「たしかな視点」をつらぬく「しんぶん赤旗」

小泉暴走政治にいまこそストップを

関口孝夫・赤旗編集局長の講演から

「しんぶん赤旗」の関口孝夫編集局長は、最近、都内での講演で、総選挙とその後のメディア状況と「赤旗」について語りました。その要旨を紹介します。

  1. マスメディアの選挙報道、二つの肩入れの異常
  2. 自力の風でたたかった共産党と「赤旗」の役割
  3. 巨大議席与党を従えた小泉政治の暴走に歯止めを
  4. 「在野精神」を放棄した日本の主要メディアと「赤旗」の位置
  5. “たしかな視点”で「闇夜のなかで輝く理性と良心のたいまつ」の役割を
  6. 「赤旗」を国民的メディアに成長させることが急がれる
顔写真
関口・しんぶん赤旗編集局長
 こんどの総選挙でメディアが、総体としていかに異常な報道姿勢に終始したか、私はそこをしっかりと認識することが大事だと考えています。この認識は、なぜ日本共産党が「善戦・健闘」というのか、なぜいまの日本の社会に「しんぶん赤旗」の存在が重要なのか、を知るためにも特に重要だと思うからです。

1、マスメディアの選挙報道、二つの肩入れの異常

 日本はメディアの発達した国です。新聞は総発行部数では中国にゆずりますが、成人1000人当たりの部数ではアイスランド、ノルウェーに次いで世界で三番目。サミット諸国のなかでは群を抜いています。さらにその新聞の勢力下に全国的なテレビのネットワークが列島を網羅しています。有権者の意識に大きな影響を与えるその新聞・テレビは、選挙にどういう姿勢で臨んだのか。倫理綱領にいう「新聞は自らと異なる意見であっても、正確・公正で責任ある言論には、すすんで紙面を提供する」がはたして実行されていたのか。否です。二つの偏向がありました。

 一つはメディアがそろって小泉「改革」をあおったことです。 郵政民営化推進の立場を露骨にして、いわゆる小泉劇場を面白おかしく伝え、小泉「改革」のイメージを振りまくのに大いに手を貸しました。テレビ朝日系「報道ステーション」の政党討論で、司会のキャスターが、郵政民営化の背後にアメリカの要求があることを話そうとした市田書記局長の発言をさえぎり、「アメリカの要求に押されて郵政の民営化をするバカな話はない」「市場原理でやらないとどうしようもない」などとまくしたて発言を封じた前代未聞の暴挙は、象徴的なできごとといえます。

 もう一つは二大政党制をあおったことです。 これも全国紙、NHK、民放のワイドショーを問わず、目にあまるものがありました。選挙戦の最中、小泉VS岡田の対立構図で紙面、画面をつくりました。本質的には野党としての対立軸は喪失していた与党と準与党との「向き合い」にすぎなかったにもかかわらず、です。 雑誌『経済』11月号で二宮厚美・神戸大学教授がインタビューに答え、この二党の「対決」は巨人VS阪神戦ではなく「小泉一軍と岡田二軍の争い」にすぎないといっていますが、いいえて妙です。どちらが財界直結の逆立ち「改革」の推進党にふさわしいかの「一、二軍入替え戦」にすぎなかった。にもかかわらずメディアは世紀の大対決であるかのように鳴り物入りではやしたてました。

 選挙後もこのおはやしはつづいています。10月20日の小泉・前原両氏の党首討論をうけての各紙の社説にはあきれました。民主党の前原代表は、「アメリカ側は非常にフラストレーションを感じている」(在日米軍基地再編問題)と、アメリカの意向をたてに政府の不作為を責めたてました。東アジア首脳会議問題では「アメリカを除外するのは非常にゆがんだかたちになる」とまでいい、政府もいいたいがいいにくいことを、そっくり代弁する立場でした。こうなると対立軸などない、どちらが自民党なのかわからない、準与党そのものです。ところが社説ではその評価が「首相と野党第1党党首が共通の認識に立って論議を交わしたのは、画期的だ」(「読売」)「この調子で議論の質を高めよ」(「毎日」)、と天まで持ち上げているのです。

 以上はメディアの二つの異常な肩入れについてですが、ついでながら選挙中一部全国紙 テレビの紙面・画面による明らかにテコ入れと目される社民党企画も目についたことにも触れておきます。議席数順序を無視してわが党の前に割り込ませたり、押し出したり。また明らかに特定候補持ち上げの公平を欠いた思い入れ企画には「ここまでやるか」と苦笑を禁じえなかったものもありました。

