2005年2月2日(水)「しんぶん赤旗」

その答弁が 政治不信を増大させる

小泉首相 まるで人ごと

自民派閥ヤミ資金

井上議員質問に


写真

パネルを示して小泉首相を追及する井上哲士議員=1日、参院予算委

 「あなたのその答弁が政治不信を増大させている。国民はまったく納得していない」――一日の参院予算委員会。日本共産党の井上哲士議員は、「政治とカネ」の問題で、旧橋本派の一億円ヤミ献金事件、さらには小泉首相の出身派閥・森派の政治資金規正法違反疑惑を追及しました。小泉首相は、党総裁として、自民党の一連の疑惑を解明する責任感を欠き、まるで“人ごと”のような答弁を連ねました。

判決にも首相「本人の問題」

 旧橋本派(平成研究会)の一億円ヤミ献金事件では昨年十二月三日、滝川俊行・平成研究会元事務局長に有罪判決が下されました。同判決は、政治資金規正法にもとづく政治資金の公開を「民主政治の健全な発達に寄与する」ものと位置付け、政治団体の重い責任を指摘しています。(別項参照)

 井上氏の求めで、最高裁の大谷直人刑事局長がこの判決文を読みあげると、委員会室からは「ほーっ」と感嘆する議員の声が聞かれました。

 これをどう受けとめるかと聞かれた小泉首相は、「政治資金規正法の趣旨に基づいて政治家一人ひとりがエリを正さなければ」とのべながら、橋本龍太郎元首相らの国会証人喚問については、「司法で問われている問題。与野党間で協議しており、それをふまえて、(喚問に応じるかどうか)本人が判断される問題」と“人ごと”答弁。野党席からは「わかってないよ」という声が飛びました。

疑惑のカネ受領の2閣僚「適正処理」

 旧橋本派支給の「氷代・モチ代」が
未記載の政治家・自民党支部(01年)

 棚橋 泰文・内閣府特命大臣200万円
 林田  彪・内閣府副大臣400万円
 山崎  力・参院議員200万円
 佐藤 泰三・参院議員200万円
 中島 真人・参院議員200万円
 小斉平敏文・参院議員200万円
 奥山 茂彦・前衆院議員400万円
 園田 修光・元衆院議員100万円
 服部三男雄・前参院議員200万円
 森下 博之・前参院議員200万円
 自民党広島佐伯中央支部100万円

 事件になった日歯連の一億円ヤミ献金は旧橋本派を通じて、派閥の所属議員に“モチ代”として流れました。井上氏は、この金を受け取っていた、伊藤達也金融相、棚橋泰文科学技術相の政治的・道義的責任を問いましたが、両氏は「規正法にのっとり適正に報告している」と、まったく責任感のない答弁をしました。

 棚橋科学技術相については、さらに深刻な疑惑が浮上。平成研は二〇〇一年六月二十七日、同科技相が支部長を務める支部に二百万円を支出したと報告しています。ところが同支部の報告書には寄付の記載がありません。「規正法にのっとる適正な報告」がされていないのです。

 井上氏は、平成研究会の収支報告書にあるモチ代、氷代で、受け入れた政治団体の報告書に記載されていない例が多数あること(表参照)を示し、「規正法違反という認識はあるのか。調査せよ」と追及。棚橋科技相は、「事務的なミスも含めもう一度きちんとやっていきたい」と答えました。

 一億円ヤミ献金事件の公判で、滝川被告は、派閥として巨額の資金をプールし、ヤミの選挙資金を配った事実を告白。「選挙費用は額が決まっているが、それで収まらないのは永田町の常識。派閥からのものが表にでると困るからだ」とのべています。

 井上氏はこうしたヤミ資金の全体の解明のために、橋本龍太郎元首相ら七人の証人喚問を要求。棚橋氏は「裁判の冒頭陳述は検察官が一方的にくみたてるものだ」などと抗弁しました。井上氏が「そういうことをいうのならこの場で徹底的に論議することが必要」と反論すると、委員会室からは「証人喚問でやろう」という声があがりました。

差額400万円杉浦副長官「調査し…」

 「疑惑は平成研(旧橋本派)だけではない」―。井上氏が次にただしたのは、首相の出身派閥・森派(清和政策研究会)のヤミ資金疑惑でした。

 森派が、所属議員に「氷代」「もち代」を配っていながら、政治資金収支報告書に記載していない問題です。

 この問題で、森派は“配っていない”としているのに、杉浦正健官房副長官はその森派から資金を受け取っていたと政治資金報告書に記載。その矛盾が批判を浴び、自民党から受け取ったと「訂正」しています。

 「そうすると、新たな疑惑が生じる」(井上氏)。同年に自民党が杉浦氏に支出した額が千六百万円なのに、「訂正」の結果、杉浦氏が自民党から受け取った額が四百万円多い二千万円になるのです。

 井上氏が、パネルを示すと、委員会室から「オー」という驚きや「お金がわいてきたのか」との声があがりました。

 「なぜ支出以上の収入があるのか」―。

 杉浦氏は「調査している」と逃げますが、井上氏は「調査してから『訂正』したのではないのか」と畳み掛けました。杉浦氏は、しどろもどろになりながら、やはり「調査している」としか答えられません。

 井上氏は「杉浦官房副長官だけの問題ではない。清和研から実際には金がいっていたのか、党の政治資金報告書に書かれていない金がいっていたのか、二つに一つだ」とただし、首相に説明を求めました。しかし、首相はまともに答えませんでした。

 井上氏は「平成研、清和研、自民党全体にヤミのお金が動いていることが浮き彫りになった。このことの是正こそ、求められている」と強調しました。

 井上氏の事務所には「痛快だった。あれだけやられると、小泉さんもたじたじだ。あんなことしか言えなくなる」(横浜市の男性)という声も寄せられました。


旧橋本派1億円ヤミ献金事件の東京地裁判決から

透明性求める

 「政治資金規正法は、民主政治の健全な発達に寄与することを目的として制定されたもので、…政治団体等により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に公明かつ公正に行われるように、まず、政治団体にその収支を報告させ、政治団体に係わる政治資金の流れを公開させることにより、その政治活動の透明性を確保しようとするものであり、他方、政治団体はその責任を自覚し、その政治資金の収受に当っては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、同法に基づいて公明正大に行わなければならない」

 「政党の派閥が組織する政治団体が、一億円もの巨額の寄付を受けながらこれを収支報告書に記載せずに秘匿したというもので、それ自体悪質な犯行である」

 「寄付を受けた事実そのものを隠ぺいすることにより、国民の監視や批判を免れようともくろんだというのであり、まさに政治資金規正法の趣旨を踏みにじるものというほかなく、酌量の余地は全くない」



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