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日本共産党

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赤旗

82、SDGs

市民社会がめざす未来を日本の政治に反映させる

2022年6月

 2015年9月末に開かれた国連の首脳会合で、国際社会の新たな共通の行動計画となる最終文書「持続可能な開発目標」を全会一致で採択しました。豊かで公正な世界をつくることを新たにめざすために、17目標169項目を掲げました。

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 持続可能な開発とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」であり(1987年の国連「環境と開発に関する世界委員会」最終報告)、そのためには環境保全を考慮した節度ある開発が可能であり重要であるという考え方です。

 SDGsでは、この持続可能な開発を実現するために、経済・社会・環境の3つの側面を調和させるべきだと強調しています。さらに注目すべきことは、SDGsは、発展途上国だけでなく、「すべての国に適用されるもの」であり、「世界全体の普遍的な目標とターゲット」とされています。これは前例のない画期的な点であり、前文では「我々は、人類の貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒し安全にすることを決意している。」、「この共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う」と述べています。

ロシアのウクライナ侵攻をやめさせ、分断ではなく市民社会の共同を守る

 ロシアのプーチン政権が始めたウクライナへの無法な侵攻は、多くのウクライナ市民を死傷させ、住宅・建物の破壊、暴力による人権侵害、国内外への多くの避難者を生み出しました。この侵略によってウクライナやロシアで生産される食料を輸出ができず、国連世界食糧計画が「第二次世界大戦後、最悪の食料危機」と警告する事態を生み出し、アフリカなどで多くの人々が飢餓に直面しています。ロシアへの経済制裁の一環として、化石燃料の貿易を規制し国際価格の高騰がおきたために、後発の途上国などでは国民生活が窮迫しています。

 「平和で包摂的な社会の促進」(目標15)はもとよりSDGの目標と取り組みに逆行し、世界の人々を苦境に追いやっているウクライナへの侵略をただちにやめさせなければなりません。

 岸田首相は「価値観を共有するG7主導の秩序」を主張し、政権バイデン米大統領も「民主主義対専制主義のたたかい」だとして、特定の「価値観」で世界を二分する態度をとっています。そして両者で「日米同盟の抑止力強化」をうたい、岸田首相は、GDP2%を念頭に「5年以内に防衛力を抜本的に強化する」「反撃能力(=敵基地攻撃能力)を保有する」として、9条改憲をも選挙政策に掲げています。まさに「力対力」の軍事ブロック的対応です。これでは戦争を拡大し、新たな危険をもたらすとともに、市民活動や人権へのさまざまな制約が課され、世界を分断することになります。

 いま求められているのは、特定の「価値観」で世界を二分し、軍事ブロック的対応で新たな危険を生むやり方ではありません。「ロシアは侵略をやめろ」「国連憲章を守れ」の一点で世界各国の政府と市民社会が団結することです。SDGsの達成のためには、国際的な市民社会の共同が不可欠です。

自公政権のSDGsは異質――科学技術イノベーションとスマートシティ

 政府はSDGs推進の重点施策として、経団連が掲げた「ソサエティ5.0」をそのまま持ち込んでSDGsを「科学技術イノベーション」の目標にすり替え、また「地方創生」の名でデジタル化と一体のスマートシティ構想を提唱しています。この"日本型SDGsモデル"は他のEUなどの先進国のSDGsの取り組みとは、まったく異質のものです。とくに日本のスマートシティ構想は、日本を中国のような「監視社会」に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があります。

 政府や経済界の「SDGsウォッシュ(やっているふり)」に目を奪われたり、あるいは警戒感からSDGsに取り組むのをためらう例もありますが、日本共産党は、世界・国内の市民のみなさんと連帯し、本筋のSDGsの実現を追求します。

コロナ危機が示した社会のゆがみを、SDGsにそって是正する

 SDGsの達成度や進み具合に関する国際レポート『持続可能な開発レポート』2021年版によれば、日本の評価は世界で18位とされていますが、とくに進み具合が低い分野としてジェンダー平等(目標5)、不平等の是正(目標10)、気候変動対策(目標13)、海の豊かさ(目標14)が上がっています。とくにジェンダー平等については、世界経済フォーラムが今年3月に発表したジェンダーギャップ指数で日本が156カ国中120位という深刻な状況です。

 今回のコロナ危機は、こうした到達の根底にある日本社会のさまざまな問題を浮き彫りにしています。非正規雇用で働く人たちが真っ先に仕事を奪われ、一人親世帯の貧困は深刻化し、ジェンダー平等が保障されていないもとで女性はより過酷な状況におかれています。まともな補償もせずに"自粛"を押しつける政治が、中小企業、個人事業主、文化・芸術、イベント関係者を追い詰めました。「小さな政府」の名で公的部門が縮小させられ、医療や保健所が弱体化し、医療崩壊が現実になりました。自民党・公明党の政権が長年とってきた弱肉強食と自己責任おしつけの新自由主義の政治がもたらした人災にほかなりません。

