2005年1月10日(月)「しんぶん赤旗」

イラク戦死米兵数示し米軍の撤退を求める

ロサンゼルス「平和のための退役軍人会」

毎週、海岸に十字架たてる


写真

「平和のための退役軍人会」の行動責任者カルロス・ニクソンさん=米カリフォルニア州サンタモニカ海岸

 イラクで戦死した米軍兵士の数は千三百五十人を超えました。米カリフォルニア州ロサンゼルスの海岸に週一回、おびただしい犠牲者を象徴する無数の十字架が立てられます。イラク戦争・占領に反対し、米軍の撤退を要求する「平和のための退役軍人会」(VFP)が毎週日曜日、行っている行動です。(ロサンゼルス=菅原啓 写真も)

 二〇〇四年最後の日曜日となった十二月二十六日午前七時半。クリスマスの余韻が残るロサンゼルス近郊のサンタモニカ海岸に白い十字架を抱えた男女数人が姿を現しました。

若者たちの悔しさ家族の悲しみが…

 巻尺で間隔を正確に測りながら、十字架を一本一本、砂浜に立てていきます。

 全体が見渡せる位置には「アーリントン・ウエスト」の文字。この名は首都ワシントン郊外にある「アーリントン国立墓地」をもじったものです。

 アーリントン墓地は米軍の管理下に置かれ、南北戦争以来の戦死者二十六万人以上が正式に埋葬されているところ。米軍の戦争を「正義の戦争」とみなす軍人の「聖地」です。

 アーリントン・ウエストにも大きな星条旗が掲げられていました。しかし、戦争を賛美する雰囲気はありません。不正義の戦争で命を落とした若者たちのくやしさや家族の悲しみが全体を包み込んでいます。

 「大量破壊兵器の存在などという戦争の根拠はうそだった。間違った戦争のために、若者たちが貴重な命を落とし、いまも落とし続けていることが本当につらい」。行動の責任者を務めるカルロス・ニクソンさん(61)が語ります。

 「平和のための退役軍人会」がこの行動を始めたのは昨年二月十五日。その時点での戦死者数は五百四十人でした。この日、立てられたプラカードによると、戦死者数は千三百四人、負傷者数は九千八百四十四人に達しました。

 Tシャツ姿で温厚な表情を見せるニクソンさんは、ベトナム戦争に従軍した経験もある退役軍人です。「イラク戦争は、その経過や悲惨さからいって、ベトナム戦争に似ている。政府はいまだに誤りを認めていないが、いつの日かイラク戦争も無駄な誤った戦争だったことが認知されると確信している」

孤立しているのは米国政府の方だ

 「日本の記者か。日本の軍隊は撤退しないのか」と声をかけてきたのは、十字架の周りの木道のうえにたまった砂を丁寧にとりのぞく作業をしていたジャックさん(38)です。

 「世論の多くは派兵に反対ですが、政府は派兵を続けなければ国際的に孤立するかのように宣伝している」と説明すると、「孤立しているのは米国政府の方だ。米国のいうことが国際社会だと思って、派兵を続けていたらもっと孤立するだろう」と力を込めました。

 作業が始まってから約二時間半。穏やかな海を臨むサンタモニカ海岸の一画が白い十字架で埋まりました。

 プラカードには次のような文章も書かれていました。「もしイラク人の死者数も確認されるなら、十字架がこの海岸中を埋め尽くすことだろう」



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