2025年参議院選挙各分野政策
73、秘密保護法廃止
国民の目・耳・口をふさぎ、「海外で戦争する国」へと道を開く希代の悪法――秘密保護法・経済秘密保護法の廃止を求めます
2025年7月
秘密保護法(特定秘密保護法)は、2013年12月6日、広範な国民の反対の声を押し切り、安倍政権(当時)と自民・公明両党が強行成立させました。
秘密保護法のねらいは、防衛・外交をはじめ国政の重要問題で国民の目・耳・口をふさぎ、集団的自衛権の行使容認ともあわせて、日本を「海外で戦争する国」につくりかえることにあります。
さらに、2024年5月、経済分野、民間企業にまで秘密保護法を拡大させ、「セキュリティ・クリアランス(適正評価)」制度を民間の労働者、技術者、研究者などにまで拡大させる経済秘密保護法(重要経済安保情報保護活用法)を、自民、公明、立憲、維新、国民などの賛成で可決成立させました。
秘密保護法の廃止を求める世論と運動はいまも大きく広がっています。日本共産党は、この間、国会に「秘密保護法廃止法案」を他党や無所属議員との共同で提出してきました。ひきつづき、国会内外での共同のたたかいを強め、この希代の悪法を廃止するため力を尽くします。
民主主義の根幹である国民の知る権利、言論・表現の自由を脅かし、日本国憲法の基本原理を根底からくつがえすものです
「秘密の範囲」は政府が勝手に決め、国民には何が秘密かも秘密
秘密保護法は、①防衛、②外交、③特定有害活動(スパイ行為)の防止、④テロリズムの防止、に関わる行政情報で、政府が”安全保障に支障がある”と判断したものを「特定秘密」に指定し、それを漏らしたり知ろうとしたりした者に対して、公務員・民間人を問わず最高で懲役10年と1,000万円の罰金という重罰を科すものです。
特定秘密の範囲はあいまいです。特定秘密を指定するのは「行政機関の長」です。首相や外相、防衛相、警察庁長官らの勝手な判断で、秘密の範囲はいくらでも広げることができます。秘密にしておく期間も、政府の判断でいくらでも延長でき、原則60年、場合によってはさらに長く、永久に秘密にされる恐れもあります。
政府が2024年6月に公表した報告書(「特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施の状況に関する報告」)によれば、2014年末時点の特定秘密の指定件数は382件、保有文書数は18万9,000件でしたが、2023年末時点では指定件数751件、保有文書数約68万件と、「秘密」が大きく拡大し続けています。
重大なことは、指定された特定秘密の数字は明らかにされても、”何が秘密か”ということについて、国民には秘密にされていることです。自分が接した情報が特定秘密かどうかもわからないまま、いきなり処罰されることが起こりえます。政府は「原発やTPPは秘密保護法の対象ではない」といいますが、法文上それらが除外される保証はありません。原発事故での資料隠しのように、政府に都合の悪い情報を秘密にされる危険が大です。
国民の思想・良心の自由、プライバシー権を踏みにじる
特定秘密の漏えいは、故意でなく過失であっても処罰の対象です。特定秘密を取り扱うことになる公務員や、国との取引関係がある民間業者に対しては、「適性評価」と称して、犯罪歴や病歴、借金、思想信条をふくむ網羅的な身上調査が行われ、調査対象は家族や友人にも及びます。2023年の特定秘密「適正評価」実施件数は2万4,569件、2023年末で秘密を扱う資格を持つ人は13万704人(うち公務員が約97%、民間が約3%)となっています。
機微な個人情報を根こそぎ調べ上げる「適正評価」によって、多くの国民がプライバシーを侵害され、思想信条を理由とした差別的取扱いという重大な人権侵害の危険にさらされます。
国民の知る権利、報道の自由を奪う
ジャーナリストの取材活動や一般市民による情報公開請求などが、特定秘密を知ろうとしたとして処罰される恐れもあります。「共謀、教唆、煽動」も処罰するとしており、処罰の対象は市民のあらゆる行為に及び、家族・友人などにも広がる危険があります。
批判の世論に押され、条文には報道や取材の自由に「配慮」することが盛り込まれましたが、何の歯止めにもなりません。この法律の存在そのものが、報道・取材を委縮させ、言論・表現の自由、国民の知る権利に対して致命的な打撃を与えることは明らかです。
特定秘密というだけで国会の立法権や国政調査権をも制限
特定秘密に対しては、国権の最高機関である国会の調査権も制限されます。秘密保護法は、秘密を国会に提供する場合には非公開の「秘密会」を要求し、秘密会で知った秘密を漏えいした場合には国会議員でも懲役5年の処罰を受けます。これでは、外交・防衛という重要問題で、国民の代表として政府を監視しチェックすることは不可能になります。国会の立法権、国政調査権を侵害し、国民主権の原理にも反するものです。
