2026年衆議院選挙各分野政策
84、安保・基地・自衛隊
米トランプ政権言いなりに突き進む大軍拡ストップ
対話と外交による〝平和の準備〟に全力をあげます
2026年1月
高市政権は「安保3文書」改定で異次元の〝戦争準備〟
高市首相は昨年10月の所信表明演説で2022年末に策定した「安保3文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を今年中に改定することを表明。すでに自民党内ではそれに向けた議論を開始し、今年4月には提言を発表するとしています。トランプ米政権が国際法も国連憲章もお構いなしで帝国主義的野望をむき出しにするなか、これにつき従う大軍拡がいかに危険かは火を見るより明らかです。
現行「安保3文書」は、それまで憲法違反としてきた、外国の領土を攻撃するための「敵基地攻撃」能力を保有すること、そして軍事費を国内総生産(GDP)比2%に倍増させることを柱にしています。2015年に強行した安保法制=戦争法で、これも違憲の集団的自衛権行使を法的に可能にしたのにつづき、「安保3文書」でそれを実践的に行えるようにするということです。自民党政治によるこの大軍拡は、アメリカに言われるがまま、「平和国家」「専守防衛」の日本を、「戦争できる国」、そして「戦争する国」へと根本的につくり変える道を突き進む大暴走と言うほかありません。
高市政権はそれでも飽き足らず、「安保3文書」を改定し、軍事費増額目標をGDP比2%から3・5%へとさらに引き上げようとしています。そして長射程ミサイルなど「敵基地攻撃」能力をこれでもかと強化することに加え、「非核三原則」の見直し、殺傷武器輸出の全面解禁などを強行しようとしているのです。これは、平和とともに国民生活も破壊する、まさに〝亡国の道〟です。
➡武器輸出に関しては、各分野の政策「85、武器輸出」をごらんください。
今回の選挙は、戦後日本の「平和国家」としての歩みを根本から覆し、現実にアメリカとともに戦争をする国へとつくり替える政治を許すのか、それとも憲法9条を生かした外交の力で平和な東アジアをつくる政治へと根本的に転換させるのかが正面から問われます。日本共産党はこの〝戦争の準備〟をきっぱり中止させ、対話と外交による〝平和の準備〟を進めるために全力を尽くします。
日米一体の〝ミサイル列島〟化を許さない
防衛省は昨年8月末、「敵基地攻撃」能力である長射程ミサイルの当面の配備場所を発表しました。日本全域を外国の領土を攻撃するための拠点にするもので、〝ミサイル列島〟づくりと呼ぶしかない重大な局面に立ちいりました。
発表によれば、国産の12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・射程約1000㎞)をまずは2025年度中に熊本市の陸自・健軍駐屯地に、27年度に静岡県の陸自・富士駐屯地に配備します。また同ミサイルの艦発型については27年度に神奈川県の海自・横須賀基地の護衛艦で、空発型は同年度に茨城県の空自・百里基地のF2戦闘機での運用を開始します。昨年10月から11月にかけて、アメリカで発射試験を7回実施。防衛省は12月19日、「開発の完了に目途を得られました」と発表しました。
同じく国産の島嶼防衛用高速滑空弾(地上発射型、初期配備は射程数百㎞だが将来的には2000~3000㎞に)は、25年度中に富士駐屯地に、26年度に北海道の陸自・上富良野駐屯地と宮崎県の陸自・えびの駐屯地に配備する計画です。同ミサイルについても、昨年8月までに2次に渡る発射試験を実施済です。
これらはあくまで当面の計画であって、この2種類のミサイルはその後も配備地が拡大していくことは間違いありません。さらに国産ではこれ以外にも、極超音速誘導弾(地上発射型、射程約3000㎞)、新地対艦・地対地精密誘導弾(地上発射型、射程不明)、潜水艦発射型誘導弾(海中発射、射程不明)などの開発・量産が進められています。〝あなたの隣にミサイルがやってくる〟とでもいうべき日本全土におけるミサイル配備であるとともに、陸からも海からも空からも他国を攻撃できる態勢をつくろうとしているのです。これが「平和国家」「専守防衛」を掲げてきた日本で実際に進んでいる現実です。それでもまだ足りないと、「敵基地攻撃」態勢をどこまでも強化するというのが、「安保3文書」改定なのです。
国産以外に米国製長距離巡航ミサイル・トマホーク(イージス艦搭載、射程1600㎞)の配備も強行しようとしています。まずは2025年度、長崎県の海自・佐世保基地のイージス艦「ちょうかい」に搭載し、26年度以降、佐世保基地、横須賀基地と京都府・舞鶴基地に所属する8隻のイージス艦すべてに順次搭載する計画です。「ちょうかい」はすでに模擬弾の搭載訓練をおこなったうえで、昨年9月、発射システムの改修と発射試験を実施するためアメリカに向け出航しました。
同ミサイルについては、24年3月から10月にかけて、米軍を〝先生役〟、自衛隊を〝生徒役〟にした要員養成教育が行われました。当時のエマニュエル駐日米大使は自身のXで、「米海軍横須賀基地では今週、巡航ミサイル『トマホーク』の教育訓練が行われており、日本の重要な反撃能力を強化中だ。インド太平洋地域における戦力、安全保障、安定性の新時代へようこそ」(同年3月28日付)などと、まるで自分が自衛隊を意のままに操る米軍司令官であるかのように言ってのけました。〝日米一体〟でもまだ足りない。先制攻撃戦略を維持する米軍に言われるがまま、自衛隊が他国攻撃をする態勢づくりが進んでいるということです。
ちなみにこのトマホークは、2003年開始のイラク戦争で米軍が800発も撃ち込んだもので、まさに先制攻撃の代名詞といえる代物です。同戦争は、「大量破壊兵器保有」という世紀の大ウソを口実に、国連安保理決議もないまま当時のブッシュ米政権が強行したまぎれもない侵略戦争でした。命を落としたイラク人は数十万から100万人という規模に達しました。当時の小泉政権はというと、真っ先に米政府への支持を表明し、自衛隊の派兵まで行いました。ただし、日本がイラクに対し武力行使することはありませんでした。理由は単純で、当時は安保法制も「安保3文書」も存在しなかったからです。しかし今は違います。集団的自衛権の行使を法的にも実践的にも可能にしてしまったのに、アメリカからの武力攻撃参加要請を断ることができるというのでしょうか。自民党政権はこれまで一度もイラク戦争の検証すら行わず、これを支持したことが誤りだったと認めていないのです。アメリカによる同様の侵略戦争、先制攻撃が起きた場合、自衛隊が米軍とともに他国を武力攻撃し、トマホークのような長射程ミサイルを撃ち込むという、悪夢のような事態まで現実味を帯びてしまうのです。
