2025年参議院選挙各分野政策
28、障害・難病・慢性疾病
自己責任の押し付けをやめさせ、権利としての福祉・医療の確立を
2025年6月
2014年に日本が批准した障害者権利条約は「障害のない市民との平等の実現」が根幹であり、支援をおこなう社会的責任が国や自治体にあることを宣言しています。
障害者・患者は雇用、福祉労働において低賃金におかれており、障害年金も低額です。障害者・患者の所得保障の拡充は切実な課題で、早急な対策が必要です。
障害者・患者やその家族は、扶養義務を定めた民法の下、家族に責任が押し付けられ、とりわけ母親に介護が集中してきました。家族介護を前提とした障害・介護・医療施策はもはや限界です。ケア労働の担い手不足や高齢化も深刻で、事業所も厳しい運営を迫られています。ケアに手厚い、社会保障・社会福祉を支える政治へ転換させ、その要となる福祉労働者の処遇改善をはかっていきます。
OECD各国のGDPに占める障害福祉予算の割合の平均は2%ですが、日本はわずか1%にとどまっています。障害福祉予算は突出しているとされても、この間障害者は1,160万人をこえています。一人ひとりにはまったく不十分な水準です。障害者権利条約や憲法にもとづいた障害福祉・医療の拡充のために社会保障予算を早急に引き上げて、公的責任を果たさせていきましょう。
2024年7月、最高裁大法廷は、旧優生保護法(1947年~96年)の立法目的について「立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても、正当とはいえない」として、憲法違反と断罪しました。優生思想にもとづく差別と偏見を根絶するため、日本共産党は全力をつくします。
➡旧優生保護法についての詳細は、各分野の政策「29、旧優生保護法」をごらんください。
希望がもてる社会保障・社会福祉の構築を
物価高騰からくらしを守り、国民の切実な願いに応える経済へ
事業所・施設の運営は、24年度報酬改定の影響で大打撃を受けています。続く物価高騰に苦しめられているにもかかわらず、自公政権は消費税減税に踏み出そうとしません。
――消費税の廃止をめざし、緊急に消費税を5%に減税します。
――施設や事業所へ水光熱費、食材費、ガソリン代などの支援をおこなうとともに、減収の補填をおこないます。
――減額となった障害のある人たちの工賃・賃金を補うための措置を講じます。
――障害基礎年金の額を引き上げるとともに、自公政権が導入してきた年金減額の仕組みを廃止して、物価高騰に見合う障害年金額になるようさらに引き上げます。
震災等緊急時の対応を確実に
東日本大震災や熊本地震、能登半島地震、異常気象による災害の対応などの教訓をふまえて、支援をすすめます。
――障害者や高齢者などを受け入れるための「福祉避難所」指定施設が災害時、いつでも力を発揮できるように支援を強めます。
――被災地や避難先で暮らす障害者・高齢者の制度やサービスの利用、移動支援、仮設住宅や復興住宅などのバリアフリー化をはじめとした住環境の整備などの支援を、緊急かつ継続的におこなえるようにします。
――被災による障害者事業所・施設の減収を補償するよう求めます。そのためにも、日割、時間割により矛盾が生じている報酬制度は月割に戻します。
――防災、復興の部局に障害当事者が参加できるようにします。自治体の防災や災害時の避難などの計画づくりを促進するよう支援を強めます。
――すべての難病・小児慢性特定疾病患者を要支援者として把握し、災害時への対応を備えるようにします。
――災害時においても難病・慢性疾病患者、障害児に対する日常医療がおこなえるよう対応を検討します。
新型コロナ対策を今後の感染症対策にいかす
――希望するすべての障害者、難病・慢性疾病患者、ケアワーカーに、公的責任によって定期的に無償で検査をおこない、ワクチン接種を優先的にすすめます。
――感染した障害者・患者の入院先を確保し、必要な医療を受けられる体制をつくります。
――さらなるコロナウィルスの実態解明や治療法の確立、ME/CFSなどのコロナ後遺症の診療・研究体制の確立、後遺症患者への社会保障の充実を求めます。
―――施設や事業所へ減収補填や、はたらく障害者への個別補償を国の責任でおこないます。パンデミック禍になっても「原則開所」で奮闘する福祉労働者に「特別手当」を支給します。
