沖縄県名護市辺野古沖で研修旅行中の高校生らが死亡した小型船転覆事故を巡って文部科学省は、研修旅行の学習内容が「政治的活動を禁じる教育基本法14条2項に反する」との見解を発表しました(22日)。これに各界から批判の声があがっています。(解説ワイド)
現代課題学ぶ機会奪う
上方平和教育研究所共同代表 平井美津子さん
(写真)(本人提供)
教基法14条2項の「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」という条文ばかりが取り上げられる。しかし、その前に1項として「必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」と規定していることを忘れてはならない。
私たちの社会には、見ようとしなければ見えないものが多くある。東日本大震災で発生した原発事故により、故郷を離れて暮らすことを余儀なくされている人たち。日米両政府によって基地を押し付けられ、基地を減らしてほしいと声を上げ続けている人たち。その姿や思いを伝え、誰もが平和に、人として尊厳をもって生きられる社会とはどんな社会なのかを考えていくことが、平和学習だ。
強大な力を持つ側の主張は触れる機会が多い。一方、虐げられ力を持たない人々の声に触れる機会は、教師が意識して取り上げない限り、生徒たちにはないのだ。平和で民主的な国家及び社会の形成者として、必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成(教基法第1条)のために、今起きている社会や政治の問題を取り上げることは、教基法に保障される重要な政治教育だ。
今回の文科省の判断は、教師たちに政治問題を取り上げることに二の足を踏ませ、生徒たちが現代の課題を学ぶ機会を奪うことにつながりかねない。不当な支配(教基法16条)とも言える文科省の判断に、強く抗議したい。
多角的判断育む教育を
琉球大学教授(平和教育学)山口剛史さん
平和学習の全体像を見た時、それはさまざまな視点や立場から行われているはずで、文部科学省は平和学習の全体を通じた検証をすべきでした。しかし今回の見解は、辺野古の埋め立て工事を巡る学習という非常に限定的な部分だけを見て「政治的な偏りがあり、教育基本法違反」だと断じています。しかしこの「教育基本法違反」という前提が限定的な解釈から導かれており、見解そのものが拙速だったのではないかという疑念があります。
沖縄は軍隊による加害の歴史を抱えており、現代では基地問題や自衛隊配備をはじめ繊細な問題を抱えています。その中で平和をどうつくるかを考える時、必ず国策のありようとぶつかる。この国策とぶつかるということ自体が、いわゆる与党側の人たちにとっての障害として表出し、それが平和教育への攻撃をも生んできました。しかし、対立する意見をどう尊重するのかは民主主義の基本です。国会議員の人たちには、国民の代表として自分たちと違う意見に耳を傾け、子どもたちを未来の主権者として育てるための議論をしてほしいと思います。
子どもたちを、政治に対して一面的な理解しかできず、政治参加しないような主権者に育ててはいけません。思想信条を含む自己の確立を自ら選択でき、いかなる政治的立場の意見も自分なりに吟味し、多角的に判断できるようにしなければいけない。その中で、沖縄が歩んできた歴史と、そこで平和を求める人たちの願いをどう学び考えていくかが、日本のあり方を考える時に重要な視座を持っている。そのことを今一度発信していく必要があると思います。