これだけの長射程ミサイルを配備するとなれば、当然、それらを保管する大型弾薬庫が必要になります。「安保3文書」にもとづき防衛省は2027年度までに70棟、32年度までにさらに60棟と計130棟増設する方針ですが、「しんぶん赤旗」昨年10月15日付は、同時点で調査・設計を含む予算が計上されているのは、62棟に上り、着工済は12棟であると報じました。ミサイル基地と同様、弾薬庫も有事の際には格好の攻撃目標となることから、日本全土に分散配置するのです。住民の命や安全への配慮などかけらもなく、徹頭徹尾、軍事の論理が貫かれています。
着工済で最も多いのが京都府の陸自・祝園(ほうその)分屯地の8棟で、同駐屯地には最終的には14棟もの弾薬庫を建設する計画です。ここでの弾薬庫建設では、昨年7月に近畿中部防衛局が住民説明会を行いましたが、長射程ミサイルの保管の中身について、「個々の火薬庫に保管する弾薬の種類や量については、自衛隊の能力が明らかになる恐れがあるために具体的に示せない」との対応に終始。住民からは「白紙委任せよというのか」と厳しい批判の声があがりました。
主権放棄し米軍指揮下に組み込まれる自衛隊
政府・防衛省は長射程ミサイルの保有・配備に躍起ですが、それだけでは「敵基地攻撃」を実際には行えません。なぜならば、自衛隊にはミサイルをどこに撃つのかを決めるための偵察情報の取得をはじめとした運用能力が決定的に欠けているからです。そこで同時に推進しているのが、これも「安保3文書」に明記された、「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」構想への参加です。米軍主導のIAMDは、あらゆるミサイル攻撃に対応するために、「敵基地攻撃」と「ミサイル防衛」をミックスしたもので、いわゆる先制攻撃を柱の一つにしています。米統合参謀本部ドクトリンは、最大限の戦闘能力を発揮するため、「米軍と同盟国の能力を統合する」としているのです。
2024年4月の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の「シームレス(切れ目ない)な統合」をおこなうことで合意。同年7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、その具体化として、米側が新たに在日米軍を再編して「統合軍司令部」を設置し、自衛隊が創設する「統合作戦司令部」なるものとの相互運用性を強化することを決めました。
この方針通り、25年3月24日、東京・市谷の防衛省に「統合作戦司令部」(JJOC)が発足しました。その本質的な役割は、「敵基地攻撃」を実行するため、陸海空自衛隊を統合したうえで、それを米側が新たにつくる「統合軍司令部」のもとに組み込み、米軍の指揮・統制と一体化・統合することにあります。昨年3月の日米防衛相会談の際、ヘグセス米国防長官は在日米軍司令部を「統合軍司令部」に格上げする作業を開始したことを明らかにしました。
政府は自衛隊が米軍の指揮下に入ることはないと根拠も示さず強弁しますが、装備の点でも情報の点でも圧倒的な能力を持つ米軍の指揮下に自衛隊が組み込まれることはまったくもって明らかです。日本が主権を放棄してまで、アメリカの戦争態勢と一体化していく暴挙だと言わなければなりません。
しかも重大なのは、米軍の「統合軍司令部」のうち自衛隊を指揮下に置く部隊が、在日米軍司令部のある横田基地から移り、首都東京のど真ん中に居座るということです。防衛省は昨年3月末、「在日米軍の統合軍司令部へのアップグレードの開始について」と題する通知を関係自治体におこないましたが、そこでは、「自衛隊と米軍の運用面での協力をより一層強化するため、在日米軍に、新たに、JJOCと米軍の連携を専門に扱う部署を設置」「新設された当該部署の人員は、赤坂プレスセンターのサテライト・オフィスを拠点とし、日常的に防衛省・自衛隊等のカウンターパートと連絡・調整を行う予定」と明記したのです。「赤坂プレスセンター」はヘリポートを備えるれっきとした米軍基地です。住所は東京都港区六本木であり、かつての米占領時代に引き戻すかのような事態です。
政府・防衛省がこのまま長射程ミサイルの保有とIAMDへの参加をゴリ押しすればどのような事態が待っているでしょう。日本が攻められてもいないアメリカの先制攻撃の戦争に、「敵基地攻撃」能力を保持した自衛隊が、米軍の指揮下で参戦するということであり、そうなれば、相手国からの猛反撃で日本全土が焦土と化すことが必至となってしまいます。
軍事に対し軍事で構えれば、相手もさらなる軍事で応えることは必至です。そうなれば際限のない大軍拡競争をもたらし、この東アジア地域は一触即発の事態に陥ってしまいます。偶発的、計算違いによる武力衝突が発生し、それが大規模な戦闘に発展してしまう危険性が高まるだけです。
これを裏付けるように、政府は日本に対する軍事攻撃に備える対策も同時に進めています。それが、各地の自衛隊基地司令部の地下化をはじめとする施設の「強靭化」で、全国283地区約2000棟にもおよびます。核攻撃などを受けても戦争を継続する態勢をつくろうということですが、それで自衛隊基地が守られたとしても、周辺の住民はどうなってしまうのでしょう。
加えて政府は2025年3月末、「台湾有事」などを見据え沖縄県先島諸島(宮古島を中心とした宮古諸島と石垣島を中心とした八重山諸島)から住民と観光客合わせて約12万人を九州各県や山口県に避難させる計画を公表しました。沖縄はあの戦時中の「疎開」により、対馬丸沈没事件など多くの子どもを含む住民犠牲の悲劇に見舞われてきましたが、いままた、現代版〝強制疎開〟というしかない愚行が繰り返されようとしているのです。
これらはまさに戦争準備としかいいようのない危険かつ非現実的な動きであり、およそ許されるものではありません。
〝深化〟する日米共同演習と、拡大する多国間訓練
9月19日付の「東京新聞」は1面トップで「共同訓練3倍超に」との記事を掲載。自衛隊と米軍との共同訓練が、安保法制成立以前の2014年度に25回だったものが、23年度は82回になったと報じました。
問題は共同訓練の回数だけではありません。その中身の強化を見せつけたのが、昨年9月に実施された「レゾリュート・ドラゴン25」です。陸上自衛隊と米海兵隊が「台湾有事」など対中国を念頭に2021年から毎年行っているもので、5回目となる昨年の参加規模は日米合わせて1万9200人で、初回の5倍近く、前回の2倍以上へと急拡大です。
トランプ政権のヘグセス国防長官は昨年3月の日米防衛相会談の際、「日本は、われわれが西太平洋で直面するあらゆる緊急事態において最前線に立つ」「平和を欲するものは戦争の準備をしなければならない」などと言い放ちましたが、それを地で行くような訓練が実際に行われているのです。
