性被害受け止める社会に―刑法改正、性暴力被害者支援に関する懇談会

性暴力根絶へ刑法改正を

 日本共産党国会議員団と「JCPWithYouチーム」は11月28日、参院議員会館で、「刑法改正、性暴力被害者支援に関する懇談会」を開きました。性暴力の根絶をめざす被害・当事者や団体は、日常にまん延する性差別が性暴力に直結していることや、相談すら困難な現状を告発。「被害を受け止める社会に変えたい」などの決意が語られ、フラワーデモさながらの温かな共感に包まれました。
 
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(写真)性暴力をめぐる現状を共有し、根絶に向けた手だてを語り合った懇談会=11月28日、参院議員会館

 参加した個人・団体は、12団体からなる刑法改正市民プロジェクトの伊藤和子弁護士、後藤弘子千葉大大学院教授、フラワーデモ呼びかけ人の北原みのりさんらと、性暴力救援センター大阪SACHICO、性暴力禁止法をつくろうネットワーク、ポルノ被害と性暴力を考える会、「Voice Up Japan」、Springなどです。伊藤氏が21日発表の刑法改正案を説明しました。

 日本共産党からは小池晃書記局長はじめ藤野保史、宮本徹、本村伸子各衆院議員、伊藤岳、吉良よし子、山添拓各参院議員、池内さおり、梅村さえこ両前衆院議員、仁比聡平前参院議員が参加しました。

 小池氏は党綱領の一部改定の議論に触れて「#MeToo」など性暴力をなくす運動の広がりは「人類の歴史的進歩を象徴する希望ある出来事ではないか」と強調。「先駆的な運動に学び、政治の場で願いを実現していく決意です」と表明しました。山添氏は刑法の「暴行・脅迫要件」の撤廃を迫った法務委員会での質疑を紹介。藤野氏は「今日を社会を変えるとともに自分を変えるきっかけにする。刑法改正に全力を尽くします」とのべました。

個人・各団体が発言

性暴力事件 被害の実態

 フラワーデモを呼びかけた作家の北原みのりさんは、「3月に相次いだ性暴力事件の無罪判決に強烈な違和感を感じ、デモを呼びかけた」と言います。

「花をもって、『あなたの声を信じます』と意思表示することで次々自身の被害を語る人が現れました。これまで性暴力被害者は勇気がなくて話せないと言われてきたが、社会の側に被害者の声を聞く力がなかったからではないか」と問いかけました。「性暴力被害と冤罪(えんざい)を並べるといった、加害者と被害者を対等なものとして語る習慣を被害者の視点に立ち、変えていかなければならない」とのべました。フラワーデモが全国27カ所に広がるなど「自分の生活している場所で声をあげたいという人が多い」と語りました。

 「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」の代表は、被害者が警察に訴えても被害届が受理されず、起訴されない事例が多いと指摘。「レイプ被害にあっても、殺されると思い抵抗をやめたような事例は事件化しない。心理的膠着(こうちゃく)状態では抵抗もできない」とのべ、ハードルの高い「暴行・脅迫」要件を定めた、現行刑法と刑事司法の問題点を告発しました。

 また「日本のジェンダーギャップ指数は110位。性暴力は性差別と直結しているという視点が大事」と強調。刑法改正とともに、裁判官のジェンダー教育も欠かせないと語りました。

 性被害に遭った人などの相談、支援を行ってきた性暴力救援センター大阪SACHICO(サチコ)。病院拠点型で24時間受け付ける活動を紹介しました。

 設立から9年で電話相談が約3万5千件、来所相談は約8千人と右肩上がりに増えているといいます。「10代が6割超で14~16歳に集中し、スマホの『パパ活』アプリなどで性的搾取をされる子どもたちが増えている。性に対する人権侵害だが、被害届が受理されず性犯罪と認知されない被害者が多く、苦慮している」とのべました。

改正は指針 広く議論を

 弁護士の伊藤和子さんは被害当事者など12団体でつくる「刑法改正市民プロジェクト」がまとめた「刑法性犯罪規定改正案」を説明しました。

 同案では「強制性交等罪」(177条)の「暴行・脅迫」要件を撤廃し「不同意性交等罪」等に改正しています。「他の者の認識可能な意思に反して、性交、肛門性交又は口腔(こうこう)性交を行った者は、不同意性交の罪とし、3年以上の有期懲役に処する」というもの。2016年改正のドイツ刑法がモデルです。不同意であることを客観化するため、他の者の認識可能な意思に反した性的行為を処罰します。

 準強制性交等罪(178条)の「抗拒不能」要件は明確性に欠けるとし、無意識など特別に脆弱(ぜいじゃく)な状況に乗じた場合の「同意不能等性交等罪」に改正提案しています。伊藤さんは改正案について「諸外国ですでに導入された内容。日本でも導入が可能だと思っている」と強調しました。

 千葉大学大学院の後藤弘子教授は、刑法改正とともに刑事手続きの適正化を求めました。

 ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS=パップス)は、アダルトビデオ(AV)出演強要や児童ポルノ被害者の相談を受け、出回った動画や画像を削除するなど支援しています。金尻カズナさんは「スマホの普及でリベンジポルノ(性的画像などを無断で公開されること)など性的搾取が巧妙化している。ネット投稿者の匿名性は高いが、サイトに対し削除を求める側は多くの個人情報を提出しなければならず、ハードルを下げる制度が必要」と提起しました。

 同会の岡恵さんは、AV出演を強要された被害者が「契約することで性的同意を取ったとみなされる」として刑法改正は国がどんな姿勢で被害者を守ろうとしているかの指針になる。力を合わせて取り組みたい」と話しました。

 ジャーナリスト・伊藤詩織さんの民事訴訟弁護団でもある、自由法曹団の村田智子弁護士。法曹界でも刑法性犯罪規定の改正にさまざまな意見があるとしながら、21日に「刑法改正市民プロジェクト」が発表した改正案を高く評価。改正に対し「懸念される点についても意見を交わしたい」と表明しました。

 性暴力被害の当事者団体、Spring(スプリング)の金子深雪さんは、自身のつらい体験を告白しながら、過去の性被害の認識に年月がかかることを指摘。実態に見合った公訴時効の設定、捜査時に被害者の負担を最小限にする司法面接の導入を要望しました。

 性的同意のあり方について「性交同意年齢は13歳だが、性教育で『性交』の言葉すら使われないのに同意など無理。自分の体のことを知り、どうすれば互いに尊重しあう性行為ができるか、性・人権教育で深めなければ」と語りました。

「性的同意」啓発活動へ

 「Voice Up Japan」ICU支部の高橋奈夕さんは大学で、性行為の前に相手も望んでいることを確認する「性的同意」について啓発する活動をしています。「性的同意の考えが広がっておらず、被害にあっても同意のない性行為は性暴力と知らない人が多いし、加害者も気づかず行為に及んでいる」と話します。相次いだ無罪判決に「今の法律では被害者が守られていない。被害の矮小(わいしょう)化になる」と刑法改正を求める署名に取り組みました。「性的同意を定義して刑法を改正してほしい。性的同意が広がるよう教育も改革してほしいです」

 
「しんぶん赤旗」2019年11月30日付掲載
(内藤真己子、日隈広志、古荘智子)

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