――自治体からの通知を点字や音声で知らせる、電話相談窓口を確保する、記者会見や緊急速報などの放送では手話通訳や字幕をつけるなど、障害者に情報をもれなく届けるようにします。
障害者権利条約にふさわしい障害者施策の実現を
障害者施策の話し合いに障害当事者の参加を位置づける
障害者権利条約批准国に義務付けられている日本の条約実施状況の報告が日本政府や市民団体から提出され、その審査結果が2022年に勧告(総括所見)されました。「総括所見は義務ではない」など政府関係者は発言していますが、総括所見にもとづいて、国内施策を是正し、権利条約の実現をはかります。
権利条約が制定される過程で「私たち抜きに私たちのことを決めないで」が世界の障害者の合言葉になりました。日本でも、さまざまな施策や意思決定などの場に障害当事者の参加を位置づけることで、すべての人がくらしやすい社会づくりにつながります。
――障害者にかかわる政策・計画の実施や監視に障害者やその家族の参加を位置づけます
――各種基幹統計で障害者やその世帯を位置づけて、データ収集をすすめます。
――内閣府・障害者政策委員会を障害者権利条約の監視機能をもつ機関にふさわしく、独自の予算、委員会が人事権をもつ政府から独立した事務局体制をもたせ、多様な障害のある委員での構成や、女性委員の割合を増やします。
――都道府県・区市町村が障害者権利条約にもとづいた施策の実施と監視をできるよう、国が予算を保障します。
――条約実施に向けての取り組みを、対象から除外されている国会と裁判所も含めておこないます。
障害者基本法の改正を
2011年の法改正からすでに14年が経過しており、障害者権利条約の水準にふさわしく見直すべきです。
――障害者権利条約の大事な柱の1つである「合理的配慮をおこなわないことは差別である」を明記します。
――「平等な社会参加のために『必要な支援を権利として保障する』」ことを規定し、「国と自治体の支援提供義務の明確化」などを反映させます。
障害者総合支援法を廃止し障害者総合福祉法へ
障害者自立支援法違憲訴訟団と国が結んだ「基本合意」(2010年1月)から15年がたちました。障害者自立支援法を廃止してそれにかわる障害者総合福祉法制を審議した総合福祉部会の「骨格提言(2011年8月)」を尊重すべきにもかかわらず、政府は障害者との約束を破り、自立支援法を廃止するどころか、一部の手直しで障害者総合支援法を成立させました。2022年に障害者総合支援法を他の法案と束ねて「改正」しましたが、「基本合意」や「骨格提言」とはほど遠い内容です。日本共産党は障害者権利条約、「基本合意」「骨格提言」にもとづいた障害者総合福祉法の制定を求めます。
――応益負担、所得制限をなくし、利用料は無料にします。障害者が非課税でも配偶者が課税の世帯は利用料が発生するため、収入認定の基準は障害児も含めて本人所得のみの収入認定とします。
――現在のサービス支給量抑制のためのしくみから、障害者参加で区分認定の制度内容を協議し、支援の必要量や本人の希望が保障されるしくみに転換します。
――支援が必要にもかかわらず福祉利用の対象からもれてしまう、または対象であるにもかかわらず適切な支援を受けることができない障害が多数あります。内部障害、発達障害、高次脳機能障害、難病・慢性疾患、眼球使用困難症候群、香害などの化学物質過敏症など、あらゆる障害者を、障害者基本法第2条1項の規定にもとづいて対象にします。
――事業所・施設は日額払いをやめ、月額払いにします。基本報酬を抜本的に引き上げて、加算で評価する報酬体系を改めます。
――通所施設における食事提供加算は継続し、恒久的な食費軽減策に見直します。
――地域生活支援事業の予算を義務的経費化し、必要なサービスの量と質を保障する抜本的な改正をめざします。
――相談支援をはじめすべての障害福祉サービスの抜本的な報酬の引き上げをはかり、障害のある人が安心した地域生活が送れるように改善します。
――同行援護の利用時間の地域間格差をなくし、視覚障害者に対応できるヘルパーの養成を拡充し、十分な支給量を保障します。
