2005年1月29日(土)「しんぶん赤旗」

憲法の“文民規定”って?


 〈問い〉 中谷元・元防衛庁長官の依頼で陸上自衛隊幹部が改憲案を作っていたことが「憲法尊重擁護義務」に違反するとともに、「文民規定」に抵触するとのことですが、どういうことでしょうか?
(東京・一読者)

 〈答え〉 内閣について規定した憲法66条2項には「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」とあります。

 「文民」というのは「軍人ではない」という意味です。憲法がつくられた当時、わが国は軍事力はまったく持っておらず、軍人もいませんでしたから、なぜこんな規定が入っているかと思う方もいるかもしれませんが、この規定の背景には歴史の痛苦の教訓があります。

 軍隊は、強力な武力を持っていますから、それを背景に政治に関与したり、クーデターで軍事政権を樹立するなどの例は、世界に数多くあります。

 わが国でも戦前は二・二六事件などがありました。また、軍人出身の大臣が政治の方向を大きく左右するなど、日本の運命を誤らせるのに大きな役割を果たしました。

 そのために、軍人が、政治に関与してはならないことを定めたのが「文民規定」です。自衛隊法61条も政治的行為の制限を定めています。ですから、この規定の精神は、軍人が大臣になれないというだけでなく、自衛隊の関係者は、その業務にかかわって政治に関与してはならないことを意味しています。

 今回改憲案を作成したのは、陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班所属の二等陸佐です。防衛や警備の計画、業務の計画などを作成、調整する防衛政策の中枢です。その幹部が、憲法に「軍隊を設置する」「集団自衛権を行使することができる」「国家緊急事態を布告する」「特別裁判所(軍事裁判所)を設ける」「国民の国防義務」などの根拠になる規定を設けるという案を作成したのです。

 これが「文民規定」で否定されている自衛官の政治関与の最も悪い典型例だというべき行為であることは明らかです。 (司)

 〔2005・1・29(土)〕



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