2005年1月28日(金)「しんぶん赤旗」

胎児ら標本114体保存

ハンセン病6施設 堕胎強制され

検証会議報告


 厚生労働省が設置した第三者機関「ハンセン病問題に関する検証会議」(座長・金平輝子元東京都副知事)は二十七日、国立ハンセン病療養所などに保存されている胎児・新生児の標本についての検証と、被害実態調査結果を報告書にまとめて公表しました。

 報告書によると、同療養所など関連六施設に保存されている胎児・新生児の標本は百十四体にのぼっています。

 なぜ標本が残されたかについては、胎児などの80%に研究目的とした切開痕が認められないこと、人工妊娠中絶などの年月日、両親の名前など半数以上が添付されていないことから「研究が目的ではなかった」と分析。「法の不備もあって目的もなく残されたのではないか」と指摘しています。

 こうした事態が起きたのは「国立ハンセン病療養所における医療倫理の欠如があった」と強調し、生まれた後に死亡した可能性のある胎児・新生児標本は検視、異常死体届け出を出すこと、丁重に供養されるべきだと提言しています。

 胎児・新生児標本の時期は一九二四―五六年まで。同療養所では患者の強制隔離・絶滅を基本にされ、違法な堕胎が強制されました。標本の大半は人工中絶手術によるものでした。二十九体は体長などから妊娠八カ月以降に、うち十六体は新生児とみられ人工早産か正常に出産した後に亡くなったとみています。

 旧優生保護法は一九七六年一月まで中絶の基準を八カ月未満としており「殺人とみられるケースもある」と指摘し「入所者の人間としての尊厳を傷つけられ続けている」と報告しています。

 このほか、死亡後に解剖された入所者の標本も二千体以上見つかりました。「患者の死イコール遺体解剖という図式が強制的に当然のこと」とされたと指摘しています。

 被害実態調査報告では、八百四十一人の入所者・元入所者から回答を得た結果、財産、身体的、精神的損害、「社会の中で平穏に暮らす権利の侵害」を含め「人生被害」総体として重層的、複合的被害があったとしています。

 再発防止としては、患者の権利の擁護制度の確立、法制化などについて提言しています。

 二〇〇四年度の検証会議報告書は三月にまとめられる予定です。



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