2、自力の風でたたかった共産党と「赤旗」の役割

 日本共産党は文字通り自力の風でたたかいました。共産党9議席確保、492万票獲得、前回比33万票増の重さがここにあります。

 作家の室井佑月さんがスポーツ紙の自分のコラムで選挙結果をこんなふうにとらえているのが印象的でした。 「…今回、共産党と社民党は頑張った。投票率が良かったから、本来なら公明党のように不利なはずなのに。今回の選挙で、敢闘賞をどの党にあげるかと問われたら、あたしは共産党と答えると思う。『たしかな野党』というのをスローガンにし、今の自民党のやり方に対し、はっきりとした反対意見を述べていたもの。郵政民営化を明確に反対、護憲、所得税や消費税の増税反対、かわりに大企業に対する税金アップ。『我が党がこうした主張ができるのは、財界から一銭の献金も受け取っていないからだ』という志位さんの演説もはっきりしてて、格好よかったしな。自民党の行き過ぎを押さえられるのはこの党だってきがしたよ。それに引き替え、最大野党の民主党はだらしないったらない…」(東京スポーツ9月21日付)

 今度の解散・総選挙は信長好きの小泉首相が「桶狭間」の奇襲を真似たという人がいますが、まさに奇襲攻撃の突風が吹き荒れた、城郭戦ではなく短期の野戦でした。こちらは「たしかな野党」という、入り乱れての野戦にぴったりの単純明快なのぼりをたて素早く陣列をととのえ、受けにまわることなく、相手の総大将・小泉首相目掛けて真一文字につきすすんだ。その点では赤旗のはたした役割は大きかったと思います。

 「赤旗」は、総選挙紙面の基本方針として“論戦で前進を切り開く攻勢的な紙面づくり”全党の立ち上がりに役立つ紙面づくり──を掲げ、最後までその姿勢を崩しませんでした。特に「たしかな野党」を太く押し出す論戦に力を入れました。小泉首相は郵政民営化の「改革を止めるな」の一本やりできたが、こちらはその影響は投票日まで続くとの認識にたち、小泉首相の詐話師的トリックを暴く記事を連打した。とくに郵政民営化論の二つのウソ(郵政公社には税金が一円もつかわれていない、民間よりも高額の国庫納付をすることになっている)をついた9月3日付一面トップ企画【紙面を見る】は、読者からの大きな反響がありました。また四年余の小泉「改革」についても、いかに国民に痛みを強いてきたかという負の実績をあげて批判、憲法と増税の二つの争点についても正面にすえつづけました。

3、いまこそ巨大議席与党を従えた小泉政治の暴走に歯止めを

 選挙後、小池晃政策委員長が「終盤、街頭で演説していて潮が引いた状態になった前回と異なり、今回は最後まで真剣に、模索している感じで耳を傾けてくれた」と語っていました。同じ感想を大阪で候補者だった人も口にしていました。同じように選挙中から本部に赤旗を読みたいという申し込みがいつになく多かったのも今度の特徴です。しかも選挙後も続きました。492万票に加わってくれた人たちだと考えています。

 一方で多くの人がまだ、小泉流財界直結の「構造改革」「小さな政府」「官から民へ」、「公務員の既得権益打破」、「福祉社会の持続のために」「国際競争に打ち勝つために」「普通の国に」などなどの“幻惑の霧”に包まれ、惑わされつづけているのも事実です。

 そのなかにはわが党の支持者だった人、読者だった人、読者のなかにも疑問を残している人がいると思います。ぜひとももどってもらわなければならない方たちです。

 そのためにも頭上のこの“幻惑の霧”を払うことが大事です。何で払うのか。私は選挙中の短期決戦では十分紹介できなかった、新しい日本共産党の綱領をバックボーンとした私たちの「日本改革」論をわかりやすく紹介する、財界提唱の「構造改革」のイデオロギー支配と各分野で対峙(たいじ)させていくことに力を入れていきたいと考えています。