訓練の実態も過激化の一途です。昨年のレゾリュート・ドラゴンでは、「多層的・統合的な火力投射能力を発揮する」ため、米軍のタイフォン(陸軍ミサイル発射システム)、NMESIS(ネメシス=海軍・海兵隊艦船阻止システム)、HIMARS(ハイマース=海兵隊防空統合システム)、自衛隊の12式地対艦誘導弾など、日米の中長距離ミサイルやそのシステムを各地に展開させるとともに、米海兵隊のMV22オスプレイと陸自のV22オスプレイが飛び交う本格的軍事演習となりました。
とくに今回、日本国内で初めて、米海兵隊岩国基地(山口県)に展開したタイフォンは、トマホーク・ミサイルを発射する装置で、岩国からであれば中国を直接狙うことができます。「朝日」昨年9月24日付社説はこのタイフォンについて、「北京や上海も射程に入り、地域の緊張を格段に高めかねない。訓練後に撤去するというが、なし崩しで配備に進むことを強く危惧する」「米軍は昨年4月にフィリピンで行った共同演習でタイフォンを展開し、そのまま配備を続けている。岩国での展開は、将来の配備に向けた地ならしではないのか」と書きました。
実は現在、自衛隊による長射程ミサイル配備に加え、米軍も日本に同様のミサイルを配備することを狙っているのです。高市首相は2021年9月の総裁選テレビ討論で、米軍によるミサイル配備について、「これは日本を守るために必要だ」「むしろ積極的にお願いしたい話だ」とまで言い切っていました。
自衛隊のミサイル配備だけでも危険極まりないのに、これに米軍のものまで加われば、日本は正真正銘のミサイル列島と化し、もし有事が起きてしまえば全土が相手からの攻撃対象となってしまいます。何としても止めなければなりません。
さらに2024年10月~11月にかけて実施された日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」では、前述した「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)の訓練も各地で実施されました。IAMDの心臓部といえるのが「統合全領域指揮統制」(JADC2)というシステムですが、米国の軍需企業ロッキード・マーティンは昨年1月29日付の発表文で、「(当社は)『キーン・ソード』において、米軍と海上及び陸上自衛隊に対して統合長距離射撃能力を提供しました。本演習での成果は、今後の統合全領域指揮統制能力の構築に貢献し、複数国間による大規模演習をより容易にします」としました。「敵基地攻撃」態勢づくりは、長射程ミサイルの開発・配備にとどまらず、日米の実働演習レベルでも〝深化〟していることは明らかです。
共同訓練は日米に限りません。「安保3文書」は、「統合抑止」戦略にもとづき、「同盟国・同志国間のネットワークを重層的に構築するとともに、それを拡大し、抑止力を強化」するとし、日米韓、日米豪等の枠組みを活用するだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの軍事協力強化を明記したのです。
この方針の下、自衛隊と各国軍の共同訓練が激化の一途をたどっています。例えば昨年2月には、日米仏共同訓練「パシフィック・ステラ―」がフィリピン東方海域で実施されました。米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」、仏海軍の原子力空母「シャルル・ド・ゴール」、そして海上自衛隊からは空母化に向け改修が進む「かが」が投入され、三カ国の空母がそろい踏みする状況となりました。
また日米豪が2011年から毎年実施している「コープ・ノース」では、昨年2月の同訓練で、三カ国それぞれがステルス戦闘機F35を参加させ、初めての編隊飛行を行うなどしました。
「読売」20024年3月3日付電子版は、「自衛隊の多国間共同訓練、2006年比で18倍に増加」という見出し記事を掲載。06年に3回だった多国間訓練が、23年には56回に達したとするとともに、同年には、有事などを想定した「戦術・戦闘訓練」の比重が増え、6割を超えたと強調しました。
――憲法違反の安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻します
――「安保3文書」改定を許しません。同文書を撤回させ、大軍拡をストップさせます
自衛隊基地強化で南西諸島が〝最前線〟に
日米一体の対中国軍事包囲網づくりにおいて、その〝最前線〟とされているのが南西諸島です。自衛隊基地・機能がこれでもかと強化されており、「軍事要塞化」に対し住民が怒りの声を上げています。
同地域では、2019年に宮古島と奄美大島に、23年に石垣島に陸上自衛隊の地対艦(空)ミサイル部隊が配備され、24年にはこれらを束ねるミサイル連隊が沖縄本島うるま市で発足しました。16年に「沿岸警備隊」が配備された与那国島にもミサイル部隊配備が計画されています。宮古島、奄美大島、石垣島、うるま市には、「安保3文書」にもとづき長射程ミサイルへと能力向上がはかられている12式地対艦誘導弾の現行型(射程約200㎞)がすでに配備されており、今後は能力向上型(射程約1000㎞)に置き換えようとする可能性が極めて高いといえます。
米海兵隊はいま、南西諸島などの島々に小規模な部隊を迅速に分散展開させ攻撃拠点をつくり、制海権を確保する「遠征前進基地作戦」(EABO)の態勢づくりを推進しており、現在、そのための日米共同訓練を重ねています。
昨年と一昨年の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」では、うるま市、宮古島、石垣島などの各駐屯地で12式地対艦誘導弾の展開訓練が行われるなど、日米一体となった「敵基地攻撃」態勢構築が急ピッチで進んでいるのです。
南西諸島では、鹿児島県・馬毛島を丸ごと軍事拠点にする工事が強行されています。そもそもは、いま硫黄島(東京都)で実施している米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)を移転させるという米側の要求で始まった計画ですが、その後、空自が保有するF35Bステルス戦闘機を空母化艦艇で運用するための垂直着陸訓練など、陸海空自衛隊の様々な訓練を行うことも加わりました。2本の滑走路や訓練場に加え、大型艦船が着岸できる港湾施設もつくる計画であり、自然豊かな島を「台湾有事」を想定した日米一体の作戦拠点、兵站拠点へと変貌させようとしているのです。防衛省は2023年1月に本体工事開始を強行しましたが、24年9月には、当初の工期4年を変更し、完成見込みが2030年になったと発表。一方で自衛隊の先遣隊が昨年7月から順次、馬毛島に配属されています。
