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日本共産党

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赤旗

13、子ども・子育て

子育て・子どもに「冷たい国」から「やさしい国」に

2022年6月

 日本は、子どもと親に「冷たい国」です。

 政府の国際調査で、日本は国民の過半数が「自分の国は子どもを産み、育てやすい国だと思わない」と答えた唯一の国です。その理由は、教育費が高すぎること、雇用が不安定なこと、子どもを産み育てることに対する社会の理解がないことなどです。教育費が完全無償で、親の働き方が安定しているスウェーデンでは、97%が「自分の国は子どもを産み、育てやすい国だと思う」と回答しているのと対照的です。

 ユニセフの調査(2020年)では、日本のこどもの精神的幸福度は、先進国38カ国の中で下から2番目でした。「今の生活に満足している」と答えた15歳の割合が62%と低く、15~19歳の自殺率も、平均を上回っています。

 日本が子育て・子どもに「冷たい国」になっている最大の責任は、政治にあります。

 第一に、子ども・子育ての予算を低水準のまま放置してきたことです。

日本は、家庭予算も教育予算も、GDP(国内総生産)比でOECD加盟国の平均以下で、高学費、多人数学級、劣悪な保育条件、子どもの貧困などが改善されないままになっています。もともと子育ての負担は重いものなのに、基本的に「家庭の責任」とし、政治の責任を果たしてこなかったことは重大です。

 第二に、子どもの権利の保障をおこたってきたことです。

 日本政府は、国連子どもの権利委員会から、子どもの権利の保障が不十分だという勧告を繰り返し受けています。「教育制度の過度に競争的な性格」が「子どもの肉体的および精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、子どもの最大限可能なまでに発達することを妨げている」(2004年)、「自己に関わるあらゆる事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が尊重されていない」(2019年)など、子どもをめぐる制度の根幹に対する厳しい評価が示されています。ところが、日本政府はそれらを無視し続け、何も変えようとしてきませんでした。社会問題となった校則ですら、政府は「子どもの意見表明権の対象外」だと答弁しているのです。背景には、政権党の自民党のなかに、いまだに「子どもに権利などとんでもない」という古い考えが残されているという問題もあります。

 岸田政権は子ども家庭庁をつくり、「子ども真ん中社会の実現を」と宣伝しています。しかし、子ども予算の抜本増と、子どもの権利の保障に本気で取り組まない限り、看板倒れになることは明らかです。

 自民党は軍事費を「5年以内にGDP比2%以上」、現在の2倍となる年間11兆円以上にすると言っています。その財源をまかなうには、大増税か、社会保障と教育予算を削るかしかありません。平和を脅かし、暮らしを押しつぶす大軍拡ではなく、教育・子育ての予算をこそ増やすべきです。

 日本共産党は、二つの問題を解決し、日本を子育て・子どもに「冷たい国」から「やさしい国」に変えるために、子どもの声に耳を傾け、広い国民の皆さんと手をたずさえて、力を尽くします。

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子育て予算:2017年年度、日本は2019年(出典:OECD統計データより)

教育予算:2018年(出典:図表でみる教育OECDインディケーター2021年版より)

子育て、教育にかかわるお金の心配を減らす

 世界では、学費の無償化を段階的に進め、多くの先進諸国で学費は大学まで無償です。しかし日本では、子育て・教育にお金がかかりすぎることが、親にとって最大のストレスとなっています。思い切って予算を増やし、子育てにかかわるお金の心配を減らすべきです。

―――大学・専門学校の学費を半額にし、将来的には無償にします。入学金は廃止します。奨学金は欧米のように返済不要の給付制を中心にして拡充します。

―――「義務教育は無償」とうたった憲法26条を踏まえ、国の制度として、学校給食費や教材費など義務教育にかかる費用を無料にします。

―――0歳からの保育料の軽減、私立高校の無償化を拡充します。児童手当を、社会全体で子どもを支える原則から全員に支給し、拡充します。国の制度として18歳まで医療費の窓口負担を無料にします。