――65歳からの介護保険への強制移行により、オーダーメードされていた車椅子が体に合わないレンタル品を強要される、などの事態が起きています。補装具・日常生活用具は、障害者の自立生活や社会参加を広げるものとして、年齢に関係なく障害の個別性に応じた必要な給付を行い、実費負担をなくす等、制度の抜本的見直しを行います。
介護保険優先原則の廃止を
総合支援法第7条「介護保険の優先原則」は、介護保険と障害福祉を両方使う場合の「併給調整」であり、障害福祉の利用を禁じていません。厚労省から出されている「通知(直近は23年6月)」でも自治体に柔軟な対応を求めています。それにもかかわらず、自治体の指導で65歳になった途端に支援時間が減り、1割負担に苦しむ障害者が後をたちません。
――基本合意で約束したとおり、総合支援法第7条の介護保険優先原則はすみやかに廃止します。介護保険の対象年齢でも従来から受けていた支援を継続して受けられるようにして、障害者が障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるようにします。
福祉労働者の処遇改善と事業所・施設の運営の保障
コロナ禍で鮮明になった、ケアを支える福祉労働者の重要性に見合う処遇改善は、これからの社会を展望していくうえでも、不可欠です。全産業に比べて大幅に低い福祉労働者の抜本的な賃金引き上げや配置基準を見直します。
社会福祉事業の行き過ぎた規制緩和を是正し、非営利・公益性にもとづいた本来の障害者児の福祉を国の責任で支援します。
――日額払いから月額払いを基本とする報酬にして、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、基本報酬を大幅に引き上げます。
――処遇改善加算を本体報酬に組み込むとともに、緊急に公費による福祉労働者の処遇改善をおこないます。
――高い専門性に見合った手話通訳者、要約筆記者などの処遇改善をおこない、身分保障をおこないます。
――社会福祉法に課せられた無料・低額サービスを提供する「地域における公益的な取り組み」の責務を課すこと、地域住民の助け合いによる地域福祉課題の解消規定(理念規定)は、公的責任の縮小・後退につながるものです。これらの規定を撤廃します。
――人材確保に逆行する障害者施設職員の退職共済への公費助成を復活させます。
――施設職員などによる虐待を防ぐためにも、研修、学びの時間を確保できる運営を保障します。
――障害者相談支援事業や障害児療育支援事業を自治体から請け負った法人・事業者の委託料に消費税が上乗せされておらず、追徴課税されかねない問題が各地でおこっています。すみやかに公的負担で解決します。
また、課税事業として業務委託するのではなく、本来の社会福祉事業として非課税の対象にすべきです。
障害者虐待防止法の改正を
2023年度の虐待件数(2024年12月公表)は4,641件と、増加し続けています。2022年度から虐待防止のための福祉労働者への研修実施や、虐待防止のための責任者の設置、事業所(法人でも可)虐待防止委員会の設置が義務化されました。
――通報義務を学校にも広げます。
――市町村障害者虐待防止センターに専門知識を持つ職員の配置を促進し、緊急対応できる保護施設が確保できるよう、国の対策をすすめます。
――障害者虐待防止法附則に規定された「3年後の見直し」の時期をとうに過ぎており、法改正に向けた審議の開始を求めます。
障害者差別解消法の課題
2024年から民間事業者による合理的配慮が義務化されましたが、多くの課題が積み残されたままです。
――何が差別にあたるかの定義をおこない、法の対象を国会や裁判所にも広げます。
――救済や紛争解決のしくみを整備し、ワンストップの窓口を実現します。監視機関を設置します。
――地方自治体の差別解消支援地域協議会の相談窓口に法律の専門家や障害当事者などの人材を充てられるよう、予算措置などの国の支援を求めます。
――政府から独立した第三者による人権機関をつくり、人権侵害の訴えの調査・救済に動けるようにします。
――内閣府のホームページにある合理的配慮や差別の事例集を幅広く掲載し、何が差別にあたりどんな合理的配慮が求められているのか市民の理解を広げます。
障害のある女性の権利、ジェンダー平等、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の保障
