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2025参議院選挙 各分野の政策

34、経済安全保障

アメリカに追随し、国民の権利を奪う経済安保法・経済秘密保護法を廃止します

2025年6月

 自公政権は中国による「経済面の脅威」から日本を守るという名目を立て、アメリカの進める経済安全保障=「経済を使った戦争」につき従ってきました。この動きを再選したトランプ氏がさらに進めようとしています。

「経済安保は経済を使った戦争」アメリカにつき従う自公政権

 2018年3月、第一次トランプ政権は、中国に対する制裁関税を発動し、貿易戦争をしかけました。中国を抑え込み、経済分野でのアメリカ優位の維持を目的にした経済戦略が、経済安全保障です。

 関税の引き上げや輸入制限など、経済分野でも激しさを増す米中の対立を、経済安全保障の専門家は「『経済が武器』となり、『経済を使った戦争』になった」といいます。

 その戦略に日本は組み込まれていきます。

 2021年に誕生したバイデン政権も、中国を「経済力、外交力、軍事力、技術力を組み合わせ、安定的で開かれた国際システムに持続的に挑戦することができる唯一の競争相手」と定義し、トランプ氏の対中政策を引き継ぎます。

 特に、「技術が米中競争の中核」と認識するバイデン大統領は、中国の軍事力増強などにつながることを懸念して、中国のスーパーコンピューター関連企業・機関を輸出規制リストに加え、これらの企業と米国企業との取引を制限しました。さらに、人民解放軍の兵器開発などに協力したり人権弾圧を助長する監視技術を開発する中国企業への投資を禁じる大統領令を発しました(2021年6月)。

経済安保法と経済秘密保護法を相次ぎ制定

 そんなバイデン大統領の経済安全保障政策に追随して、自公政権は2022年5月、経済安保法(経済安全保障推進法)を成立させます。

 同法に基づいて2022年9月30日には、経済安保法の「基本方針」と「基本指針」を閣議決定しました。

 この「基本指針」にもとづき国は、「特定重要物資」を指定しました。この「特定重要物資」に関連する事業者は、国による調査の対象となる可能性があり、報告や資料の提出を求められた際の努力義務が課せられます。

 さらに自公政権は、2024年5月、「秘密の範囲」を経済分野にまで拡大する経済秘密保護法(重要経済安保情報保護・活用法)を成立させました。

日米軍事同盟を強化し企業や個人に不利益をもたらす経済安保法

 2022年に成立した経済安保法の主な問題点は次のとおりです。

日米一体の軍事力強化

 秘密特許もふくめ、経済安保法は、日米一体となった軍事力強化の枠組みです。

 2022年7月には、閣僚レベルで経済安全保障にかかわる、経済版2プラス2を開催しましたが、その狙いは、米国との間で兵器の国際共同研究・共同開発・共同生産を推し進めることでした。当時の小林経済安保担当相は、「これまで片務的なものだったのが双務的になる」とあけすけに日米同盟強化を語っています。

罰則などの規制によって日本企業の競争力が阻害される

 まず、企業への監視です。

 基幹インフラを担う企業が重要な設備を導入する際に、届け出を行い、国が事前に審査をする規定です。インフラがサイバー攻撃を受けるのを防ぐのが目的ですが、対象となる企業は、政府が決め、企業側に拒否する権利はありません。

 虚偽の報告をしたり、届け出を怠ったりした場合は罰則が科されます。国が特定の製品の排除を命令することもできます。

 この経済安保法の規定には、「重い罰則が科せられ、自由な経済活動への介入にあたる」との不満が強まっています。

 アメリカ・中国の両国と取引のある企業からは「規制によって競争力をそがれるのでは」といった懸念や、「国の関与が深まることで、企業の技術革新が阻害されることが心配」といった声もあがっています。医薬品業界では「海外の調達先から国に情報を提供されたくないとして、取引を打ち切られ、競争条件が悪化する可能性がある」との懸念が出されています。企業の負担が増すのは間違いありません。

政府の権限拡大・政財官癒着の危険性

 次は政府の権限拡大・政財官癒着の危険性です。

 具体的な施策は政省令にゆだねられ、中央省庁の権限が拡大していく危険性が極めて高くなっています。

 政府は特定重要物資を指定しますが、その具体的な中身については「必要不可欠」、「外部に過度に依存」、「おそれ」などの抽象的な表現となっています。また物理的な有形物だけでなく、「プログラムも含む」とされています。

 もし、特定重要物資を指定することに政治家が介入すれば、新たな政財官の癒着構造が作られかねません。

研究の自由と活力をそぎ、科学技術の発展を損なう

 研究開発では国際交流によって量も質も前進する面があり、先端技術の官民研究で課せられる守秘義務などで機密性を高めれば、失うものも少なくありません。

 縛りを強めて、研究者の主体性を損ねれば、研究の自由を侵害し、忖度が広がり、研究の活力がそがれ、発展の妨げになってしまいます。もちろん、研究者が経済安全保障の名のもとに動員されるようなことがあってはなりません。

