2005年2月26日(土)「しんぶん赤旗」

愛媛県警現職警官 勇気ある告発

“裏金で志(こころざし)がグラッ”
変えたい

偽造領収書が昇任の踏み絵


 「裏金に手を染めなかった」という誇りを持つ現職警察官、愛媛県警の仙波敏郎(せんば・としろう)巡査部長(56)が告発した同県警の「裏金づくり」。これまで「不正は一部」としてきた愛媛県警の対応を根本からひっくり返しました。全国の警察の裏金追及にも大きな影響を与えるこの告発を追跡しました。


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警察裏金問題をめぐって話し合う(右から)原田宏二・元北海道警釧路方面本部長と仙波氏=22日、松山市

 愛媛県警の裏金問題が発覚したのは昨年五月。「(問題になった)大洲署以外で不正はない」というのが県警の結論でした。

 それをひっくり返したのが現職警官、仙波氏の告発会見。一月二十日、「おまえが会見したら県警は一年間は立ち上がれない」との県警幹部の説得を振り切ってのものでした。

 「三十八年の間、警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験にもとづく真実を話します」と切り出した仙波氏。それは、初の現職警官告発として全国の警察組織に衝撃を与えました。

 ▽一九七三年から九五年三月まで勤務した七つの警察署で年平均二回、毎回三人分のニセ領収書づくりの依頼を受けたが、断った

 ▽捜査員が協力者に謝礼を払ったことは聞いたことがない

 ▽カラ出張という方法で出張旅費の一部も裏金化され、幹部の飲食費にあてられていた

 そしてこうも証言しました。

 「偽造領収書の作成は警察官が昇任する際の『踏み絵』として半ば強制されており、これを書かない限り上級へは昇任できない仕組みだ」

 仙波氏は二十四歳で巡査部長に昇任。その後、筆記試験ではトップに近い成績を収めても三十二年間にわたって昇任する機会は与えられませんでした。

 仙波氏の告発はただ裏金の暴露が目的ではありませんでした。

 報告集会で仙波氏は語りました。

 「私が裏金の件で一番残念に思うのは正しい知識、能力のある者が幹部にいないことです。裏金が横行するとまともな能力のある者が芽をつまれてしまう」

 「志をもって警察学校にはいっても卒業した瞬間に(裏金問題で)グラッと崩れる。現実を見るんです。五十歳をすぎて(ニセ)領収書を書かずにおれるのは愛媛県下で二人しかいないんです」

 仙波氏は裏金問題の一方で、犯罪検挙率が下がってきていることも指摘します。警察が好きで警察をよくしたい、というのが告発の最大の動機なのです。

 県警は告発後、仙波氏の鉄道警察隊から通信指令室主任への配置転換を命令しますが、他方、〇四年度の報償費の執行額も当初予算の半分以下にとどまる見通しであることなども明らかになりました。その影響はしだいに出ています。


県警本部長 VS 共産党県議

紹介した地元テレビ

 「県警本部長VS共産党県議」――。昨年の十二月県議会直後、愛媛の民放テレビがこんなタイトルをつけて、映画「ゴジラ」のテーマ音楽をバックに粟野友介県警本部長と日本共産党の佐々木泉県議の議会でのやりとりを紹介しました。

 佐々木 ニセ領収書作りが犯罪だという認識がありますか。法律からいっても国民感覚からいってもこれは犯罪です。

 粟野 本人名義以外の領収書を使用することが許されるという法的根拠はございませんが、本人名義以外の名義の領収書を使用してはならないという法的根拠もございません。

 警察が他人の名前を勝手に使って領収書を偽造したケースで「それ自体が不法行為」とする東京高裁の確定判決もあるのに、およそ国民感覚からかけはなれた態度です。

 県警の隠ぺいは昨年五月に裏金づくりの一端が発覚した時から一貫しています。

 内部告発にもとづき、地元テレビ局が県警大洲署での領収書偽造など捜査費不正支出問題を放送したのは昨年五月末。

 県警は領収書偽造は認めたものの「同署以外で不正はない」と断言しました。

 県が請求した特別監査でも、県警は捜査協力者の名前などの開示を拒否しました。捜査員への聞き取り調査では、署幹部や会計課員を同席させるなど、真相解明どころか調査を妨害してきたのが実態です。ことし一月におこなわれた大洲署への実地監査では、同署の玄関前でおこなわれた監査委員の記者会見に同署警備課係長の警部補が身分を明かさずに同席し、記録をとっていたことも判明しました。

 日本共産党は裏金疑惑が発覚した直後から県や県警、公安委員会にたいして会計資料などの全面公開や、監査の拡充を求めてきました。

 佐々木県議は「裏金疑惑を解明するどころか、その妨害をしてきたのが県警だ。特別監査の結果が三月に出るが、その結果を踏まえ議会では百条委員会を設置し強制力をもった形で真相を解明することが求められている」と強調します。



仙波さんが告発した県警裏金問題の反響

 県警裏金告発は大きな反響をよんでいます。

 本紙には「仙波さんを何としても激励したくなりました」と仙波さんあての手紙を託してきたタクシーの運転手も。

 愛媛新聞社のホームページには関連記事へのアクセス件数が約七万件近くと記録的な数字です。

 同紙には「たとえ出世のマイナスになるとしても自分に正直に生きたい」と自分自身の生き方にひきつけて内部告発を支援する声や、「税金が署長や管理職の小遣いになっていたかと思うと腹立たしい」といった警察への怒りが数多く掲載されています。



報復人事の県警 自浄作用期待できない

 「仙波敏郎さんを支える会」世話人代表で仙波氏と同級生の東玲治さん

 愛媛県警は仙波氏の告発に対し、拳銃を取り上げ、報復人事をしてきた。自浄作用はまったく期待できない。北海道では監査委員が機能したが、愛媛でもその機能を発揮してほしい。とくに議会は行政のチェック機関だ。百条委員会も設置できるし、偽証すれば告発もできる。機能を発揮すれば世論も動く。それができないなら仕組みそのものを変えなければならないということになるのではないか。



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