障害者権利条約第6条では、障害のある女性の権利を規定しています。障害のある女性は障害と女性という複合差別、複合差別がからみあう交差的差別が強いられてきました。
女性自立支援施設の入所者のうち何らかの病気や障害のある女性が44.5%であり、そのうち28.9%が障害者手帳をもっています(2023年度)。女性や子ども全体の暴力被害の中で障害者・障害児がどの程度含まれているかの統計はなく、実態を把握して、救済措置をとるべきです。
――障害者基本法、障害者差別解消法、男女共同参画社会基本法などに障害のある女性への複合的・交差的な差別を禁止し、防止するための条文を設けます。
――希望しない異性介助は禁止します。
――病院や入所施設、家庭における性被害、DVなどの実態を把握し、救済措置を講じます。
――女性一般に対する通報・相談・支援の窓口および施設を、障害のある女性にもアクセスしやすくします。
――国や地方自治体の審議会や有識者会議の委員に障害のある女性の参画を位置づけます。
――障害のある女性の婦人科検診や受診、出産を受け入れる医療機関を拡充します。
――障害者への不妊手術や人工妊娠中絶の強要は根絶します。
限界となっている家族介護から脱却し障害児者のくらしの場の保障を
成年後見制度の見直し
家族介護が当然視されてきたもとには、民法の家族制度や扶養義務規定が大きく影響しています。
後見人となった親族や弁護士・司法書士などの専門職が預貯金を横領する犯罪はなくならず、被後見人が死亡するまで後見人を解除できないなどの制約のために、成年後見人制度の利用は大きく広がっていません。
障害者権利条約の総括所見では、成年後見人制度を廃止し、現在の医療モデルから社会/人権モデルに基づいた当事者の意思決定支援制度の整備を求めています。
――民法877条を改正し、明治以来変わらない家族制度や扶養義務規定を改正します。収入認定の基準を障害者本人のみにします。
――成年後見制度が意志決定支援制度を具体化した法に改正されるまでは、既存の社会福祉制度を充実させる中で、本人の意志にもとづいた生活を尊重できる体制を強化します。
――権利擁護センター(地域包括支援センターや社会福祉協議会などにおかれている住民の窓口相談)や、利用者の課題を把握し適切な後見人候補者を選んで家庭裁判所と連携する「中核機関」をすべての自治体に配置できるよう、国が予算措置や人員配置の支援をおこないます。
――家庭裁判所の後見監督体制の強化など、専門職の不正の防止・根絶に向けた取り組みをすすめます。
――状況の変化に応じて柔軟な交替や追加で後見人を選べるようにします。市民後見人の育成をはかります。
――後見利用の費用助成制度を拡充します。
選択できるくらしの場の基盤整備と現行制度の見直し
障害者福祉施策が長い間前提としてきた家族介護(特に母親)を脱却し、必要な支援を受けながら障害者が希望する場でくらせるよう、基盤整備をすすめます。
2024年度、3年間を目途にグループホームを出る「移行支援住居」が創設されました。厚労省は利用者の継続的利用の希望に反し「追い出」すことは加算の対象外としています。
――入所施設やグループホームなどの待機者が増え続けています。ショートステイをやむを得ずつなぎながら過ごす「ロングショート」問題も各地で起きています。多様な暮らしの場を公有地も活用し、公的責任で計画的に増やします。
――グループホームの日中・夜間の支援体制の拡充するために、基本報酬の大幅な引き上げを求めます。
――「追い出し」の強制はやめ、入居者の意志に寄り添うグループホーム運営を求めます。
――バリアフリー対応の公営住宅を確保・建設します。
――在宅支援のためにも、家族の休息を保障するためにも、ショートステイの増設や、「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を拡充します。
――ホームヘルプサービスや移動支援の拡充など、在宅支援を保障します。
――障害者・障害児世帯の孤立死や孤独死を防止し、日常生活における緊急時の支援システムを確立します。
障害児の福祉・保護者支援