この問題をめぐっては、調査費を計上した2011年度から25年度までの契約ベースの予算額の合計が1兆226億円、支出済額が3327億円にも達することが明らかになっていますが、政府は総額については「現時点では答えられない」とするなど、まさに〝青天井〟となる危険が高まっています。高市政権が25年度補正予算で馬毛島基地建設費として3029億円を計上したことで、予算合計(契約ベース)は1・3兆円を超えました。
南西諸島以外でもこれでもかと自衛隊強化
防衛省は昨年8月12日、陸自・木更津駐屯地(千葉県)に「暫定配備」していたV22オスプレイ17機の陸自・佐賀駐屯地(佐賀県)への移駐を完了したと発表しました。佐賀空港に隣接する新設の駐屯地への本格配備となりますが、滑走路は空港のものを使用します。軍民共用で事故の危険性が格段に増すことは明白です。
中谷防衛相(当時)は昨年4月の会見で、オスプレイ佐賀移駐の理由について、「長崎県の相浦駐屯地に所在する水陸機動団と一体的に運用を行う観点から」と説明しました。2018年に発足した水陸機動団は、〝日本版海兵隊〟とも呼ばれる部隊であり、発足当初の2400人体制が現在は3300人にまで拡充されています。オスプレイの最大の役割はこの水陸機動団の輸送ということになりますが、佐賀駐屯地から相浦駐屯地の距離は約60㎞で、これまでより一気に距離が縮まること、そして目の前に南西諸島が控えていることからも、まさに対中軍事作戦の〝臨戦態勢〟が敷かれることに。米軍との共同演習も含め、オスプレイの飛行が特に西日本各地で格段に増えることは必至です。すでに、九州地方の各自衛隊基地、駐屯地、演習場などとの間で飛行訓練を実施しています。防衛省は「必要に応じて住宅地、市街地や病院等の上空の飛行を制限する」としていますが、「必要」がないと判断した場合は、これらの上空の飛行は排除されません。
しかも、これで木更津駐屯地からオスプレイがいなくなるかと思いきや、同駐屯地には日米オスプレイを定期整備する国内唯一の拠点があり、佐賀移駐後も飛来するというのです。
米政府監査院(GAO)がこのほど米軍オスプレイについて発表した報告書によると、米会計年度で、2023年、24年の重大事故発生率が、15年から8年間の平均を3~8割も上回りました。改めて「欠陥機」であることを証明する内容となっています。
宮崎県の空自・新田原基地でも前代未聞ともいえる基地増強を強行しています。同基地にはF15戦闘機約40機が配備されてきましたが、昨年8月にF35Bステルス戦闘機の配備が開始されました。今年度中に8機、2031年には40機にし、最終的にはF15約20機を含め計60機体制にする計画で、まさに大増強となります。
しかも驚くべき住民だましの実態も明らかになっているのです。防衛省はF35B配備開始に先立つ昨年2月、その垂直着陸訓練まで同基地で実施することを明らかにしたのです。それまでは住民説明で、同訓練は馬毛島につくる基地で実施し、新田原基地では、「緊急時などを除いて行わない」としてきたのに、です。馬毛島基地建設の遅れを理由にしつつ、それが完了した後も新田原での訓練を継続するというのだからもうメチャクチャです。
F35Bは、通常着陸する際は高度約100メートルから約24秒で着地するが、垂直着陸の場合は高度30メートルからホバリングに切り替えて降下するため、約2分かかり、その分、騒音が長くつづくことになります。現在配備しているF15戦闘機の騒音に対し基地周辺住民が起こした爆音訴訟では、福岡高裁宮崎支部が24年8月に「受忍限度を超え違法」と断じましたが、今回の事態は、同判決を歯牙にもかけていないことを示しています。報道によれば、防衛省による説明会で住民から「住んでみろ」「国のハラスメントだ」などの怒声が次々と上がりましたが、当然すぎるほど当然です。
また新田原基地をめぐっては、防衛省がこの間、沖縄の米軍普天間基地がもつ「緊急時」における米軍機受け入れ機能を移転するとして、米軍のための駐機場や庁舎に加え、危険な弾薬庫まで建設してきたことも重大です。2023年3月には、一連の工事が完了したと町に報告しています。
福岡県の築城基地も「米軍基地」化がとまりません。2016年に米軍岩国基地の第一代替飛行場に指定されたのにつづき、18年10月には、「緊急時」の米軍機受け入れのため、米軍用駐機場や弾薬庫を新たに整備すること、さらに滑走路を延長することも日米で合意。現在、2400メートルの滑走路を米軍普天間基地並みの2700メートルに延長するための工事を強行しています。政府はこの「緊急時」がいかなる状況かについて説明していません。
広島県呉市における「多機能な複合防衛拠点」づくりの計画も強行しようとしています。これは、2023年9月に操業停止した日本製鉄の広大な跡地約130ヘクタール(マツダスタジアム36個分!)を国費で買い取り、「防衛力の抜本的強化」を図るというもの。日米一体の〝戦争態勢〟づくりの一環であることは明確で、防衛省が昨年3月に示したゾーニング案には、物資集積・保管、火薬庫、補給整備、情報通信等に加え、無人機製造整備の区割りまであります。しかも「今後の検討状況により変更がありうる」としており、最終的にどんな機能が加わるかは不明で、やりたい放題となりかねません。
加えて呉において見過ごせないのは、昨年3月、陸海空の共同部隊「海上輸送群」なるものを海自・呉基地を拠点に発足させたことです。「台湾有事」を念頭に、水陸機動団の部隊や物資を南西諸島に迅速に輸送することを主な目的としており、2027年度には計10隻体制にする計画です。将来的には、「多機能な複合防衛拠点」がこの「海上輸送群」の出撃拠点となる危険性が高まっています。
「安保3文書」にもとづく大型弾薬庫130棟建設をめぐっては、大分市の陸自・大分分屯地と、前出の京都府南部の陸自・祝園分屯地におけるやり方がその無謀さを象徴しています。
大分分屯地(敷戸弾薬庫)での新たな弾薬庫2棟建設計画が発覚したのは2023年2月で、なんと同年12月には追加で7棟、合計9棟もの弾薬庫を建設する計画を市に示しました。同分屯地は大分市のJR豊肥本線大分大学前駅の真正面に位置し、周囲には住宅地はもちろん、保育園、幼稚園、小中学校、大学、病院、商業施設などがあり、まさに市街地のど真ん中の弾薬庫です。23年8月に発足した「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」はパンフレットで、「戦争の際の民間人被害を避けるため、国際人道法は弾薬庫などの軍事目標を人口密集地やその周辺に設けないようにすること(軍民分離)を締約国に求めています(ジュネーブ諸条約の第一追加議定書第58条b項)。日本政府は同議定書を2004年に批准しており、順守義務があります」と訴えています。