 数におごった小泉政権は、さっそく靖国神社参拝を強行し、医療費7兆円を削減する小泉改革医療版試案を発表し、自民党幹部は消費税10%台を公言するなど、早くも国民への攻撃が始まっています。自民党の改憲草案作成、「三位一体」での補助金カット、予算編成と定率減税の廃止はじめ増税にむけての税制改革などなど。小泉改革の実相が現実に国民一人一人の痛みとして突きつけられることになります。

 相手は圧倒的な議席をもつ自民党ですが、押し返すことは可能です。私たちが選挙中「企業に応分の負担を」と主張しつづけ、選挙後もつづけてきた追及が、いま日本経団連の戦略の一角を狂わせている実例があります。彼らは、来年度税制改革で三年の時限立法として設けられた研究開発減税、IT減税の延長・拡充を要求していますが、9月30日衆院予算委員会の志位質問で取り上げられたため、もともと継続に否定的だった財務省も継続に慎重になっているふしがみられます。志位質問は個別の企業名をズバリあげて質問しました。もし継続したら企業献金の効用、選挙中の論功行賞だという批判の世論になるのは必至です。

 「赤旗」は9月2日付1面トップでIT、研究開発名目での大企業減税1兆1740億円の動きを伝えました。9月7日付では「経団連会長企業ら6社の研究開発減税2100億円に」とトヨタ、キヤノンなどの企業名をずばりあげた記事をだしました。企業になぜ負担させないのかの声は、「たけしのテレビタックル」という番組でも「聖域法人税」のタイトルがつけられて論議されました。週刊誌も特集し、田原総一朗氏も番組で市田書記局長の法人税減税批判発言にたいして「その問題はみんな感じている」と同意しています。いまや公論になりはじめているといえます。【記事を見る

 小泉「構造改革」との対決の主戦場は国会だけではありません。彼らが「止めるな」という「改革」とは、かつて竹中平蔵氏がわが経済部の記者にいみじくものべたように「構造改革とは競争社会をつくること、弱いものが去り、強いものが残る、ということですよ」というように、“勝ち組・負け組”、弱肉強食の社会です。小泉「構造改革」「規制緩和」は目を凝らすと市民生活のいたるところでひずみを露呈しています。社会部は「構造改革の現場」の一つタクシー業界に吹き荒れている矛盾を追及していますが、各種の矛盾を赤旗記者の目で深く追及していくつもりです。

4、「在野精神」を放棄した日本の主要メディアと「赤旗」の位置

 世界の新聞に通じた高い俯瞰(ふかん)の目と深い洞察の目で定評のある識者の方が、日本のいまのジャーナリズムをこんなふうに診断していました。

 ──ジャーナリズムは、あくまで国民、読者の立場にたって権力を監視し、批判することを使命とする。これは国際的にもジャーナリズムの常識である。ところが、今日の日本のマスメディア、とくに全国紙は、日米の権力にますます迎合するようになっている点をはっきりみておかなければならない。日米同盟、権力に同調する姿勢から、さらに追随姿勢を強めている。その結果、日本と世界、アジアの政治、経済、社会についてゆがめられた報道がまかりとおり、日米同盟、権力に都合の悪い問題は黙殺されるという異常な状況が生まれている。

 ──とくに地元の読者・住民の協力が不可欠である地方紙の健闘ぶりにくらべ、全国紙は権力、日米同盟に追随することが当たり前であり、追随しないなら不利になることから、彼らを恐れている段階にまで追い詰められている。そこからは、世界や日本の真実をえぐりだすことはありえないであろう。「朝日」もNHK問題の報道に加え、度重なる誤報、失態を衝かれ攻撃されてついに屈服した。

 新聞週間の10月20日付で、「しんぶん赤旗」の『マスメディア時評』欄が「権力の監視役の自覚を忘れてはいないか」と問いかけたのも、同じ問題意識からのものでした。

5、たしかな視点で「闇夜のなかで輝く理性と良心のたいまつ」の役割を

 先の識者の方は、こうした日本のジャーナリズムの現状を憂いたなかで、「日本と世界の真実を伝える全国新聞」としての「しんぶん赤旗」の役割にふれ、「そのことがいっそうはっきりしてきた。これまでは『朝日』『毎日』に一定の幻想があった。恐らく党員のなかにもあっただろう。が、それはもはや期待できないことは内容を見れば、一目瞭然(りょうぜん)である。『赤旗』は何者も恐れず、いかなるタブーももたず、徹底して日本と世界の平和と人民の利益を守るために、献身的にたたかう新聞である」という高い評価をいただきました。

