問題が生じることから抜本的に見直しが必要です。

―――現在ある一時保育を拡充し、必要とする子が、手厚い保育を受けられるようにします

―――親の就労に関係なく、保育を必要とする子が保育を受けられる環境を目指します

4、保育をもうけの道具にさせず、安心・安全の保育所を増やします

自民党政治が推進してきた保育の「規制緩和」「詰め込み」「企業参入」促進をやめ、公的保育の責任を果たします

出生者数が大きく減った影響もあり、待機児童数は減少傾向です。しかし、国が定義する待機児童数は2,567人(2024年4月時点)おり、隠れ待機児童数は約8万人とも推計されます。待機児童が多い都市部でも、人口減少地域でも公立保育園の廃止・民営化が進んでいます。認可保育園の60%を占めていた公立保育所は、30%にまで減少しています。

公立保育所は、災害時や、感染拡大で休園になった園の子どもたちを近隣の公立保育所が受け入れ、保育士の派遣が要請されれば、公立保育所の保育士が応援に入るなど、地域の保育を守る役割を担っています。

人口減少地域では保育所運営が困難になり、統廃合がすすむ事態があります。身近な保育園がなくなり、遠方まで通わなければいけない状況は親にとっても子どもにとっても負担です。

公的保育を守ります

―――待機児童問題を解決するために、民間任せでなく自治体が公立保育所建設をすすめられるよう国が責任を果たします。

―――公立保育所に対する新たな財政支援制度を創設し、保育所の建設や分園の配置・改修への補助、運営費の国庫負担分の復活などを行います。

―――民間の認可保育所の建設等に対しても、助成の拡大、利子補給などの支援措置を行います。0~2歳児が入所できる受け入れ先を自治体の責任で確保します。

―――小規模保育等を卒所した後の、新たな転園先の保育所を自治体の責任で確保します

―――公立保育所が地域の保育水準を引き上げるなど積極的な役割を果たせるよう、制度の充実を図ります。

人口減少地域でも自治体が責任をもって保育を保障します

―――過疎地の保育を担っている公立園への補助を復活させます。

―――民間の保育所も、小規模でも安定した保育を維持できるように財政支援を強め、どの地域でも必要な保育を保障します。