2004年12月28日(火)「しんぶん赤旗」

解説

労政審の過労死対策

目的に逆行する「申し出」


 労働政策審議会安全衛生分科会の議論の出発点は、過重労働・メンタルへルス対策の強化・法制化でした。ところが、これまで行政指導の対象だった月四十五時間超の時間外労働を、一部を除いて基本的に労資の自主的とりくみに委ねるのでは、当初の目的に逆行します。

 現在、労働組合の組織率は二割もなく八割が未組織労働者です。労組がある大企業職場でも、年間千時間にも及ぶ残業を可能とする労使協定が結ばれ、労働者の健康破壊が広がっています。これらの実態は労資に委ねるのではなく、行政指導のいっそうの強化が必要なことを示しています。

 労資の自主的とりくみから除かれ事業者に法的義務を科すのは、月百時間超の時間外労働をした労働者が産業医の面接指導を申し出た場合に限られます。月百時間超だけでなく二―六カ月平均で月八十時間を超えて働くと、医学的に過労死の発症リスクがもっとも高くなるため、現「総合対策」はいずれの場合も、事業者は当該労働者に医師の面接指導を受けさせなければならないと定めてきました。

 それがなぜ、労働者の申し出を必要とするのか、大きな疑問です。いま多くの労働者は、リストラ不安や成果主義によるしめつけのもとで、長時間労働に追い込まれ、ただ働きまで強いられています。実際に「申し出」ができる労働者がどれだけいるのでしょうか。法制化されても、これでは通達より後退することになるのではないかと懸念されます。 畠山かほる記者



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