 私たちはいま、編集上の努力点を、「二つの分かると二つの役立つ」──の合言葉にまとめ、努力目標としています。

 一つは「政治がわかる」です。 最近「しんぶん赤旗」日曜版を読みはじめたという奈良県の31歳の男性の方からメールをいただきました。「これまで一般紙しか読んでこなかった私は一般紙が伝えない、深く追及しない内容を日曜版で目の当たりにして結構ショックを受けました」といいます。そしてこれから日刊紙も読んで見たいとのべています。政治と自分との橋が架かったよろこび、これから政治と向き合っていくことの表明とみました。新聞をつくるものとして嬉しいことです。

 「政治の流れがわかる」ことは「目からうろこが落ちる」力をもつ例を不破議長の『私の戦後60年』(新潮社)を読んだ鈴木邦男氏の書評(『論座』11月号)で知りました。鈴木氏といえば大学時代から右翼学生運動をやってきた「新右翼」と呼ばれてきた人。その書評が「この本を読んで日本共産党にたいする見方が変わった。日本で最も愛国的な政党かもしれない」という好意に満ちた批評でした。

 なにごともアメリカいいなりの売国政治、財界大企業の政治買収を許した金権政治、「大東亜戦争は自存自衛」という価値観を引きずった戦犯政治、自民党のこの三悪政治を極端化した小泉政治の正体も歴史の行きつくところとしてみる必要があります。

 二つ目には「世界の流れがわかる」です。 日本の「構造改革」路線の手本となってきたアメリカの弱肉強食の新自由主義改革路線は、アメリカ大陸の中南米では破たん済み。変革の波に洗われています。ヨーロッパでも批判につつまれています。アメリカ一国主義も批判の的で12月の東アジア首脳会議開催にみられるように、国連憲章にもとづく平和の枠組みづくりの流れが、いまやアジアでは本流となっています。日本の置かれている位置を知るうえでも「世界の流れ」をつかむことは重要です。

 三つ目に「運動に役立つ」「くらしに役立つ」です。 小泉政治の暴走は平和とくらしの国民との矛盾をひきおこしています。改憲、増税、介護、年金、医療、雇用など、平和とくらしのルールーを守る社会への転機をつくりだしていく国民的共同の輪をひろげる運動がますます重要になっています。運動を励ます──「赤旗」の重要な役割の一つです。 国民の全分野にわたるくらしの問題を重視する。そして頼りになる相談相手の役割をはたす。またこういう時代だからこそ庶民の生活実利に少しでも役に立つ、「赤旗」ならではの情報を提供する。ほのぼのとした話題記事・企画も重要です。評判の暮らし・家庭欄の連載「葬儀考」はすでに五百通を超える反響がよせられています。ファイティング・原田さんから始まった一流スポーツ人が登場しているインタビュー企画「スポーツに生きて 戦後60年の歩み」も、稲尾和久、宮本恵美子、君原健二、大鵬【紙面を見る】、芳野満彦、森武雄、猪谷千春の各氏が登場、「毎回生きる勇気をもらっている」と大評判です。“勇気がわき、元気がでる”紙面にこれからも力をいれます。

6、赤旗を国民的メディアに成長させることが急がれる

 日本のメディアの病弊は深刻です。1930年代、「満州事変」突入に新聞が筆をそろえていった時代と重ねる識者もいます。官房副長官の安倍晋三氏が従軍慰安婦問題をとりあげたNHK番組を首相官邸内で事前に内容の説明をうけ、「公正」を要求した自らの検閲行為の重大性を棚に上げ、その事実を公にした「朝日」をなじる。なじられる「朝日」は反撃もしないという、目を覆いたくなるような惨状です。米国産牛肉の輸入再開問題の報道姿勢も、国民の安全最優先の立場をつらぬく「しんぶん赤旗」と、ブッシュ来日までに、と焦る政府に歩調を合わせ、輸入再開を既定のこととして大合唱する一般メディアとの報道姿勢とは対照をなしています。

 日米同盟、権力に迎合する巨大マスメディアに対抗して「しんぶん赤旗」が「暗闇のなかでも輝く理性と良心のたいまつ」として、数のうえでも国民のなかにしっかりと地歩を固める──。多くの読者の方々に読んでもらう意義の大切さはまさにそこにあると思っています。


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