日本の国会には開示を制限する一方、アメリカなど同等の秘密保全体制をとる外国政府に対しては、外務省や防衛省の判断で特定秘密を提供できる仕組みとなっています。国民には隠しながら、日米で情報を統制・操作しようとするものです。
2017年、米国インターネットメディアが公表した米国家安全保障局(NSA)の機密文書(スノーデンファイル)には、NSAが日本政府の動向を盗聴していたことや、米軍横田基地内に「監視用アンテナ」を製造するための施設を日本政府が提供したことも記されています。防衛省はこの事実を同年5月の衆議院決算行政監視委員会で認めています。
2017年6月には、内心の自由を監視・処罰する憲法違反の共謀罪が強行されましたが、特定秘密保護法、共謀罪がセットで運用されることになれば、文字通り国民の目、耳、口を塞いだうえに、その市民一人ひとりの動向、思想を政府権力が監視できるようになってしまいます。
➡各分野の政策「74、共謀罪廃止・盗聴法拡大・刑訴法『改正』問題」をごらんください。
「海外で戦争する国」につくりかえるため、国家が強権的に情報を統制し、国民の言論・表現を規制するのがねらいです
アメリカと軍事情報を共有し、日米軍事一体化を進めるためのもの
安倍政権は、秘密保護法と一体で国家安全保障会議(日本版NSC)設置法を成立させ、2014年7月には集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、さらに2015年9月に憲法違反が明白な安保関連法制(戦争法)を多くの国民の反対を押し切って成立させました。
日本版NSCは、内閣総理大臣を中心に外交・安全保障政策の「司令塔」として機動的に活動し、各省庁の情報を集中させ、アメリカと軍事戦略・情報を共有する受け皿です。秘密保護法の制定は、日米で国家戦略や軍事情報を共有し、また情報を管理・統制して軍需企業が国際的な武器の共同開発・生産に本格的に参画するための不可欠の課題として、アメリカから要求されていたものです。
秘密保護法強行を突破口にして、集団的自衛権の行使容認・安保関連法制(戦争法)とあわせて、日本をアメリカと一緒に「海外で戦争する国」につくりかえる策動が進められています。
日米軍事同盟の「密約」や実態を明らかにすることも処罰の対象に
歴代政府は、日米の「核兵器持ち込み密約」を否定しつづけてきました。日本共産党が国会で明らかにした決定的な外交文書「討論記録」の存在を、2010年になってようやく認めましたが、核持ち込みの「明確な合意はない」といって密約だったことは否定したままです。さらに、米軍に事実上「行動の自由」を容認している日米地位協定に関わる密約や、裁判権・指揮権をめぐる密約はいまだに隠されたままです。日米合同委員会合意の実質的内容も国民に秘密にされています。これらの密約の公表を求めること、基地の実態や予算の使い道を追及し公開を迫ることなども、秘密保護法によって処罰の対象になりかねません。
国会「情報監視審査会」――国会を政府の秘密保全体制に組み込む
自民・公明両党は、2014年6月、特定秘密保護法の規定に基づき、国会法を改悪し、衆参両院に「情報監視審査会」の設置を強行しました。同審査会は、政府の特定秘密保護法の「運用をチェックする機関」という建前ですが、その内容は、①国会において特定秘密の提出を受ける際の手続その他、国会における「特定秘密の保護措置」を定め、②秘密を知った国会議員が院外で漏らせば刑罰に処せられ、委員会の質問でとりあげれば懲罰の対象とし除名処分までとれるようにするものです。この改悪に対して、日本共産党は、秘密保護法の規定に従って、国会の委員会や国会議員が秘密を漏らさない厳格な仕組みをつくり、国会を政府の秘密保全体制に組み込むものであり、憲法が保障する国会の国政調査権を制約し、国会議員の発言・質問の自由を奪うものだとして断固反対しました。25年5月には、経済秘密保護法に基づく秘密まで情報監視審査会の対象とし、国政調査権の制約を拡大する国会法改悪が行われました。
衆参両院に設置された情報監視審査会は、2015年の活動開始以降、政府側は「お答えは差し控える」などと自分たちの都合の悪い情報の説明拒否を繰り返すのに対し、「改善勧告」の行使すら行っていません。国会の情報監視審査会がその建前である政府の秘密保全体制の「監視機関」「チェック体制」という役割を果たし得ないことは明らかです。
国会は、主権者国民を代表する唯一の立法機関であり、国権の最高機関です。憲法は国会に国政調査権を保障し、公開原則、議員の発言権保障を明記しています。国会の第一の任務は、政府を監視することであり、国政調査権を行使し、日米安保の秘密をはじめ政治・行政の実態を国民に明らかにすることが求められています。秘密保護法を前提にし、政府・行政の行為を国会の上に置いたのでは、国会はその憲法上の役割をはたすことはできません。