―――就学援助と児童扶養手当などの現金給付、手厚いサービス給付の双方を抜本的に改善し、子どもの貧困問題の解決をめざします。

学校、幼稚園、保育園など子どものための"人"をふやす

 子どもを育てるには、多くの専門家が必要です。しかし日本では、学校、保育園、児童相談所など、子どもにかかわるあらゆるところで、人が圧倒的に足りていません。

―――教員不足は社会問題になるほど深刻化しています。授業数に見合った教員の定数増をすすめます。30人以下の少人数学級を早期に実現します。

―――幼稚園、保育園、認定こども園、学童保育など子どもにかかわる施設の職員を、処遇改善と配置基準等の引き上げによって増やします。

―――児童相談所、児童養護施設などの体制を拡充します。

安心して子育てできる働き方を保障する

 「夫は帰りが遅く、家事も育児も私がワンオペ」、「仕事も子どもも大事にしたい。これはわがまま?」―日本では多くの親が、仕事と子育てとの両立に悩んでいます。背景には、「家のことは誰かに任せ、仕事に没頭できる」人を、働き方の標準にしてきたことがあります。

―――長時間労働をなくし、8時間働けば普通に暮らせるように賃上げをし、仕事と家族ケアを両立できる働き方のルールをつくります。

―――男性の育休取得を増やすために、当面、3か月は所得補償を100%にします。

―――子育て期の労働者の時間外労働の免除、短時間勤務制度は、ただちに小学校入学前まで延長し、さらに拡充をめざします。

子どもの権利を守る国に

 子どもは未成熟で発達途上にあり、人権侵害を受けやすい存在です。しかも、参政権を持たず、自分の意見を反映させることが困難です。

 日本では法律上も、社会全体の認識上も、子どもが権利行使の主体としてほとんど認められていません。子どもの権利を実現するための独立救済機関の設置を、国連子どもの権利委員会から勧告されています。

―――国や地方自治体の施策、学校の運営などにおいて、子どもの意見表明権を保障する制度をつくります。

―――政府から独立した子どもの権利救済機関(子どもコミッショナー)を設立します。

―――子どもの権利条約の子どもとおとなへの普及を本格的にすすめます。

―――病気や障害、外国籍、LGBTQ(性的マイノリティ)など、多様な背景をもつ子どもたちに目配りし、ジェンダー平等の視点と多様性の尊重を、乳幼児期からあらゆる年齢に貫きます。

―――年齢・発達に即した、科学的な「包括的性教育」を公教育に導入します。

―――過度な競争主義、管理主義の教育をあらためるなど、国連子どもの権利委員会からの勧告を受けとめ、改善をはかります。

*それぞれの柱の細目は、こちらをご覧ください。

 ・子育て、教育にかかわるお金の心配を減らす

 ・子どものための"人"をふやす

 ・子育てと両立できる働き方へ

 ・子どもの権利を守る国に

子育て、教育にかかわるお金の心配を減らす

・幼児教育・保育の無償化

 現在の無償化は、対象が3~5歳、住民税非課税世帯の0~2歳児に限られています。保育所では、3歳以上の給食費が実費徴収です。

―――すべての幼児教育・保育の無償化をすすめます。

・小学校~大学までの教育費負担軽減

―――学校給食費など義務教育に残されている教育費負担をなくします。

―――就学援助を拡充します。

―――高校の無償化拡大、入学金、施設整備費等も無償にします。

―――大学・短大・専門学校授業料をすみやかに半分に値下げし、段階的に無償化をはかります。入学金は廃止します。

―――給付奨学金を拡充し、すべての奨学金を無利子にします。

詳しくはこちらをご覧ください➡56、教育  17、若者/青年・学生

子どもの医療費無料化を国の制度に

 子どもの医療費助成は、国の制度はありません。すべての市区町村が助成していまが、年齢、所得制限など、助成の内容は都道府県・市区町村で異なります。医師不足による小児科病棟の休止、病院の閉院、救急医療施設の減少は、地方でも都市でも深刻です。出産できる病院・診療所も激減したままです。

―――国の制度として18歳まで医療費の窓口負担を無料にします。

―――国が行っている、子ども(小学生以上)の窓口無料化を行う市町村にたいする予算カットのペナルティを廃止します。

―――歯科矯正、眼鏡などの保険適用外の治療についても、必要な医療行為として無償化を目指します。

―――小児科・救急医療体制の確立をすすめます。公的病院の産科、小児科切り捨てをやめ、産科・小児科・救急医療などを確保する公的支援を抜本的に強化し、早期復活と拡充をはかります。

―――地域の医療体制をまもる自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。

―――産科・小児科・救急医療の充実などにかかわる診療報酬を抜本的に増額し、安心して医療を受けられる小児救急医療体制の確立をすすめます。

児童手当、子育て世代向けの家賃補助、出産一時金などの拡充をすすめる

―――2022年10月から児童手当の所得制限が拡大されます。世帯で最も所得が高い「主たる生計者」の年収が基準となり、片働きで年収960万円以上の世帯が対象から外れます。さらに世帯年収の合算も引き続き狙われています。所得制限はすべて廃止し、現在中学卒業までの支給期間を18歳までに延長し、支給額の拡充もすすめます。