大分県では昨年3月、陸自・湯布院駐屯地において第8地対艦ミサイル連隊が発足したことで、同駐屯地が今年度にも開始される12式地対艦誘導弾能力向上型の配備の有力な候補地となっています。そうなれば、大分分屯地にこの能力向上型が保管されることは明らかです。
京都府精華町と京田辺市にまたがる祝園分屯地の周囲には国立国会図書館関西館をはじめ多くの研究施設などが立地しています。半径10㎞圏内には、奈良市、奈良県生駒市、大阪府枚方市などの人口密集地があります。2023年末に突如、防衛省がこの祝園分屯地に弾薬庫8棟を新たに建設するため、24年度予算案に102億円を計上とのニュースが流れ、住民は驚きました。さらに24年12月に防衛省は8棟に加えもう6棟の弾薬庫を建設する予定であることを明らかにしました。
祝園弾薬庫は戦後の米軍接収を経て1960年に自衛隊に移管された際、当時の精華町長と防衛庁などとの間で交わされた確認書に、「貯蔵施設の拡張はしない」と明記されました。しかし現政府は、確認書について「いわゆる契約的な意味合いを持つものではない」などと強弁して建設に突き進んでいるのです。
防衛省は同じ京都の海自・舞鶴基地に所属する2隻のイージス艦に米国製長距離巡航ミサイル・トマホークを配備しようとしています。祝園の新たな弾薬庫は「海上自衛隊と共同運用」するとしており、このトマホークが保管される可能性が高いのです。
「特定利用委空港・港湾」という名の軍事利用
自衛隊基地以外にも、民間の空港や港湾の軍事利用も動き出しています。「安保3文書」の一つである「国家安全保障戦略」は、「有事も念頭に置いた我が国国内での対応能力の強化」の項で、「平素の訓練、有事の際の展開等を目的とした円滑な利用・配備のため、自衛隊・海上保安庁のニーズに基づき、空港、港湾等の公共インフラの整備や機能を強化する政府横断的な仕組みを創設する」などと明記。平時の訓練だけでなく、有事の際の軍事作戦でも使用するという宣言にほかなりません。この自衛隊による自由な軍事利用という本音は、元防衛省幹部らがあけすけに語っています。
「安保3文書」策定に向け政府が設置した「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の第2回会合(2022年10月20日)。ここでメンバーの黒江哲郎元防衛事務次官がこう発言したのです。「現実の問題として、公共の港とか空港でなかなか自衛隊がアクセスさせてもらえない、様々な関係団体の反対でアクセスができないという現状もまだございますので、ここら辺についてもぜひ改善を国全体として図っていくことが必要」と。身も蓋もないとはこのことではないでしょうか。同会議では別のメンバーからも「公共インフラは、有事に国民を守る重要な機能を担う。こうした実態を踏まえれば、これらは軍用と民生に分けず、国力としての防衛力という観点で一体として運用すべき」などの声が上がったのです。
政府はその後、自治体に対し、国の予算による空港の滑走路延長により航空需要へ対応が可能になるとか、港湾整備で大型客船の寄港も可能になるなどの〝アメ〟をちらつかせながら懐柔(延長された滑走路や整備された港湾を自衛隊が使用することは言うまでもない)。軍事利用が必要と判断したものを「特定利用空港・港湾」と名付け、すでに14の空港、26の港湾を指定し、さらに拡大を狙っています。
政府は「特定利用空港・港湾」について、「あくまで民生利用が主」「米軍が本枠組みに入ることはない」(内閣官房「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&A)などとしていますが、指定されてしまえば自衛隊と米軍にどのように使われるかわかったものではありません。米軍による使用については、すでに2024年5月9日の参院外交防衛委員会で木原防衛相(当時)が、「米軍が今回の枠組みに参加することは想定していないが、米軍が利用する可能性は考えられる」と答弁しているのです。これまでも米軍は日米地位協定第5条を盾に日本の空港・港湾を利用してきましたが、これが激化する可能性が極めて高くなっているのです。
――米戦略と一体の自衛隊強化、「戦争国家」づくりに反対します
米軍基地の大増強―日本全国の〝沖縄化〟が止まらない
日本には戦後80年を迎えた2025年現在も、全土に130もの米軍基地(米軍専用76、自衛隊との共同使用54)が居座っています。沖縄のように人口密集地に外国軍の大部隊が我が物顔で占拠している国、首都圏に外国軍の巨大基地を抱えている国は世界中で日本しかありません。しかも在日米軍基地はアメリカの世界戦略の前線基地であり、駐留する部隊は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、その名の通り、世界中の紛争地に真っ先に殴り込むことが任務です。「日本を守る」ためのものではありません。いま、この米軍基地が、安保法制と「安保3文書」の強行と軌を一にして大増強されています。沖縄を除く全国の状況はどうなっているでしょうか。
➡沖縄に関しては、各分野の政策「86、沖縄基地問題」をごらんください。
首都東京の空軍・横田基地をめぐっては、米軍と自衛隊との「シームレスな統合」のため、同基地にある在日米軍司令部の「統合軍司令部」への格上げ作業がすでに始まっており、明確な基地機能の強化になります(自衛隊「統合作戦司令部」との「調整」部門は赤坂プレスセンターへ)。現在の在日米軍司令部の機能は、米軍基地の管理運営などに限られ、部隊の指揮権はハワイにあるインド太平洋軍司令部が握っています。今回の「統合軍司令部」新設は、この指揮権(一部?)を移すものであり、日米一体の対中国軍事包囲網づくりの〝心臓部〟となります。現在、横田基地から市谷にある防衛省との距離は約30㎞ですが、赤坂プレスセンターと防衛省間はわずか3㎞と格段に近くなり、まさに「シームレスな統合」の象徴となります。
また横田基地の強化で重大なのが、2018年に配備が開始された米空軍CV22オスプレイの問題です。オスプレイは21年には6機体制となり、今後10機まで増やす計画です。横田基地所属のオスプレイは首都圏はもちろん全国で飛行訓練を行っており、そんななかで23年11月に発生したのが、鹿児島県・屋久島沖での墜落事故です。搭乗員8人全員が死亡しましたが、一歩間違えば、住民を巻き込む大惨事となるところでした。にもかかわらず、墜落の原因も解明されていない24年7月には飛行を再開、今後も全国を飛び回ることは間違いなく、いつ重大事故を引き起こしてもおかしくない状況となっています。屋久島沖での墜落でしばらく5機体制でしたが、昨年6月に再び6機に戻りました。
