2004年12月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

生活保護

生存権を脅かす見直しやめよ


 長引く不況のもと、国民が生活に困窮したときの最後のよりどころ、生活保護制度の役割の発揮がつよく求められています。

 ところが、小泉内閣は、生活保護制度にも「構造改革」の大ナタをふるい、来年度予算案で、老齢加算の段階的廃止につづいて母子加算の削減を打ち出しました。憲法第二五条が保障した生存権をふみにじり、最低生活をさらに切り下げる「見直し」は、絶対に許されません。

実態無視の母子加算廃止

 政府は、ひとり親の生活保護世帯の保護費に上乗せしている母子加算を、十六歳から十八歳(高校生)の子どものみを養育している家庭は対象からはずし、三年間で段階的に廃止するとしています。“加算を含めた母子世帯の保護基準が保護を受けていない母子世帯の消費水準より高い”というのがその理由です。

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」がまとめた報告書を受けたものですが、もともと同委員会は母子加算の廃止に反対の立場でした。

 厚生労働省の強い圧力のもと、見直しを報告書に盛り込みましたが、「単純な比較により…基準の妥当性を判断することはできない」とする意見も併記しています。

 実際、厚生労働省の調査でも、母子世帯の年収は、一般世帯の約三分の一にすぎません。一般母子世帯の約八割が生活が苦しいと訴えています。加算の廃止ではなく、低すぎる母子世帯全体の生活の底上げをはかる施策の拡充こそ、おこなうべきです。

 保護基準を引き下げる一方、就労支援を強化するというのが政府の方針です。予算案には自治体がハローワークとの連携をはかりつつ、「自立支援プログラム」の導入を推進するための経費が盛り込まれました。

 就労支援は当然のことです。しかし、いま各地の福祉事務所で頻発しているのは、母子家庭の母親や病気の人などに、働きたくても働けない状況があるにもかかわらず、実情を無視した就労を強要し、保護の打ち切りや申請を拒否するという、違法・不当な事態です。

 自民・公明与党と政府は、生活保護費の国庫負担率引き下げ(〇七年度実施)を合意しています。こうしたもとでの「自立支援プログラム」は、保護費抑制のための手段として利用されかねないと、危ぶむ声があがっているのも当然です。

 この一年、専門委員会では、生活保護を「利用しやすく、自立しやすい制度」とするための議論がおこなわれてきました。深刻な国民生活の実態に比べて、保護漏れの低所得者が膨大に存在する現実に見られるように、生活保護制度が「機能不全」にあるとの認識があったからです。政府は、こうした深刻な現場の実態や専門委員会の議論にそった制度の見直しこそ、おこなうべきです。

憲法にそった改善こそ

 この数年、生活保護の基準切り下げや不当な運用にたいして審査請求や裁判が各地で起こされ、利用者側の勝訴が相次いでいます。

 予算案に、「高等学校の就学費用」を支給することが盛り込まれたのも、今年三月の最高裁での「学資保険」裁判の原告勝訴の判決と、十二年におよぶ運動と世論が反映したものです。小泉内閣の憲法第二五条の理念に反する生活保護改悪を許さず、国民の生存権保障としての制度の改善を求める運動を大きく広げるときです。



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