2005年2月9日(水)「しんぶん赤旗」

救急車の出動しぶる

東京都「民間使え」

使ってみたら…10万円の請求も


表

 東京都では、診療所が患者搬送のため、救急車を依頼したら、民間救急車を使うよういわれ、出動を拒否される例が相次いでいます。都が全国に先駆けて昨年十月から試行している「民間救急コールセンター」のためです。四月から本運用で、他の自治体にも導入の動きがあるため、医療の現場では不安や批判の声があがっています。松本眞志記者

4月から本運用

 東京消防庁が運用する民間救急コールセンターは、転院搬送(病院、診療所など医療機関間の患者の搬送)や入退院、通院など患者の搬送を申し込まれると、東京消防庁認定の事業者を案内し民間救急車が搬送するというしくみです。

 東京消防庁の救急車とは異なり、有料です。業者によって差がありますが、一時間で一万一千円(運賃五千円、介護料三千円、付添看護師要請料三千円)というケースもあります。

 東京保険医協会の小川統一事務局次長は「民間救急コールセンターの性急な運用は、安全面だけでなく、本来、無料の救急搬送費を高い金額で患者に負担させる点で問題です」と指摘します。

半強制的に

 東京民主医療機関連合会(東京民医連)には、民間救急コールセンターの試行運用による苦情が相次ぎました。

 「結核患者の転院搬送を拒否され、民間救急車を使用して十万円を請求された」(足立区、Y病院)

 「脳梗塞(こうそく)の疑いのある透析患者の救急搬送を要請したが、『医師が同乗しなければ出動はできない』といわれた」(羽村市、H診療所)

 「激痛を訴える患者の救急搬送を要請し『医者は同乗しない』と伝えたら、民間救急の電話番号を知らせて、救急隊は来なかった」(日野市、H診療所)

 事態の深刻さに、東京民医連や現場の看護師らは、都福祉保健局や東京消防庁に対し、「現場では、半ば強制的に患者の搬送を民間の搬送業者に依頼するように指導されている」として「都民が安心して救急医療を受けられるよう対応してほしい」と要請しました。

 東京民医連の鈴木篤会長は「医師の同乗がないことを理由に、半ば強制的に民間の車を使わせるやり方に、医師会からも批判の声が上がっている」と語ります。

大混乱招く

 東京消防庁は、民間救急導入の理由に、増大する救急需要への対応や、緊急を要しない軽症患者搬送を抑制することをあげています。

 しかし、転院搬送は、救急車の出動件数の6%で、91・3%以上が軽症ではない「中等症・重症」患者といわれ(表参照)、導入理由と矛盾します。

 東京保険医協会の竹崎三立政策調査部長は「転院搬送は、医師が緊急だと判断して要請するもの。医師が同乗するかどうかは緊急か否かの基準にはならず、『医師が乗らないから民間救急を』というのは、しゃくし定規の対応だ。現状のまま民間救急コールセンターを本運用すれば、混乱が大きくなる可能性がある」と指摘しています。



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