2005年1月24日(月)「しんぶん赤旗」

“イラクで自由促進したか”

米大統領演説 アラブで厳しい批判


 【カイロ=小泉大介】ブッシュ米大統領が二期目の就任演説で「自由の拡大」「民主化支援」「専制政治の終結」などの言葉を繰り返したことにたいし、アラブでは怒りが高まり、二十二日付の各紙は、厳しい批判の論調を掲げました。

 ロンドン発行の汎アラブ紙アルクドス・アルアラビは「ブッシュ大統領のいう民主主義は、十万人のイラク人の血に染まった民主主義だ」「アラブは、イスラエルの侵略を支持してきた米国を憎んでいる。この政策が変わらない限り、米国がいう自由や民主主義はたんなるうぬぼれであり、意味がない」と指摘しています。

 同じく汎アラブ紙のアルハヤトも「ブッシュ大統領はアラブと中東に民主主義と自由を拡大するといい、サダム・フセイン(元イラク大統領)打倒を正当化した。しかしこの戦争がもたらしたのは、破壊とテロの拡大、市民の犠牲であった。米政権がやっていることは、自由の促進などではなく、それに至る道を破壊することである」と述べています。

 レバノンのアンナハル紙は「イラクで主権が実現されず、アラブとイスラエルの紛争が解決しないなかで語られる民主主義は幻想だ」と述べ、エジプトのアルグムフリア紙も「ブッシュ大統領は自由の拡大が米国の責務だといったが、最大の危険は、この自由が、パレスチナ領土におけるイスラエルの領土拡張の自由であり、イラクにおける米国のそれとなることである」と記しています。

先制攻撃が政策

 またサウジアラビアのアルワタン紙は「ブッシュ大統領は『世界中で専制を終わらせる』と述べたが、美辞麗句をもてあそぶものだ。ブッシュ大統領は(イスラエルの占領に苦しむ)パレスチナ人にたいし、国家樹立と難民帰還の権利を与えるというのであろうか」と疑問を提示しています。

 同じサウジの英字紙アラブ・ニューズは「言葉は偉大だが…」と題する社説で「ブッシュ大統領の感動的な言葉は、一期目で行ったことに照らして評価されなければならない」と述べています。

 ブッシュ政権の今後に深刻な懸念を表明する論調も目立ちます。

 アラブ首長国連邦のアルバヤン紙は「『専制政治とのたたかい』とは、他国にたいする政治的、外交的、さらには軍事的な圧力の範囲を最大限拡大するための尊大な表現であり、きわめて危険である」と強調。

 レバノンの英字紙デーリー・スターは、「先制攻撃が米政権の公式政策となるなか、今後さらなる体制転覆が追求されることになるだろう。中東の人々は、アフガニスタンとイラクにつづき、米政権が今後、イランとシリアにたいして、外交的、経済的、軍事的圧力を用いて、現体制の転覆にのりだすことを懸念している」と指摘しています。



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