横田基地では、2023年7月と24年4月に核兵器の搭載が可能なB52戦略爆撃機が着陸を強行しました。「安保3文書」策定以降、同機と航空自衛隊機との共同訓練が急増していることが背景にあるとみられます。「非核三原則」に照らしても絶対に許されない事態が今後もつづく危険性があります。米政府が22年に発表した「核態勢見直し(NPR)」は、インド太平洋地域における戦略原潜や戦略爆撃機の任務増加など、核戦力の「可視化」を同盟国とともに進めると明記しています。
横田基地をめぐってはさらに、24年12月に「在日米宇宙軍」が発足しました。宇宙領域での監視や情報共有などについて日米連携を強化することを目的としています。日本側も「安保3文書」に、航空自衛隊の名称を「航空宇宙自衛隊」に変更することが明記されており、宇宙分野でも日米一体が強化されることになります。
空母打撃群の一大拠点である海軍・横須賀基地は、1973年10月に空母ミッドウェーが母港にしてから半世紀以上が、2008年9月に初めて原子力空母であるジョージ・ワシントンが配備されてから17年以上が経過しました。米本土以外に空母の母港があるのはこの横須賀だけです。
2024年5月には、15年から配備されていたロナルド・レーガンが交代のためアメリカに向け出港、同年11月にジョージ・ワシントンが9年半ぶりに再び横須賀に配備されました。ジョージ・ワシントンは再配備前に原子炉の燃料棒交換を含む大規模な改修を実施し、艦の主要な構成要素のほぼすべてを取り換え、強化されています。
21年8月には、横須賀を母港としない米原子力空母としては12年ぶりにカール・ビンソンが寄港。22年5月にもエイブラハム・リンカーンが寄港するなど、複数の空母の運用に不可欠な基地と化しています。同じく横須賀を母港としない強襲揚陸艦などの寄港も相次いでいます。
横須賀基地の空母母港化を開始した当時、日本政府はその期間はおおむね3年と、市民や国民に説明していました。にもかかわらず半世紀以上にもわたって、空母の唯一の海外拠点となり、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争など地球規模で戦争をおこなうための出撃拠点となっています。原子力空母の母港化以降は、つねに放射能被害の危険にもさらされつづけているのです。
横須賀基地所属の大型艦船の定期整備を日本の民間業者が担う動きも強まっています。24年4月の日米首脳会談でも協議されたもので、すでに業者の募集が進んでいます。従来は定期整備のために米本土に戻っていたことから、形を変えた基地強化にほかなりません。
横浜港のど真ん中に陣取る陸軍・横浜ノースドックでは24年2月、「第5輸送中隊」(揚陸艇部隊)の本格運用が始まりました。計画では当面、13隻・280人体制となります。同部隊新設は、「安保3文書」策定の直後、23年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の合意文書に明記されたもので、米軍の対中国軍事構想=「遠征前進基地作戦(EABO)」を担う沖縄の「第12海兵沿岸連隊」を輸送・兵站支援する部隊です。
重大なのは、この「第5輸送中隊」運用が自衛隊の輸送機能強化と連動しており、日米軍事一体化がさらに進む危険性が現実のものとなっていることです。前述のように、自衛隊は昨年3月、広島県の海自・呉基地を拠点とする陸海空の共同部隊、「海上輸送群」を発足させました。米軍は「第5輸送中隊」が海兵沿岸連隊の兵士や武器を南西諸島に運び、自衛隊はこの「海上輸送群」が〝日本版海兵隊〟の水陸機動団を同諸島に輸送する、さらには両者が混然一体となる…。まさに横浜ノースドックの機能強化は、日米一体の戦争態勢構築の重要な一部であり、横浜を戦争拠点に変えるものにほかなりません。
山口県の海兵隊・岩国基地は、2018年に海軍・厚木基地の空母艦載機約60機が移駐完了して以降、東アジア最大の航空基地へと変貌しましたが、この間、さらなる大強化がはかられています。
24年11月、C2輸送機に代わり、海軍のCMV22オスプレイ(4機程度)が配備されました。米軍オスプレイは海兵隊のMV22、空軍のCV22がすでに日本に配備されていましたが、海軍のものは初めてとなります。さらに空母艦載機の4つの戦闘飛行隊のうち1つが、FA18スーパーホーネットからF35C(14機程度)に入れ替わりました。同機の日本配備も初めてで、第4世代の戦闘機から第5世代への強化を意味します。CMV22とF35Cの配備はいずれも、横須賀基地配備の空母が同時期にロナルド・レーガンからジョージ・ワシントンに交代したことにともなうものです。
さらに、岩国基地の海兵隊所属のF35B戦闘機をめぐっても増強が止まりません。海兵隊のF35Bは、常駐の飛行隊2個に、昨年3月にFA18と交代する形でローテーション部隊1個が加わり計3飛行隊が配備されていましたが、米軍はさらに昨年4月末以降、山口県や岩国市に事前通知することもなく、新たなローテーション部隊1個を展開させました。在日米海兵隊は地元紙「中国新聞」の取材に対し、「4番目のF35B飛行隊だ」とし、部隊が増えたことを認めました。同部隊は昨年11月に米本国に「帰還」したとされますが、海兵隊による最新鋭ステルス戦闘機大増強の方向性は明白です。外来機の飛来も含めた基地強化は、軍事対軍事のエスカレーションをもたらすとともに、騒音被害や事故の危険性を高めるだけです。
岩国基地をめぐっては昨年9月、空母艦載機離着陸訓練(FCLP)が25年ぶりに強行されました。厚木基地から岩国基地へ空母艦載機が移駐する際、岩国市が「FCLPを実施しない」ことを受け入条件にしていたにもかかわらずです。訓練では同艦載機が上空を旋回し、着地と同時に出力を上げて上昇する「タッチ・アンド・ゴー」を夜間も含め繰り返したのです。訓練期間中の7日間で岩国市に寄せられた騒音による苦情は1000件を超えるなど、住民の怒りが広がっています。
遠征打撃群の拠点である長崎県の海軍・佐世保基地では、岩国基地にF35Bが配備されたことを受け、2019年に、それまでの強襲揚陸艦ワスプに代えて、同揚陸艦アメリカが配備され、さらに昨年6月にトリポリに交代しました。2020年就役のトリポリは米軍保有の強襲揚陸艦のうち最新鋭のもので、F35Bを最大20機搭載することが可能です。実際、2022年5月には岩国基地に入港し、同基地のF35B14機を搭載し、横須賀基地に向かったこともありました。沖縄・普天間基地所属のMV22オスプレイも運用することから、佐世保・岩国・沖縄が一体となった基地機能強化の一環です。トリポリの佐世保配備の際に同艦長は、「最も能力の高い水上艦を、この重要な地域に展開して、日本の防衛やインド太平洋地域の安全保障、安定に対する米国のコミットメントを示す」などと述べました。
