2005年1月30日(日)「しんぶん赤旗」

浜岡原発、耐震補強へ

東海地震対策 中部電力が発表


 中部電力は二十八日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の耐震補強工事を実施すると発表しました。浜岡原発は、近い将来起きると予測されている東海地震の震源域に位置しており、住民や地震学者から、運転停止を求める声が強まっていました。

 浜岡原発には、1号機から5号機まで五基の原子炉があります。中電は五基すべてについて補強工事を実施するとしています。

 同社によると、工事の内容は、(1)屋外原子炉機器冷却設備の改造(1―5号機)(2)排気塔の改造(同)(3)屋外油タンクの追加設置(同)(4)屋外機器の基礎部の改造(1、2号機)(5)屋外配管の支持部分の追加設置(同)。1、2号機については、現在実施している定期点検を二〇〇八年三月まで延長して行い、3、4、5号機については今後二年程度かけて実施するとしています。

 これらの工事を実施することによって、従来想定していた地震動六百ガル(ガルは加速度の単位)にくらべ、千ガルまで耐えられるようになるとしています。

 工事には一基当たり数十億円から数百億円の費用がかかるといいます。

中電の耐震の論拠が崩れた

 浜岡原発の危険から住民を守る会会長で日本共産党御前崎市議の清水澄夫さんの話 昨年十二月議会で私は、新潟県中越地震で二千五百十五ガルの加速度が記録されていることを指摘し、浜岡原発で想定している六百ガルは小さ過ぎるのではないかと、市としての対応を求めてきました。これまでもたびたび問題点を指摘してきましたが、中部電力は「どんな地震にも耐えられる」と見直さずにきました。その論拠が崩れたことになります。

 しかし、加速度の想定を一千ガルにあげたからといって安全だということにはならない。炉心の冷却に毎秒三百トンの海水をとっている配管はどうなるのかなど住民の心配はたえない。


解説

震源域への立地が異常

 東海地震はいつ起きてもおかしくないといわれている巨大地震です。その震源域に原発を立地し、運転していること自体が異常なことではないでしょうか。

 浜岡原発1号機(一九七六年三月運転開始)、2号機(七八年十一月運転開始)の建設が始まった七〇年代初めのころは、東海地震の震源域は明確になっていませんでした。東海地震にたいする備えも十分でないまま建設されました。

 八六年にはチェルノブイリ原発事故が起きました。地球規模の放射能汚染事故を経験した後、浜岡原発が震源域に位置していることがはっきりした時点で、運転停止の方向を目指すべきだったと思います。

 ところが、中部電力は、運転停止どころか、次々に原発を増設、政府も推進してきました。5号機は、今月十八日に運転を開始したばかり。総発電量は約五百万キロワットに達し、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に次ぐ国内二位となりました。

 中部電力はこれまで、東海地震が起きても大丈夫だとくりかえしてきました。しかし、地震学者らから、根拠がないと批判されてきました。

 地震によって原子炉の炉心が損傷する確率を独立行政法人・原子力基盤機構が試算し、昨年明らかにしました。それによると、国際原子力機関(IAEA)の基準を大幅に上回る原発のあることがわかりました。浜岡原発がその原発とみられています。

 中部電力の耐震補強工事実施方針は、こうしたもとで発表されました。従来よりも耐震性が強化されること自体は望ましいことです。しかし、地震災害が予測通りに起きるのはまれです。今回発表された補強工事で果たして万全といえるのか、疑問が残ります。

 前田利夫記者



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