2004年12月30日(木)「しんぶん赤旗」

ドイツ労働者

強まる解雇、労働時間延長の攻撃

働く権利擁護へ粘り強く


 ことしドイツでは「国際競争力強化」を理由に資本側から人員削減や労働時間延長、賃金切り下げなどの攻撃が強まりました。労働者側は警告ストや欧州統一行動などさまざまなたたかいを繰り広げ、多くの職場で労働時間延長計画をはね返すなど労働者の権利を守っています。 (ベルリン=片岡正明)


 週労働時間は二十八・八時間、働くのは四日だけ―自動車メーカー大手、フォルクスワーゲン社の労働者は、ドイツでも先進的なこの労働条件を守りました。法定の四十時間より短い三十五時間制を協約しているドイツ金属機械産業全体よりさらに短い労働時間です。

 同社では、経営者側の労働コスト削減攻撃に金属産業労組(IGメタル)が反撃し、二十八・八時間制を維持し、雇用を確保する協定に十一月、労使が合意しました。十万三千人の全従業員の雇用が二〇一一年まで保障されることになりました。

警告スト行い解雇計画撤回

 自動車大手のダイムラークライスラー社では、経営者が「五億ユーロ経費削減計画」を発表。労働者側が受け入れないときは、バーデン・ビュルテンベルク州にある高級乗用車メルセデスの新型車生産工場を国内外の他の工場に移すと脅しました。労働者側は全国の事業所での警告ストを背景に七月末、経営者側と合意。六千人の解雇計画を撤回させて二〇一二年までの雇用を確保、週四十時間労働への延長をやめさせ、週三十五時間制を守りました。

 家電大手のシーメンスはことし春、不採算部門とするノルトラインウェストファーレン州の携帯電話二工場の生産をハンガリー工場に移転させると発表し、労働者側に二千人の解雇か労働時間の延長かを迫りました。

 IGメタルは雇用確保を優先させて交渉し、六月末、四十時間への労働時間延長を受け入れることで妥結しました。両工場の労働者の賃金は実質20%減ることになりましたが、ハンガリーへの移転をやめさせ、二年間の雇用を保障させました。

解雇の場合は職業訓練保障

 深刻な経営難に陥っている欧州最大のデパート・通販会社カールシュタット・クウェレは九月下旬、大規模な事業再編計画を発表しました。統一サービス産業労組(ベルディ)と同社の事業所評議会(従業員代表組織)は雇用確保を最優先に交渉を進め、十月十四日、賃金の一部削減を受け入れるのと引き換えに、向こう三年間の雇用を保障させました。今後見込まれる五千五百人の人員削減については、解雇一時金や再就職のための職業訓練などが保障されます。

 米自動車大手ゼネラル・モーターズの子会社アダム・オペル社では、大量解雇に反対する警告ストが続いていました。労働者側は十二月に九千五百人の人員削減を受け入れました。しかし、解雇される労働者は職業訓練会社に移り、再就職のための訓練を受けながら一年間は給与を受け取ることで労使が合意しました。

週34時間制へ新たな時短も

 労働時間短縮が進展した企業もあります。ベルディは電話通信会社ドイツテレコムとの交渉で三月、週三十八時間制から三十四時間制への時短で合意しました。経営者側は当初、短縮される時間分の賃金をいっさい払わないとしていましたが、交渉で部分的に支払うことが合意されました。労働者の手取りは減ることになりますが、経営者側はこれと引き換えに二〇〇八年末まで経済的な理由で解雇しないことを約束しました。

 特筆すべき動きとして、ドイツ建設林業農業環境産業労組(IGBAU)が九月に発表した欧州移民労働者労組結成の動きがあります。IGBAUはこれまで旧東欧から流入する移民労働者がやみ労働に流れ、労働条件を引き下げていることとたたかってきました。欧州連合(EU)拡大でさらに増加する移民労働者を援助し、労働組合に組織しようというものです。



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