佐世保基地には、「遠征洋上基地」と呼ばれる米海軍の大型艦艇「ミゲル・キース」(母港サイパン)も21年の就役以降、毎年のように寄港しています。同艦艇は米海兵隊の遠征・揚陸作戦を支援するためのもので、大型の飛行甲板に加え、航空機の整備施設、指揮・通信機能を備えていることから、〝動く海上基地〟の役割を果たしています。佐世保基地だけでなく岩国基地にも寄港しています。
青森県の米空軍・三沢基地をめぐっては、米国防総省が2024年7月、同基地に配備しているF16戦闘機36機を、F35A戦闘機48機に置き換えると発表。今年春ごろから順次、実行される見込みです。空自の三沢基地にはすでにF35Aが配備されていますが、米軍の配備は初めてです。2022年の「核態勢見直し(NPR)」は同機を核・非核両用機(DCA)と位置付けています。国防総省は「日米同盟や地域の抑止力を強化し、インド太平洋地域における平和と安定を高める」などと強調しています。F35はF16よりもエンジン音が大きいとされ、機数も大幅に増えることから、騒音や事故など住民への影響が強く懸念される事態ともなっています。
さらに三沢基地には昨年4月中旬から約1カ月にわたり、米テキサス州の基地に所属するB1B戦略爆撃機4機が「配備」されました。これまでもB1Bが在日米軍基地に一時的に駐留したことはありますが、一定期間にわたり拠点として運用されたのは初めてです。これは、期間を明示せずに爆撃機を米本国から一時的に展開させる爆撃機任務部隊(BTF)としての配備で、三沢での運用期間中、空自のF35Aとの共同訓練も行いました。B1Bは核兵器の搭載能力はないものの、米空軍のなかで最大の通常兵器搭載能力を持っています。
――安保法制・「安保3文書」の強行と軌を一にした米軍基地の強化に断固反対します
米軍のやりたい放題の根底にある日米地位協定
米軍基地は、日本国民の生命と暮らしに重大な被害と苦痛を与え続けています。戦闘機・ヘリの墜落や米兵による殺人・強姦・放火・ひき逃げなど、米軍の犯罪、事件・事故は、日本の主権を踏みにじる大問題です。1952~2023年度の米軍による日本国内の事件・事故の件数は、政府が明らかにしているだけでも、21万4417件(72年の施政権返還前の沖縄は含まれていない)、日本人死者数は1101人に達しています。
相次ぐ犯罪に加えて、異常な低空飛行訓練など米軍の横暴勝手の根底には、屈辱的な日米地位協定があります。米軍に対し、全国どこでも部隊を自由に配備し、国内法も無視して自由に訓練するなどの特権を与えている国は、世界でも日本だけです。沖縄県はこれまでに、米軍が駐留する欧州諸国を調査し、日本と比較した結果を発表しています。米軍に国内法が適用されない、米軍基地などへの立ち入り権がない、訓練・演習の規制ができない、航空機事故のさいの捜査権を行使しないなどの日本の実態は、どれも欧州諸国には見られないものであることが明らかとなっています。横田空域のような米軍が管理する広大な空域も、欧州諸国には存在しません。在日米軍のなかでも新型コロナウイルス感染が広がりましたが、政府が世界最多の感染者を出している米国からの入国を原則拒否する措置をとっていた下でも、米軍関係者は自由に出入国し、検疫も米軍任せとなってきました。このような植民地的特権を保障した日米地位協定が、1960年の締結以来、一度も改定されていないことは、まともな主権国家ではありえない異常極まることです。
全国知事会は2018年7月、「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択しています。「提言」は、「日米地位協定を抜本的に見直し、航空法や環境法令などの国内法を原則として米軍にも適用させることや、事件・事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立ち入りの保障などを明記すること」を求めています。独立国としての当然の要求であり、屈辱的な現状をただすために、地位協定の抜本改定がまったなしとなっています。
――日米地位協定を抜本的に改定し、世界に例のない米軍の特権をなくします
「抑止力」を口実にした大軍拡は暮らし破壊の〝亡国の道〟
「安保3文書」による大軍拡の最大の口実となっているのが「日米同盟」強化であり、「抑止力」の強化です。「抑止力」の本質は、「軍事力による恐怖によって相手を思いとどまらせる」ことであり、日本が相手国に「恐怖」を与えれば、相手国も日本に「恐怖」を与えることで応えることになります。
この「日米同盟」と「抑止力」の強化は、安保法制強行の際にも声高に叫ばれました。
安倍首相(当時)は、2015年5月26日の安保法制審議入りの際、「日本が危険にさらされたときは日米同盟が完全に機能するということを世界に発信することによって、紛争を未然に阻止する力、すなわち抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」(衆院本会議)などと主張。成立後の17年2月15日には、「平和安全法制は、新ガイドラインの策定と相まって同盟関係を一層強固にし、抑止力を向上しました」(参院本会議)とまでいい切っていました。この答弁にもあるように、政府は安保法制のことを「平和安全法制」などと称してきたのです。
ではその後、「日本が攻撃を受ける可能性」はなくなり、東アジアに平和は訪れたでしょうか。同じ自民党政府がいま、口を開けば「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」と叫んでいるのは一体全体どういうことでしょうか。高市首相が〝もっともっと抑止力を〟などと言って「安保3文書」の改定に躍起となっているのは、自己矛盾の極みではないでしょうか。「抑止力」を口実にしたこのやり方は、まさに際限のない大軍拡競争招き、偶発的な衝突の発生で戦端が開かれる危険を高めるだけです。そのことは安保法制強行後の事態がこれでもかと証明しているのです。もうこんな無責任極まる政治は根本から転換するしかありません。
また「抑止力」にしがみつく限り、軍事費がどこまでも増え続けることになってしまいます。「安保3文書」策定以前に編成された2022年度当初予算の軍事費は5・4兆円でしたが、25年度のそれは8・7兆円にまで膨れ上がりました。失われた30年による経済停滞や貧困な社会保障、教育、農業政策などで国民生活が逼迫しているなか、軍事費だけがこれだけ膨張するなどありえないことです。しかもトランプ米政権の圧力のもと、「安保3文書」改定でGDP比3・5%、つまり21兆円という途方もない規模にまで増額しようとしているのです。それは、医療、介護、生活保護の国の予算の合計、約18兆円を軽く超える、まさに〝亡国の道〟と言うしかありません。