 その一方で、「規制緩和」や優遇税制で富裕層や大企業の目先の利益追求は擁護され、一部の富裕層、巨大企業は、コロナ危機でも利益を増やし、巨額の資産をため込んでいます。

 国民に冷たく、富裕層にあたたかい、中小企業に厳しく、大企業は守る――新自由主義の政治は、もう終わりにして、命と暮らしを何よりも大切にする「優しくて、強い経済」をめざす政治に切り替えなければなりません。岸田自公政権は大軍拡にふみだし、アメリカいいなりに多額の武器を買い入れ、日本を戦争ができる国に変えようとする一方、その財源も示さず、森友事件や日本学術会議の任命拒否のように、国民への説明責任を果たそうとしません。

 SDGsは多様な達成目標を掲げていますが、もともとの出発点である「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」(目標 1)、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」(目標 5)、「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」(目標 13)、「すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する」(目標 8)、感染症への対処を含む「あらゆる年齢とすべての人々の健康な生活の確保」(目標3)、「公正、平和かつ包摂的な社会を推進する」(目標 16)など、SDGsが提起している重要なポイントを踏まえ、日本社会のゆがみの是正に取り組みます。

 SDGsの国内の取り組みだけでなく、グローバル・パートナーシップを活性化して途上国を支援することの重要性は、ますます切実なものとなっています。ワクチン提供、債務の救済・再編、ODAを国民総所得(GNI)の0.7%をめざす(実績は2020年0.26%)などを、協力関係を強化します(目標17)。[「81、ODA」をご覧ください。] 

 また日本のODAにしめるジェンダー平等が主目的案件の比率は、OECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会(DAC)加盟国平均の4%に対し、日本は0.8%と最下位レベルです。これを引き上げる必要があります。

 全人類的な課題である感染症への対応や、新型コロナ禍で資金不足はいっそう拡大しており、不足を埋めるのに従来の資金調達では困難で「革新的資金調達」の実現が必要です。そのための国際金融取引などへの国際連帯税の新設に取り組みます。

市民の参加を拡大し国内の独自目標・計画の導入を

 SDGsを本格的に進めていくためには、市民の目線で、日本の社会が抱える問題をチェックしていく仕組みが必要です。来年2023年のSDGs実施計画の改定に向けて、作業が始まっています。

 現在、事実上、外務省に対応を背負わせ、市民団体や経済界、有識者が参加する「円卓会議」が設けられています。しかし、SDGsの広範な提起を考えれば、内閣府が責任をもって取り組む体制をつくり、市民団体をはじめ、幅広い分野の関係者からの意見を反映させる体制が必要です。

 コロナ禍が長引くなかで、非正規雇用による収入変動で、月によっては生活保護を受ける水準になるなど働きながらの貧国に直面する人が増えていますが、こうした人たちの声が政治・行政に届きにくいという現状もあります、また「人類史における重要な分岐点に立っている。今日の決断と行動が将来の世代に重大な影響を及ぼす」(劉振民・国連経済社会問題担当事務次長)と言われているときに、青年たちから「将来世代は選挙権・被選挙権も限られ、意思を反映させるための仕組みもほとんどない。現在の政策決定に本質的にかかわることができない」という切実な声が出されています。青年たちの積極的な参加を支援するプラットフォームの整備など、より多くの市民の声を政策決定に反映させていく取り組みが、SDGsの達成には不可欠です。

 SDGsはもともと、各分野の目標を達成するために、各国が独自の計画をたてて取り組むことができることになっています。ところが、日本では貧困問題で典型のように、毎年実施の信頼性の高い調査を実施しないまま、データがないとして実態も明らかにせず、問題がないかのようにしているのは、不当です。信頼できるデータ・統計を作成し、国民・市民、各セクターが主体的にかかわり、国政・自治体が目標・計画をもってリードしサポートするとともに、市民の目線で検証し取り組みに生かす多面的・包括的な体制をつくることが必要です。

SDGs基本法・条例の制定を

 SDGsの達成期限まであと8年、SDGsという言葉についての周知度は上がってきていますが、他方SDGsをまだ途上国の課題として誤解している風潮も残っています。SDGsに対する認識を共有し、基本方針と前述のデータ収集と目標の設定、各主体の役割とパートナーシップの明確化、各分野での市民参加の保障と政策決定への関与の重視、内閣府を中心とした推進体制の確立などを明確にするためにも、SDGsに関わる基本法や自治体の条例の制定を進めます。

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