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2026年5月28日

解説ワイド

辺野古事故―文科省の見解
教育内容への権力介入は許されない

 沖縄県辺野古沖で小型船2隻が転覆し、研修旅行中だった同志社国際高校の女子生徒ら2人が死亡した事故について、文部科学省は22日、研修旅行中の平和学習が教育基本法14条2項に違反するという「見解」を出しました。前例のない教育内容への介入に懸念の声が広がっています。(日本共産党文教委員会責任者 藤森毅)


 学校には生徒の生命を守る安全配慮義務があります。研修旅行の安全管理上の問題が問われなければならないのは当然です。同時に、教育内容に対する権力の介入は抑制的でなければなりません。

 そもそも、主権者を育てるうえで政治教育を行うことは極めて大切だというのが、教育基本法14条(政治教育)の立場です。14条2項で禁じているのは、特定の政党を支持、または反対するための党派的な教育や活動であり、きわめて限定されたものです。

 これらの条文は、子どもたちに時の政府への恭順を教えた戦前の教育が軍国主義の支柱となったことを反省し、自主的で批判的な主権者を育てる自由闊達(かったつ)な政治教育を期して制定されました。その文言は、2006年の法改悪でもほぼ変わっていません。

 教育基本法14条
 第14条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
 2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 文科省の発表によれば、見学に辺野古基地建設に抗議する船を使ったことなどの4点を、14条2項違反の「根拠」としましたが、いずれも「根拠」になりえません。

 (1)「抗議船を使用した」と言いますが、乗船は見学のためで、抗議活動ではありません。

 (2)「研修旅行初日の礼拝で事故で亡くなられた船長(牧師)が反対運動に言及した」と言いますが、自己紹介の一環で、特定の見解を押し付けたものではありません。

 (3)「数年前の旅行パンフに座り込みを訴える文があった」と言いますが、テント村がどんなところかを知らせるための文章転載であり、生徒に座り込みを訴えたものではありません。

 (4)「辺野古基地についての沖縄県の見解を学習したが、それ以外のさまざまな意見をとりあげなかった」といいますが、フィールドワークで行った先のことを知ることは、見解の強要でなければ、党派的政治教育とはなりません。

 こんなことを14条2項違反だとすれば、政府の進める政策に否定的な意見を持つ人に話を聞くことや、さまざまな場に赴くこと自体が許されなくなります。

 ところで14条2項が禁じたものは、党派的「政治教育」と党派的「政治的活動」の二つです。今回、文科省は辺野古を巡る学習を、党派的「政治教育」とは認定できませんでした。それほど、彼らの「根拠」には無理があったのです。

 認定したのは、党派的「政治的活動」のほうでした。ここには国の勝手な法解釈の変更があります。教基法改悪後、国は「政治的活動」は「特定の政党との関係の有無にかかわらない」とし、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するため」以外の政治的活動も違法だと言い始めたのです。しかし、違法なエリアを際限なく広げ、教育内容への介入に悪用することが許されるわけがありません。

 「教育内容に対する行政の介入」はけっして許されないというのが、民主主義の大原則です。1976年の最高裁学力テスト判決は憲法判断として、教育は「人間の内面的価値に関する文化的な営み」であって、「教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請される」と明示しました。教育基本法16条は教育行政機関によるものも含めて教育への「不当な支配」を禁じています。これらは、2006年の教育基本法改悪でも否定できず、今日なお政府を拘束しているのです。

 辺野古での事故直後に自民党、日本維新の会はそれぞれ政府に「提言」を提出し、「適切な教育活動」だったかどうかの「徹底的確認」を求めました。右傾化のアクセルしかない政権の危うさが、今回の異様な介入に表れています。さらに文科省は全国的な政治教育調査さえ計画しています。そのめざすものは、政権への恭順を教える教育への改造であり、憲法の改悪です。介入をとめる、全国の学校を萎縮させない―そのたたかいは、日本の教育と社会の未来に大きな意味をもっています。