「戦争国家」づくりを中止し、憲法9条をいかした平和外交を
「安保3文書」にもとづく大軍拡が東アジアにさらなる戦争の危険をもたらすものでしかない以上、解決の希望は、大軍拡を中止し、外交に本気で取り組むことでしか見えてきません。日本共産党が外交の役割を訴えると、軍拡論者は「理想論」「お花畑」などといって揶揄しますが、「抑止力」を口実にした軍事対応ですべてうまくいくと思っている人々の方が、よほどお花畑で無責任ではないでしょうか。
私たちの目の前には、東南アジア諸国連合(ASEAN)が粘り強くとりくんできた平和の地域共同体づくりのリアルな経験があります。2024年1月の日本共産党第29回大会決議は次のように呼びかけました。
「相手に『恐怖』を与えるのでなく、『安心』を供与する外交こそ大切である。それを実践しているのが東南アジア諸国連合(ASEAN)の国ぐにであり、ASEANと協力して、東アジアを戦争の心配のない地域にする『外交ビジョン』を進めることこそ、憲法9条をもつ日本がなすべきことである」
ASEANは、紛争の平和解決を定めた条約(1976年締結の東南アジア友好協力条約)を土台に、徹底した対話を積み重ね、かつて戦乱に覆われていたこの地域を平和の共同体へと劇的に変えました。それだけではありません。いま、日本、中国、アメリカを含む18カ国で構成される東アジアサミット(EAS)を活用・発展させ、東アジア全体をASEANのような戦争の心配のない平和な地域にしようという大構想(2019年の首脳会議で採択した「ASEANインド太平洋構想」=AOIP)を推進しているのです。
日本共産党大会決議を踏まえ、志位和夫議長は2024年4月17日、国会内で21カ国の駐日大使・外交官の参加を得て、「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」(https://www.jcp.or.jp/activity/2024-heiwa-teigen/)と題する講演を行い、次の3点について、党の「外交ビジョン」をさらに豊かにしました。
①ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる
②北東アジアの諸問題の外交的解決をはかり、東アジア平和共同体をめざす
③ガザ危機とウクライナ侵略――国連憲章・国際法にもとづく解決を
この「外交ビジョン」の方向にこそ、絶対に戦争を起こさない希望があり、そしてこれへの共感は日米安保条約を支持している人も含めた超党派の人々の間でも大きく広がる可能性を持っているのではないでしょうか。
➡日中関係に関しては、各分野の政策「95、日中関係」をごらんください。
――ASEANと協力し、憲法9条をいかした外交の力で東アジアに平和をつくります
日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係を築く
自公政権がすすめる空前の「戦争国家」づくり、「アメリカ言いなり」政治の根底には日米安保条約=日米軍事同盟があります。
日米軍事同盟には、他の米国との軍事同盟にない特別の異常さがあります。世界では海外駐留の米軍が大きく減少しているのに、在日米軍だけが増加しています。1990年~2025年の間に世界では60万9,000人から17万7,000人へ、日本は4万6,000から5万3,000人となっているのです(米国防人員データ・センター発表)。しかも前述のように在日米軍は、「日本防衛」とは関係のない、海外で戦争する「殴り込み部隊」ばかりです。世界に類のない「治外法権」が在日米軍に認められ、米軍の起こした事件・事故に日本政府の警察権は及ばず、日本の航空法を無視した危険な低空飛行訓練が全国で繰り返されています。
第2次米トランプ政権のもと、日米関係をめぐる日本国民の世論も大きな変化を見せています。「朝日」2025年4月27日付は、1面トップで、「対米外交『なるべく自立』68%」との記事を掲げました。同紙による世論調査結果を報じたものですが、日本の対米外交について質問したところ、米国の意向に「なるべく従ったほうがよい」という回答は24%、「なるべく自立したほうがよい」との意見が68%を占めたのです。さらに、日米間には安全保障条約があると前置きしたうえで、「いざという場合」に米国が本気で日本を守ってくれると思うかの問いには、「守ってくれる」15%に対し、「そうは思わない」が77%に達しました。核兵器禁止条約については、「加盟する方がよい」が73%で、「加盟しない方がよい」の22%を大きく引き離しました。
――国民多数の合意で、日米安保条約を、条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させ、本当の独立国といえる日本をつくります。対等・平等の立場にもとづく日米友好条約を結び、日米友好の新時代を開きます。
――自衛隊については、憲法9条と自衛隊との矛盾を、憲法9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かって、国民多数の合意で段階的に解決していきます。日本共産党が参加した民主的政権ができた場合にも、自衛隊をすぐになくすことはありません。民主的政権が、憲法9条を生かした平和外交によって、世界とアジアのあらゆる国ぐにと友好関係をつくり、日本をとりまく安全保障環境が平和的に成熟し、国民の圧倒的多数のなかで「もう自衛隊なしでも安心だ」という合意が生まれたときに、憲法9条の完全実施にむかっての本格的な措置にとりくみます。そこに至る過程(自衛隊と民主的政権が共存する時期)で、万が一、急迫不正の侵害を受けた時には、国民の命と人権、国の主権と独立を守るために、自衛隊を含めあらゆる手段を活用します。憲法9条を将来にわたって守り生かすことと、どんな場合でも国民の命を守り抜く―――その両方に対して政治の責任を果たすということが、日本共産党の立場です。
――日本共産党としては一貫して「自衛隊=違憲」論の立場をつらぬきますが、党が参加する民主的政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は、理の必然として、「自衛隊=合憲」の立場をとります。「憲法違反の自衛隊を活用するというのは矛盾している」という議論がありますが、民主的政権としての憲法判断が「自衛隊=合憲」である以上、その政権が自衛隊を活用することに何の矛盾もありません。



