2005年2月7日(月)「しんぶん赤旗」

W杯最終予選 9日の北朝鮮戦を前に 

サッカー通じ「小さな交流」


 9日に行われる、サッカーのワールドカップ(W杯)アジア最終予選、日本―北朝鮮戦をめぐって、スポーツの枠を超えた関心の広がりが見られます。過剰に対立をあおる報道がある一方、「スポーツらしい開催を」と願う声も多い。日朝間の難しい関係が続いている中、日本ではサッカーを通じた「小さな交流」が積み重ねられています。Jリーグを目指す在日朝鮮人主体のチーム、「FCコリア」(東京都社会人リーグ一部)。そこでの活動には、9日の試合に求められるスポーツの精神が芽吹いています。和泉民郎記者

東京 FCコリアの挑戦

 東京・北区の東京朝鮮高校のグラウンド。夜の底冷えする寒さを吹き飛ばすように、大きな声が響きます。日本語と朝鮮語が入り交じりつつ。

 「うちは国籍に関係なくだれでも受け入れています。もちろん日本人もいますよ」。李清敬総監督(46)は、選手の動きに目を細めます。

 在日朝鮮人だけのチームに昨年、2人の日本人、中国人、在日韓国人が加入。今季は、韓国でユース代表経験のある実力派も参加しています。

 25人あまりの選手のほとんどは社会人で、仕事を終えてから、週3回の全体練習をこなします。 「在日コリアンに夢と感動を与える」「日本の国際交流に貢献する」などを理念に掲げる同チーム。その前身は「在日朝鮮蹴球団」にあります。

在日だけは限界

 同蹴球団は1961年に設立、日本で1000試合以上の日朝親善試合をこなし、実力も「幻の日本一」といわれる強さを誇りました。「外国人チーム」のため、90年代半ばまで国内の公式戦にいっさい出られなかったものの、全日本選手権で優勝したチームを破り、日本リーグトップのチームを下すこともしばしばでした。80年代以降、10人を超える北朝鮮代表も輩出してきました。

 しかし、Jリーグが始まる90年代には完全に力関係が逆転。「在日だけでやっていても限界がある」と思っていたとき、李さんは友人の日本サッカー協会・田嶋幸三技術委員長の言葉に感銘を受けました。

 「私たちは決して日本だけが強くなればいいとは思っていない。アジアの発展がなければ、僕らの本当の発展もない」

 実際、日本協会は世界の技術動向、日本の強化方向も含めた研究会を、アジアの各国協会を招待し行っています。そんな姿を目の当たりにした李総監督は「ぼくらも垣根を超えてやろう。それがレベルアップにつながるし、スポーツの健全なあり方だから」。

 すでに在日朝鮮人Jリーガーは約10人を数えるなど、「壁」はありません。その第一号で、今季からFCコリア監督の申在範さん(33)もこう話します。

 「私がJリーグ入りしたときは驚きの連続でした。やったことのない練習、いろんな人と知り合って、さまざまな考え方を学びました。だから在日で固まってはいけないと痛感しました」

ぼくらが懸け橋

 新たなメンバーが加わったことで、さっそく変化がありました。

 昨年のキャプテン林龍譯選手は「以前はこぢんまりとやっていただけ。でも、いまは刺激を受け、みんなのやる気が変わってきた」。申監督も「日本選手が加わり一皮むけてきた」とも。

 これに加えて、チームは「小さな」国際交流の場にもなっています。

 日本人の1人で昨年のチーム得点王・小松崎令選手(22)はいいます。

 「チームにくる前は『在日』の存在すら知らなかった。でも、彼らは仲間のきずなを大切にする、いい人ばかり。国と国との関係はよくないけど、人間同士はわかりあえることがわかりました」

 チームのホームページを見て入団した土屋信三選手(21)も「彼らが日本で生きることは困難が多い。いまは、ぼくらが懸け橋にならなきゃいけないのかなと思っています。9日のW杯予選も、分かり合えるきっかけになればいい」。

 もはやチームに「国境」はありません。

 5年でJFL(日本フットボールリーグ)入り、約10年かけてJリーグ入りを目指す同チーム。問題は、外国籍6人以上の「外国人チーム」の加盟を認めていないJリーグの規定ですが、「まず自分たちが力をつけ、今度はJリーグに門戸開放を求めますよ」(李総監督)と明るく話します。

 FCコリアの挑戦の旅は続きます。



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