2005年2月3日(木)「しんぶん赤旗」

イラク駐留の必要 どこに

陸自本隊派兵1年

給水、隊員分だけ!?


 イラク南部サマワに向け、陸上自衛隊の本隊第一陣が日本を出発してから三日で一年になります。イラクの「人道復興支援」が最大の口実でした。その実態は―。


■治安悪化で警備は増強

 一月二十八日、イラクへの陸自第五次部隊の派兵命令が出されました。これまでサマワでの活動の中心を担ってきた給水要員を約五十人から約二十人へと半分以下に削減。一方で、警備要員は約三十人増やすと報じられ、約百八十人に膨れ上がるとみられます。一人の給水要員に九人の警備要員という格好です。

 給水要員の大幅削減は、外務省がODA(政府開発援助)で六基の浄水装置を提供し、必要がなくなっているためです。

表:陸自宿営地を狙った砲撃

 陸自の給水活動は、河川の水を浄水し、市民に供給するというもので、これまで一日あたり二百五十トンを供給してきました。しかし、ODAによる六基の浄水装置がフル稼働すれば、一日あたり三千百三十六トンの給水が可能になります。

 政府も「浄水のニーズはなくなってくる」(大野功統防衛庁長官、昨年十二月十三日の衆院イラク特別委員会)と認め、今後の給水対象は「(現地の)自衛隊員自体が使用する水」(同)だけになります。

 このため、今後の活動は公共施設の補修などに軸足を移すことになります。しかし、これも自衛隊は「いわば仕切り(調整)をしている」にすぎず、「現地の(イラク人の)みなさまが働いてくださっている」(同)のが実態です。

 中東研究者からも「イラク人技術者や専門家にイラク国外で技術研修を施すような支援のほうが、効果は大きい」(酒井啓子・アジア経済研究所参事、『イラクはどこへ行くのか』)という指摘が上がっています。

 一方で、警備要員が増員されるのは、治安情勢が悪化しているためです。この一年間で、陸自宿営地への迫撃砲などによる攻撃は九件十四発にのぼります。(表)

 警備要員が百八十人になれば、派兵部隊本隊五百人のうち、36%を占めることになります。これは、軍隊による「人道復興支援」がいかに非効率かを示すものです。

■武装米兵ら輸送報道も

 「人道復興支援」という口実が崩れる一方、実態がヤミに隠されているのが、航空自衛隊のC130輸送機がクウェート―イラク間で実施している多国籍軍への後方支援(安全確保支援活動)です。

 防衛庁によると、空自派兵部隊が活動を始めた昨年三月三日から今年一月二十七日までに百十五回、百九十九トンの輸送を実施しています。内訳については、(1)人道関連の物資(2)陸上自衛隊の人員・物資(3)関係各国・機関等の人員・物資―としているだけです。

 一方、現地からの報道(「毎日」昨年十二月九日付など)によると、昨年十二月初めまでに、約四千四百人の人員を輸送。うち約三千人が自衛隊員で、多国籍軍兵士が約千二百人、そのほかが約二百人となっています。多国籍軍兵士のほとんどが武装米兵といいます。

 また物資も、陸自の装備品など約三十トンに対し、ヘリコプターや車両の部品など米軍関連物資が約八十トンとされています。

 空自は、イラク駐留米軍の空輸拠点であるイラク南部のタリル空港を中心に活動し、同空港での全体の輸送量の約一割を担っているという指摘もあります。

 ところが、政府は、活動拠点や、輸送した人員・物資の具体的な内訳などは「安全上の理由」を口実にいっさい明らかにしていません。

 ファルージャでの市民大量虐殺のような「掃討作戦」を行っている米軍部隊を運んでいないという保証はありません。

 政府は「(米軍などの)武力行使とは一体化しないから、憲法違反ではない」と繰り返してきました。しかし、もし「掃討作戦」に従事する部隊を運んでいれば、米軍の軍事弾圧、武力行使と一体化した活動を行っていることになります。

 一月三十日には、バグダッド北方で英軍のC130輸送機が撃墜されました。大野防衛庁長官は一日、活動の継続を表明しました。しかし、空自のC130が攻撃を受けない保証は何もありません。

■世論は早期撤退が多数

グラフ:自衛隊派兵延長についての世論

 一月三十日のイラク国民議会選挙で、シーア派の「イラク統一連合」が勝利宣言を出しました。同連合は「多国籍軍の撤退期限の明確化」を公約に掲げています。「駐留軍撤退決議の提出もありうる」(専門家)との見方も出ています。

 ぼう大な犠牲を生んだイラク戦争の最大の口実だった大量破壊兵器が存在しなかったことが明白になり、大義を失った米国の軍事支配は、「治安維持」も「復興支援」も果たせず、完全に行き詰まっています。

 治安は悪化の一途をたどり、米兵の死者は千四百三十六人、多国籍軍全体で千六百七人にも達しています(一月末現在)。軍事支配が本格的な復興を妨げ、首都バグダッドですら一日の電力供給が二時間という状況です。

 イラクから実際に撤退した国や撤退を表明・検討する国も相次ぎ、多国籍軍は当初の三十七カ国から二十カ国になろうとしています。

 自衛隊についてはどうでしょうか。サマワの地元紙の世論調査で、大多数が陸自の駐留延長を望んでいるとの報道もあります。しかし、現地では、外務省の援助や民間企業の活動への期待の方が大きく、自衛隊を排除して日本の支援が途絶えるのは困るというのが実態だという指摘もあります。

 日本国内の世論調査では、早期の自衛隊撤退を求める声が多数です。(グラフ)

 自衛隊がイラクにとどまる理由はどこにもありません。



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