民間企業にまで秘密保護法を拡大させ「セキュリティ・クリアランス(適正評価)」を導入する経済秘密保護法
「秘密」の対象を経済分野にまで広げる
経済秘密保護法の骨格は秘密保護法と同様です。経済秘密保護法の「秘密」は、いわゆる「重要インフラ」と「サプライチェーン」としており、国会審議で、政府は、電気・ガス・水道・通信・運送・放送等の分野が含まれると答え、医療分野も対象となりうると認めています。これらに関する「保護するための措置」「革新的な技術」などの情報で、政府が”安全保障に支障がある”と判断したものを「重要経済安保情報」に指定し、漏えいや取得の罰則は最大5年の拘禁刑としています。
経済秘密保護法の重大な問題点は、政府が秘密に指定できる情報の範囲や適性評価の内容など、法律の重要な点について、法律では枠組みだけ示し、肝心な内容は運用基準に委ね、政府に白紙委任していることです。
さらに、政府は、経済秘密保護法によって経済分野まで拡大される秘密の範囲に合わせて、秘密保護法を改正することなく、法の運用によって、4分野に限定されていた特定秘密の範囲を拡大しようとしています。国民の大反対を押し切って強行した憲法違反の秘密保護法を、運用で拡大するなど、断じて認められません。
対象者が大きく拡大する「適正評価」
こうした経済分野への「秘密」の拡大により、これまで公務員が中心だった「秘密」を扱う人は、民間の労働者・技術者・研究者に大きく拡大することになります。すでに2025年5月から運用が開始されています。
これらの人には、「適性評価(セキュリティ・クリアランス)」=身辺調査が行われます。調査の具体的な内容は、秘密保護法と同様に、機微な個人情報を根こそぎ調べ上げるものです。25年1月に閣議決定された運用基準では、政治的思想、海外渡航歴、精神疾患などの治療歴、借金や家賃の滞納、家族や同居人の過去の国籍まで及びます。事情に変更があった際には、報告させる誓約まで迫るものとなっています
さらに、本人だけでなく上司からも調査票を提出させ、警察・公安調査庁や医療機関などにも、本人への通知なく照会をかけます。適性評価後も、事業者に、対象者を継続的に監視させる二重三重の監視体制となっています。政府は、本人の同意が前提としていますが、労働者が調査を拒否しても不利益を被らないという保証はなく、事実上の強制です。
適性評価の調査で内閣府が得た情報が、警察などと共有される危険性もあります。政府が経済安保の名の下ででっちあげた大川原化工機事件のような冤罪事件を引き起こすのは明白です。
経済秘密保護法のねらいも、米国など同盟国・同四国との兵器共同開発の推進
今回成立した経済秘密保護法が、米国などの同盟国・同志国と、兵器の共同開発を推進するためであることは明らかです。
米国が初めて策定した「国家防衛産業戦略」は、「同盟国・同志国の強固な防衛産業は、米国国防総省の統合抑止の礎石であり続ける」として、多国間連携による兵器の共同開発・共同生産や、維持・整備網の構築を掲げています。自民党政権は、日英伊の次期戦闘機「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」、日米の極超音速兵器を迎撃する「滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)」、さらに米英豪の「AUKUS」との「極超音速兵器」や「無人機に適用するAI技術」などの共同開発を進めようとしています。
そのため、経済秘密保護法は、米国などの同盟国・同志国に合わせて、秘密保護法の対象外であるコンフィデンシャル級(秘密の度合いが高い順に、トップシークレット、シークレット、コンフィデンシャル)の情報まで秘密保全法制に組み込むものとしています。先端分野を含むデュアル・ユース技術(軍事転用可能な民生技術)を秘密の対象としており、幅広い先端技術の研究開発が秘密保全体制に組み込まれる危険性があります。秘密指定されれば、異なる分野の研究者同士の自由な意見交流や研究成果の公表ができなくなります。公的機関の研究開発費や大学の運営費交付金が減らされる一方で、政府が配分先を決める競争的資金が増加しているもとで、研究者は、予算確保のために政府への協力を迫られることになりかねません。自由で公開が原則の研究が大きく損なわれ、学問の自由が侵害されることは明らかです。
また、日本の財界も、「国防省関係のビジネスで、さらなる業務獲得・円滑化のためには、クリアランスが必要」と推進しています。
米国などの同盟国・同志国と財界の要求に応えて、兵器の共同開発・輸出を進め、日本を死の商人国家にしようという企みを、断じて許すわけにはいきません。憲法の平和主義を投げ捨てる暴挙に、断固抗議します。
秘密保護法・経済秘密保護法の廃止こそが求められています。
➡各分野の政策「34、経済安全保障」もごらんください。