障害児の療育や福祉は、児童福祉法のもとであっても障害者自立支援法施行以降、契約制度に移行されたままです。2024年に発足したこども家庭庁の管轄に障害児福祉や医療も移行しましたが、子ども・子育て施策が無償化・負担軽減に向かっているのにもかかわらず、障害児分野には重い負担が残されています。
――障害児施策の療育の契約、応益負担、事業所への報酬日額(出来高払い)制を改めます。
――障害児を育てるための特別な支援である特別児童扶養手当、障害児福祉手当、日常生活用具給付などを受けるさいの所得制限を撤廃します。
――補装具は障害児の生活を助けるものです。現行の購入費用1割負担をゼロにします。
――障害児通所支援は、保育所、幼稚園、認定子ども園等に通う障害のない子どもと等しく、十分な通園日数・時間・職員体制・環境が保障されることを原則とします。
障害の早期発見から療育へ
――乳幼児健診は、医療機関委託による個別健診まかせではなく、市町村等による集団健診をすすめます。保健師、小児科医、心理職などの専門職を配置し、どこで生まれても子育てに困難を抱える親子への支援が早期からできるよう、保健センターの母子保健機能を強化します。
――障害の診断がなくても身近な地域で療育を受けられるよう、市町村ごとにこども家庭センターと児童発達支援センターの連携ができるしくみと施設を整備します。また、これらの施設で子どもの発達を保障する療育をおこなえるように、専門性と職員の確保を行います。
――支援の中核的な役割が求められる児童発達支援センターが地域格差のなく整備されるよう、国に現状の実態調査と財政保障を求めます。
障害児通所支援
乳幼児期の児童発達支援事業や学齢期の放課後活動を実施する放課後等デイサービスは、営利企業の参入が相次ぎ、本来の目的とかけ離れた事業所が増えています。
――専門的力量をもった職員を配置して、子ども一人ひとりに十分な支援ができるよう、児童発達支援、放課後等デイサービスの職員配置基準を抜本的に改善するとともに、職員研修ができる条件を整えます。
――現行の日額報酬の下でも、基本報酬を引き上げます。
――18歳以後の、青年期の「余暇活動」「居場所」の支援を強めます。
保育所・幼稚園・認定こども園等での障害児保育
――障害がある場合も保育所、幼稚園、認定こども園に安心して通えるよう、職員配置のできる制度に改善します。
――障害児の就学に向けて、子どもや保護者の願い、子どもの実態に応じた選択ができるように、十分な就学相談を保障します。
障害児入所施設
障害児入所施設にいる子どもの約3割が被虐待児であり、強度行動障害やケアニーズの高い入所児が増えており、「子どもの最善の利益を優先」する観点から、職員の専門性を高め、個別支援と集団の中での発達を促す支援が求められています。
――比較的軽度の障害、重度の障害とさまざまで、児童数からだけで割り出される職員配置や設置基準では対応ができません。施設空間や生活集団の編成の困難を解決する職員配置にします。
――超過年齢の入所障害者の行き先を、その人の最善の利益となるよう決定します。
相談支援、保護者支援
――発達・障害・生活を総合的に支援するためのさまざまな相談に対応できるように、障害児相談支援事業所の専門性にふさわしい報酬へと引き上げます。
――子育てや保護者のレスパイトを保障するための、障害児のショートステイやホームヘルプに対応できる施設・事業所を増やします。
――障害児を育てる場合、就労の継続、休業補償、就業時間の調整等の配慮を十分行うよう、改正育児介護休業法を具体化するしくみを整備します。
―――親の就労を保障するためにも、自治体ごとに対応が異なる継続的な通園・通学の移動支援利用を国として認めるとともに、スクールバスやタクシー利用なども位置づけます。
発達障害者の支援
発達障害者支援法や障害者総合支援法にも発達障害が位置づけられていますが、社会的な理解や支援体制の整備はいまだ不十分です。子どもから成人まで、全世代の問題として、生きづらさを抱えた人たちの支援にとりくみます。
――都道府県・指定都市においての発達障害者支援地域協議会に当事者やその家族の参加をすすめます。
――発達障害者支援センターをすべての都道府県に複数配置し、民間団体やハローワークなどと連携して相談・支援体制を拡充します。
――職場の研修などで発達障害を学ぶプログラムを実施し、当事者の声にもとづいた合理的配慮をすすめます。