―――子育て世代向けの公共住宅の建設や「借り上げ」公営住宅制度、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの支援を特別につよめます。

―――妊娠・出産にかかる経済的負担の軽減をはかります。出産一時金の金額を大幅に引き上げます。

児童扶養手当の拡充など、ひとり親家庭への支援をつよめる

 ひとり親世帯は142万世帯にのぼっています。先の内閣府の子どもの貧困調査で現在の暮らしについて「苦しい」「大変苦しい」と合わせたひとり親世帯は51.8%、母子世帯の割合は53.3%にのぼります。「食料が買えなかった経験」があったとする割合は、ひとり親世帯は30.3%、母子世帯では32.1%です。物価高が押し寄せ、さらに暮らしを圧迫する事態が起きており、困窮世帯への支援の拡充が必要です。

―――児童扶養手当の所得制限を緩和し第1子から拡充します。第2子、第3子以降への加算額についても大幅に引き上げます。

―――年3回だった支払回数が6回になりましたが、毎月支給へさらに改善をすすめます。

―――現行18歳までの支給を20歳未満に拡充します

子どものための "人"をふやす―――教育・福祉の充実を

・子どもにかかわる施設に人員・予算増でゆとりを

 子どもを保育し見守る大人の目と手を増やし、どの施設も子どもたちが安心して過ごせる環境を整備します。

―――幼稚園・保育所・認定こども園・学童保育など子どもに関わる施設の職員を、処遇改善と合わせて、配置基準等を引き上げ増やします。人を増やし、職員一人当たりの業務の軽減をはかります。

―――子どもにかかわる施設での感染対策をそれぞれの施設任せにせず、感染対策の業務を担う人を増やせる予算をつけ、自治体や国の責任で行います。

―――感染症対策の観点からも、直ちに保育所の最低基準の見直し、幼稚園のクラス規模の見直しに踏み出します。学童保育は、40人の適正規模への分割、大規模施設の解消をすすめます。

―――小学校・中学校はすべての学年で早期に30人以下の少人数学級を実現します。

―――保育や教育をもうけの道具にさせず、公的責任で安心・安全の保育所・学童保育を増やします。

―――定員が割れても職員を減らさず運営ができるようにし、ゆとりある幼稚園・保育環境をつくります。

詳しくはこちらをご覧ください➡20、保育  84、学童保育  56、教育

・子育ての不安を解消する相談支援体制の強化

―――初めての出産による不安や、失業、生活苦など、さまざまな問題を抱えた家族に対し、産前・産後サポート事業などきめ細かな相談体制、個別の訪問活動などの支援を拡充します。

―――保育所への入所や一時保育、子育て支援事業など、子育て不安を軽減する取り組みを、病院や自治体の関係機関の連携をつよめ、地域全体ですすめます。

―――専門職員の配置・増員と予算確保を国の責任で行います。

―――児童虐待や子育ての困難の背景には、若い世代の雇用破壊と貧困の広がりがあります。安心して子育てできるように、正規雇用化と時給1,500円への最低賃金の引き上げ、長時間労働の改善、教育費の負担軽減、福祉・社会保障の充実、子育てへの経済的支援など総合的な施策をつよめます。

―――離婚した父や母などと子の面会交流、養育費の分担のとりきめについては、2011年の民法改正で、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と努力義務としてもりこまれています。共同親権については、子どもの権利・利益を尊重し「親権」そのものを見直す民法改正をめざします。

 詳しくはこちらをご覧ください。

➡【見解】「離婚後共同親権」の拙速導入ではなく、「親権」そのものを見直す民法改正を

子育てと両立できる働き方へ

 異常な長時間労働は、働く者の健康と、子どもを持つ労働者が子どもと向き合う時間を奪っています。第1子の妊娠・出産で女性労働者の半数以上が仕事をやめ、子育て世代の30代の男性6人に1人が週60時間以上働いています。非正規雇用が増加し、人間を使い捨てにするような働かせ方がまん延するなか、若い世代の平均年収は急速に低下しています。

