2004年12月27日(月)「しんぶん赤旗」

がらがら 臨海3セクビル群

空き室4.4ヘクタール 東京ドーム分

財政圧迫し都民施策にも影響

共産党 抜本見直し主張


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テナントの撤退が相次いでいる(左から)東京テレポートセンター、東京臨海副都心建設のオフィスビル

 臨海部でビル事業を行う東京都港湾局所管の第三セクター三社が、大口テナントの撤退が相次ぎ、来年四月には東京ドーム(四万六千七百五十五平方メートル)にほぼ匹敵する四万四千平方メートルの空き室が生じることが二十六日、わかりました。オフィスビルの供給過剰で生じた「二〇〇三年問題」が、二年遅れで第三セクターを直撃し、債務超過に追い込まれている三社の経営がいっそう悪化することが予想されます。

 貸しビル事業が大不振に追いこまれているのは、都が「国際情報交流の戦略拠点」のふれこみで設立した東京テレポートセンター、「臨海副都心開発を先導する」目的で設立した東京臨海副都心建設、国の「民活法」都内指定第一号の竹芝地域開発の三社。

平均入居率は82%台に急落

 三社のビルを一括管理している東京テレポートセンターのホームページ(二十六日時点)によると、空き室のテナント募集をしているのは、七棟のうち五棟。入居企業がなければ、来年四月には空き室面積は、青海フロンティアビル一・六棟分に相当する四万四千平方メートルにふくらみます。三社のビルの平均入居率は、今年九月の90・8%から、来年四月には82・5%に激減する見込みです。

 九六年に開業していらい入居率が高かった東京テレポートセンターのビルも、来年四月に空き室が二万三千平方メートルに増えるため、入居率は68%弱に落ち込む見通しです。

 東京テレポートセンター総務部では、「テレコムセンタービルの空き室がふえるのは、NTTドコモに貸している約三万三千平方メートルのうち、約半分が品川の自社ビルに移転するためだ。(穴埋めの)営業努力をしており、引き合いはあるが、成約には至っていない」と説明しています。

都が270億円の追加支援策

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 東京都は債務超過となった三社を救済するため、九八年度から十年間で二百七十億円の公的資金を投じる追加支援策を実施。

 都はさらに、ビルの入居率を高めるため、家賃無料の自前の庁舎があった職員研修所、青少年センターなどを、わざわざ家賃の高い三セクビルに移転させる「支援」まで行っています。現在、一万平方メートル余を借り上げており、年間十三億円(〇三年度決算)の賃料を支払うというむだ遣いを続けています。

 都の手厚い「支援」にもかかわらず、今年三月期決算では三社の累積損失は八百九十七億円にふくらみました。ビルの空き室増加は、三社の経営悪化につながることは必至です。


3社の中間決算ビル事業収入減累積損失が増加

 東京テレポートセンター、東京臨海副都心建設、竹芝地域開発の三社は、このほど開いた取締役会で九月期(四―九月)の中間決算報告を了承しました。

 それによると、三社ともビル事業収入は、昨年九月期よりも落ち込み、合計百六十九億三千万円で、同十億六千万円の減収となりました。

 三社のうち、当期利益を計上したのは竹芝地域開発(五千七百万円)だけで、他の二社は合計九億一千万円の損失を計上。この結果、三社の累積損失は合計九百五億八千万円に増加しました。

 東京テレポートセンターでは、「二〇〇三年問題が影響し、ビルの賃料が下がったことが減収につながった」としています。


都は失敗認め早急に処理を

 臨海三セク都民オンブズマンの井上徹二氏(公認会計士)の話 ビル事業をしている臨海第三セクター三社は、二〇〇四年三月期決算で一社を除き累積損失をさらに増やし、債務超過状態が続き、「継続企業の前提に重大な疑義」があることを監査法人から指摘されていた。「しんぶん赤旗」の調査で、ビルのテナントの撤退が続き膨大な空き室が生じることが明らかになったが、三社の経営がさらに悪化することが予想される。

 東京都は、臨海第三セクターの失敗を認め、責任を明らかにし、早急に清算、売却など破たん処理を急ぐべきだと思う。


財政圧迫し都民施策にも影響

共産党 抜本見直し主張

自・公・民 公的資金投入を推進

 深刻な経営難に追い込まれている臨海第三セクターに対する各党の対応が問われています。

 一九九八年三月都議会で、十年間に二百七十億円の公的資金を投入する「支援」策に反対した主要会派は日本共産党、生活者ネットだけで、自民、公明、民主、社民などが賛成し議決しました。

 三セク支援を行う臨海地域開発会計(旧臨海副都心開発会計)に一貫して反対しているのは、日本共産党だけです。自民、公明、民主はすべて賛成。生活者ネットは九八、二〇〇一、〇二、〇四の各年度予算に反対したものの、九九、〇〇、〇三の各年度予算は賛成しています。

 三社の今年三月期決算書は、監査法人の監査報告書で「重要な疑義が存在している」とし、決算書類について「このような重要な疑義の影響を反映していない」と警告、倒産・経営破たんの可能性を認めています。

 都の支援にもかかわらず、三社の累積損失は三月末で八百九十七億円にふくらんでおり、都の関係者からも「自力再建は絶望的だ」という声もあがっています。

 飯田橋庁舎から東京テレポートセンターのビルに移転した青少年センターは、今年三月で閉鎖しました。交通の便が悪いため、利用者が激減したことがその理由にあげられました。三セクビルの救済策は、都の財政負担増にとどまらず、都民施策に影響を及ぼしています。

 都議会でこの悪循環を断ち切るよう求めている政党は、日本共産党だけです。

 九月三十日の都議会総務委員会で、日本共産党の吉田信夫都議は、三セクのビル経営事業が深刻な事態にあることを指摘し、「勇気をもって検討と改革のメスを入れるべきだ」と迫りました。

 十一月十二日の〇三年度公営企業会計決算特別委員会では、渡辺やすのぶ都議が、国と都がすすめる「都市再生」で都心の超高層ビル建設が増大し、「臨海副都心は取り残される」と指摘。都民参加で抜本的に見直すよう求めました。

 都財政を際限なく注ぎ込むむだ遣い事業、臨海第三セクターは、都民参加で解散を含めた抜本見直しが求められています。岡部 裕三記者



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