2004年12月27日(月)「しんぶん赤旗」

中越大震災で母子救出支援

消防研を廃止対象

小泉「新行革大綱」 安全対策削る


 新潟県中越大震災で母子救出にも活躍した消防研究所も廃止――小泉内閣が二十四日に決めた「新行革大綱」で廃止や統合を打ち出した十六の独立行政法人のなかに防災や食品安全などで重要な機関が含まれているため、「国民生活に重大な影響を及ぼしかねない」との声が上がっています。

 廃止とされた「消防研究所」は、一九四八年に設置された歴史ある国の研究機関。職員は四十八人と小さいながらも、全国で起きた火災事故の原因調査を手がけるなど国民の生命と安全を守る実用的な研究をおこない、それをもとに現場で実際に救難活動を支援するなど重要な役割を果たしています。

 最近では、新潟県中越大震災による長岡市妙見堰(せき)の土砂崩れによる母子救出に出動。余震が続くなか、土石の崩落危険性を評価し救助隊に指示するなど斜面災害の専門家の立場から救出活動を支援しました。この活動が「母子救出に貢献した」として、麻生太郎総務相と消防庁長官から十一月十九日、感謝状が贈られました。

 外部の専門家でつくる委員会による評価でも最高位の評価を毎年得ており、廃止する理由はまったくありません。

 しかし小泉内閣は、防災研究は他でもできるとして「効率化」を名目に廃止を決定。緊急事態への対応業務だけは要員を五割をメドに削減したうえで消防庁に統合・吸収するとしています。

 防災専門家からは「緊急事態の対応も基礎的研究という土台があってできること。それがなくなれば現場対応も危うくなる。効率だけを理由に国民の生命と安全をまもる業務を切り捨てることは問題だ」との声があがっています。

 新大綱ではほかにも、食料自給率の向上やBSE(牛海綿状脳症)をはじめ食の安全を守る研究に携わる「農業・生物系特定産業技術研究機構」など三つの農業研究機関を統合。研究開発・教育関係法人はすべて「非公務員」とするなど国民生活を守る重要な研究開発を危うくする方向です。

 その一方で、ムダ遣いの大型公共事業は見直しもせず、政官財癒着の温床である官僚の天下りも温存しています。


消防研究所が原因調査や救難活動でかかわった最近のおもな災害

 04年12月 埼玉・ドン・キホーテ火災

  10、11月 新潟中越大震災

  8月 福岡・ブリヂストン工場火災

  7月 千葉・いわし博物館爆発火災

  4月 茨城・鹿島製油所火災

  2月 静岡・浜岡原発火災

 03年11月 神奈川・ショッピングセンター火災

  9月 北海道・出光興産タンク火災

  〃  新日鉄名古屋製鉄所タンク火災

  8月 三重・RDF(ごみ固形燃料)発電施設火災

  7月 新潟・上越新幹線火災

  6月 神戸市伊川谷火災

  4月 鹿児島市南国花火爆発火災


 独立行政法人 行政を「スリム化」するとして国立の病院や研究所、美術館など福祉や医療、教育など国民生活関連部門を国から切り離す制度。コスト優先の運営をおこない、三年から五年の「中期計画」後に存廃などを検討します。二〇〇一年から導入。石油公団などが看板を掛け替えただけの法人もありますが、現在の数は百十二法人(予定含む)。



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