学術や技術開発にゆがみをもたらす秘密特許

 秘密特許も重大です。

 特許は公開が原則の日本でも、秘密特許として扱い、自衛隊の装備品や武器生産の技術援助を受けています。

 専門家からは「恣意的で不透明な特許の非公開制度の存在は、学術や技術の体系全体にゆがみをもたらし、本来のイノベーションを妨げる」との声が上がっています。

個人情報保護などが不十分

 さらに問題なのは、個人情報保護などが不十分な点です。

 個人情報の取り扱いの規定がなく、個人情報が了解なしに海外で閲覧されることも可能で、

 プライバシーや個人情報が危険にさらされてしまいます。

 また、経済安全保障を大義名分として、権力による監視・支配が、正当化される危険性も懸念されます。このおそれや懸念が後述のように、経済秘密保護法で現実のものになりました。

秘密保護法の経済分野への拡大=経済秘密保護法

 経済安保法に続き、自公政権は2024年5月、多くの国民の声を無視して経済分野に広げる経済秘密保護法を成立させました。

 この法律を一言でいえば、秘密保護法の経済分野への拡大です。

 民間人まで広く身辺調査の範囲を拡大し、秘密情報の漏えいには最長5年の拘禁刑か500万円の罰金またはその両方を科すもので、国民の知る権利やプライバシーの侵害の恐れがあります。

重大な問題をもつ身辺調査=セキュリティークリアランス

 経済秘密保護法の最大の問題は、情報の取り扱いを有資格者に限定する「セキュリティークリアランス(適性評価)」制度です。先月(2025年5月)からその運用が開始されました。

 セキュリティークリアランス制度は、国が保有する経済安保情報の取り扱いを有資格者に限定し、有資格者には厳格な適性評価を受けさせたうえで、情報へのアクセス権を持ませます。

 この身辺調査の対象や内容は極めて重大です。

 経済秘密保護法によってセキュリティークリアランスの対象が、電力、通信、鉄道、金融、といった企業のほか、半導体などの重要物資、AIなどの先端技術に携わる民間の事業者とその従業員、大学・研究機関の研究者・技術者を含む民間人に一挙に拡大されます。

 調査の内容は犯罪歴や薬物の使用歴、精神疾患の有無、飲酒の節度、借金の有無を含む信用情報など、極めてセンシティブな個人情報までくまなく調べられます。

 さらに、秘密保護法同様、親・子供・兄弟姉妹・配偶者、同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所も調査されます。これらの家族や同居人に対しても適正評価が課せられる可能性もあります。

個人情報の流用・漏えいの危険

 収集したセンシティブな個人情報が駄々洩れして、プライバシーが侵害される恐れもあります。集めた個人情報の利用や提供の歯止めはまったく不十分で、「重要経済情報の保護」のためなら、自由に利用・提供されてしまいます。収集された数十、百万の個人情報が新設される部局で一元的に管理されることになり、それがプロファイリングされれば、プライバシー権の重大な侵害になります。

 また、収集した個人情報がいつまで保管されるのかも定めがなく、削除のしくみもありません。仮に保全期間が30年、60年になれば、極めて長期に渡り個人情報が削除されず、忘れられる権利もないがしろにされます。

 プライバシーが心配で調査を望まない社員が不利益な扱いを受けないかといった懸念も指摘されています。

どんな情報が国家機密情報にあたるのか指定基準もあいまい

 これまで防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に限られた秘密保護法の対象が、インフラや先端技術、重要物資に関わる民間企業など幅広い経済分野に拡大されます。

 より機密性の高い情報は、秘密保護法の運用拡大で対応することになります。まさに、秘密保護法の経済分野への拡大です。

 アメリカでさえ、政府による運用を監査する情報監察局などの機関があります。一方、日本には秘密指定を規制したり、運用を監視するシステムはありません。恣意的な秘密指定や、指定の適正性を審査する国会の関与もありません。

冤罪は絶対に許せない

 2023年12月東京地裁で、違法な捜査で損害を受けたとして横浜の大川原工機の社長らが訴えた事件の判決がありました。判決は恣意的な操作で無実の人を長期間拘留した捜査機関の責任を厳しく指摘しました。1審に続き、2025年5月には東京高裁も捜査の違法性を認めました。

 この大川原化工機事件は、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を無許可で輸出したとして、大川原化工機株式会社の代表取締役らが逮捕・起訴された事件です。

 しかし、その後の裁判で、捜査や証拠が不適切であったことが明らかになり、冤罪が確認されました。逮捕されたうちの1人は、勾留された7カ月の間に体調を崩し、胃がんが原因で死去しています。

 経済安全保障が強調される中、警察庁は、2021年版の「警察白書」で、なんと、この大川原化工機事件を実際に立件した実例として、誇らしげに取り上げていました。全く許せません。

 大河原化工機の社長は「安保政策に便乗した冤罪」、「軍事機密と違う分野に法規制をひろげないでほしい」と訴えています。

 法定では事件は「捏造」という公安捜査員の証言も飛び出しました。自公政権はまず、大川原化工機冤罪事件の顛末について説明し、謝罪・責任者の厳正な処分から始めるべきです。

経済安保法と経済秘密保護法はきっぱり廃止

 アメリカの経済安全保障政策=「経済を使った戦争」に追随し、国民の知る権利とプライバシー権を奪う経済安保法と経済秘密保護法はきっぱり廃止すべきです。