2005年1月7日(金)「しんぶん赤旗」

ファルージャ総攻撃から2カ月

誰も住めない廃虚に

今も続く破壊 選挙拒否の市民多数


 米軍が昨年11月8日未明にイラク中部ファルージャにたいする総攻撃を開始してから2カ月。本紙が5日、ファルージャ近郊に避難している住民から電話で得た情報や新聞報道から、同地が人の住めない廃虚と化している惨状とともに、ファルージャをはじめ広範な地域の住民が今月30日に予定されている暫定国民議会選挙など政治過程からも排除されている実態が浮き彫りになっています。

 (カイロ=小泉大介)


 総攻撃開始直後にファルージャから脱出し、昨年末に自宅に一時的に帰ったイラク・イスラム党幹部のカレド・ムハンマド氏(43)。「破壊の規模にただ驚くだけでした。ほとんどの家屋が完全に破壊され、損壊をうけていない家屋はまったくといっていいほどない。街にはいまだに死臭がただよっている状態でした」と市内に入った時の印象を語りました。

 ファルージャ(人口約三十万人)はイラクの中でも多くのモスク(イスラム教礼拝所)があることで有名です。総攻撃までは同地を初めて訪れる人々はモスクの尖塔(せんとう)=ミナレットを数え切れなかったほど。しかし現在は「米軍がモスクにも容赦なく攻撃を加え、破壊した結果、ミナレットの数も容易に数えられるようになってしまった」(ムハンマド氏)という状況です。

化学兵器が

 ファルージャ総攻撃では、数千人の住民が虐殺され、その大多数が女性や子どもだったことが明らかになっています。

 「私たちが自宅周辺の家屋から運び出した遺体は完全に焼け焦げていました。化学兵器が使われた可能性が極めて高い」。ムハンマド氏は攻撃の残虐性を告発しました。

 同氏は政党幹部としてファルージャの事情に精通していることから、外国人ジャーナリストから案内役を要請されますが、現地取材は米軍の許可を得なければならず、実際に市内を取材することは現在にいたってもほとんど不可能だといいます。「米軍は自分たちがファルージャでおこなった蛮行が世界に知られることを阻止したいのです」

 「ファルージャには今も、水もなければ電気もありません。学校や病院も破壊されたままです。私の家は全壊はまぬがれましたが、家具はすべて破壊され、窓も粉々です。とても住めるような状態ではありません。しかも米軍の攻撃は今も続いており、ファルージャにいる限りいつ殺されるかわかりません」

 ムハンマド氏は、同氏を含め大多数の住民がいまも郊外の避難民キャンプなどでの生活を余儀なくされている事態の悲惨さを訴えました。

 米軍のファルージャ総攻撃の罪は、住民を大虐殺し街を廃虚にしたことにとどまりません。同市を中心としたイラク西部アンバル州全体の住民の選挙参加も不可能にしてしまいました。

 汎アラブ紙アルハヤト三日付は、ファルージャ総攻撃がアンバル州選挙管理委員会の活動を機能停止に追い込み、同州の住民たちが選挙に参加する機会をも奪ってしまったと指摘しました。同紙上で同州のサード・アッラウィ選管委員長は「われわれは選管の事務所を借り、アンバル州全体で有権者登録に向けた準備も開始していたのに、総攻撃がすべてを台無しにしてしまった」とコメント。同紙は、「選挙は占領体制を強固にするためのものであり、それ以外のなにものでもない」として選挙を拒絶する住民が同州のいたるところで多数にのぼっていると伝えています。

疑問高まる

 米政権は現在、イラク全土で政治的混乱が広がり治安が極度に悪化しているにもかかわらず、自らの占領政策を正当化するために予定通り選挙を実施することに躍起となっています。しかし、ファルージャ住民の大量虐殺と多数の国民の不参加のうえでおこなわれる選挙に正当性が与えられるのか、根本的な疑問の声が高まらざるを得ない事態となっています。



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