―――長時間労働をなくし、8時間働けば普通に暮らせるように賃上げをし、仕事と家族ケアを両立できる働き方のルールをつくります。

―――男性の育休取得を増やすために、当面、3カ月は所得保障を100%にします。

―――子育て期の労働者の時間外労働の免除、短時間勤務制度は、ただちに小学校入学前まで延長し、さらに拡充をめざします。

詳しくはこちらをご覧ください➡7、女性とジェンダー

子どもの権利を守る国に

 子どもの権利条約は、①生命、生存及び発達に関する権利、②子どもの最善の利益、③子どもの意見の表明、尊重、④差別の禁止の4原則を掲げ、国連で1989年に採択されました。現在、国連加盟国数を上回る196の国と地域で締約され、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。

 日本が子どもの権利条約を批准してから28年がたちますが、その精神を生かした施策や普及がすすんでいません。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが今年3月に教職員向けに行った調査では、3割の教員が子どもの権利条約の内容について「知らない」と回答しています。2019年の同団体の調査では、「内容まで知っている」と回答した子どもは8.9%、大人は2.2%しかおらず、「聞いたことがない」と回答した人は子どもが31.5%、大人が42.9%でした。また、普段の生活の中で子どもの権利が「尊重されている」と回答した子どもは18.7%でした。

・子どもの意見表明権を保障する制度をつくる

 日本では、子どもが意見表明する機会が、学校教育や行政機関など子どもにかかわる政策分野でも保障されていません。安心して意見を述べられるよう、周囲のおとながそれを受け止める条件・環境を整備することも重要です。

・独立した権利救済機関(子どもコミッショナー)を設置する

 政府から独立した立場で政府を監視・評価し、個別事案の相談・救済にあたる機関は、子どもの権利を保障するために不可欠です。すでに70か国以上で、子ども施策を担当する省庁とは別に設置されており、国連子どもの権利委員会も日本に設置を勧告しています。

・子どもの権利条約の子どもとおとなへの普及を本格的にすすめる

 学校教育の中で、子ども自身が子どもの権利条約について学習する機会をつくることはもちろん、すべての教職員が研修等で、理解を深めるための取り組みを充実します。ガイドブックを作成・普及し、保護者はもちろん子ども施策に関わる大人たちにも学ぶ機会を促進し、社会全体への普及に取り組みます。

・多様な背景をもつ子どもたちに目配りをする

 病気や障害、外国籍、LGBTQ(性的マイノリティ)など、社会的支援を必要とする子どもたちの人権が守られていない状況が多々あります。どのような立場であっても、一人ひとりの子どもたちの人権が保障されるよう、あらゆる努力をはかります。人権や個人の尊厳が本当に大切にされる社会の土台を築くため、国際水準の性教育の公教育への導入に向けて取り組みます。

・子どもを性虐待・性的搾取からまもる

 18歳未満の子どもを被写体とする児童ポルノは、子どもの人権を侵害する性虐待・性的搾取であり、断じて容認できません。児童ポルノ事犯の被害児童数は、2016年以降、毎年1,000人を超えています(警察庁調べ)。児童ポルノの製造・提供・公開などについて、現行法に基づく厳正な対応が求められます。児童ポルノ禁止法における児童ポルノの定義を「児童性虐待・性的搾取記録物」と改め、重大な人権侵害からあらゆる子どもをまもることを立法趣旨として明確にし、実効性を高めることを求めます。

・児童虐待をなくす施策をすすめる

 昨年児相が対応した虐待相談件数は20万5,029件(5.8%増)と、集計を始めてから30年連続で最多を更新しました。児童相談所がその役割を発揮できるよう、専門職員の養成と相談員の増員、相談所の増設など抜本的に拡充します。

―――被害を受けた子どもの心身の回復にあたる社会的養護の環境を改善・拡充します。

―――民法の懲戒権を廃止し、体罰をなくします。

―――親の更生や学びを支援するとともに、虐待の根本にある貧困と社会的孤立の解消に力を入れます。

・国連子どもの権利委員会からの勧告を受けとめ改善をはかる

 不登校やいじめ、小中高生の自殺が増えています。子どもたちの深刻な状況は、子どもを取り巻く社会環境の悪化にあります。国連子どもの権利委員会は、1998年の最初の日本への勧告で、過度に競争的な教育システムが子どもの身体的及び精神的健康に悪影響を与えていると厳しく指摘し、適切な処置をとるように強く勧告しました。しかし、現在は全国学力テストまで行われ、点数での序列化がはかられるなど、学校現場にはますます過度な競争主義がもちこまれています。子どもの権利委員会から勧告されている事項の改善を進め、子どもたちが子どもの権利条約の精神に則った社会的環境をつくるよう努めます

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