――二次障害を予防する医療や、雇用、教育などすべてにわたって支援を拡充します。
――医療・支援機関に足を運べない人に、専門家が自宅を訪問する相談支援活動を広げます。
――発達障害者も障害者手帳や障害年金を取得しやすいよう制度を改善します。
未来を切り開く教育の保障を
すべての子どもの学ぶ権利の保障は国と自治体の責務です。教育において過度な競争(エリート主義)・能力主義は深刻です。少人数学級を実現させ、通常教育の改革が求められます。
通常学級で学ぶ、支援や配慮が必要な難病や慢性疾病児、障害のある子どもたちが増えていますが、通常学級から排除される事態も起こっています。また、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室に通う子どもたちも増えているのに、一人ひとりの障害に応じた教育条件の整備がすすんでいません。
長年の努力が実り、特別支援学校の設置基準が制定されましたが、最低限の基準にとどまっています。さらに、既設校を対象から外すなど、すべての障害のある子どもたちに行き届いた教育を保障するには不十分な内容になっています。
教育条件を緊急に整備し、すべての障害のある子どもたちに行き届いた教育をすすめます。
特別支援教育
――「学校設置基準」に在籍児童数・生徒数の上限規定や通学時間の上限、障害種別ごとに必要な施設・設備を入れるよう求めます。
――既設校にも設置基準を適用するように求めます。
――通常学校における特別支援教育の充実を図るためにも、一学級あたりの児童生徒数を引き下げ、通級指導教室の整備計画、施設整備の充実をはかります。個別のニーズにこたえる「合理的配慮」の提供ができる財政保障を求めます。教員定員基準を新設します。
――教職員の増員や施設設備のバリアフリー化、エアコン設置など、十分な教育予算をとり、子どもに最適・最善の教育がなされるよう教育環境を整えます。
――外国籍の子どもの支援体制を整備します。
――治療による学習の遅れなどをサポートするために、オンラインを含めた教育方法をどこの地域でも充実させる体制を整えます。
――障害者総合支援法による移動支援を通学にも使えるようにします。
――医療的ケアが必要なすべての児童がいるすべての学校に看護職員の配置がおこなえるようにします。
――後期中等教育(高校・高等部)も含め病弱学級・院内学級・病弱特別支援学校の設置をすすめ、病児の教育の保障をすすめます。
――手話言語や点字などを使っての教育をすすめるための環境整備を整えます。
➡特別支援教育については、各分野の政策「66、教育」をごらんください。
高校・専修学校・大学・生涯学習
2018年から高校の通級指導教室制度が始まっています。
特別支援学校高等部や高校卒業後の障害児の生涯学習、発達保障の場が求められていますが、知的障害のある生徒の「専攻科」の設置は、私立や国立の特別支援学校の一部にとどまっています。社会福祉法人やNPOによる障害者総合支援法の自立訓練事業と就労支援事業を使った「学びの作業所」「福祉型専攻科」などが受け皿になっています。また、社会教育制度の縮減の中で青年や成人期の余暇活動の場は限られています。
――高校の通級指導教室の設置学校数や学級数、進路状況などの実態を調査し、教員の増員をおこないます。
――高校の特別支援学級設置をすすめます。
――高校内に設置されている特別支援学校の分教室の条件整備をすすめ、分校とします。
――高校、大学、専修学校などで、入学試験・共通テストや修学支援のための合理的配慮をすすめます。
――学校教育法の中に、学びの継続を希望する特別支援学校高等部の生徒や障害のある高校生に開かれた、専攻科の設置を位置づけます。
――社会教育制度などによる青年・成人期の余暇活動を拡充します。青年たちの就労後などの居場所として日中一時支援や地域生活支援センターが利用されており、余暇活動が十分にできるよう、基本報酬に位置づけます。
安心して暮らせる所得保障の確立を
年金・手当の保障
――マクロ経済スライドによる年金額の削減を取りやめ、障害者の所得保障の観点から障害年金額を大幅に引き上げます。
――最低保障年金制度をすみやかに実現させて底上げをはかります。
――支援の必要な人に障害年金が支給されるよう、医学的所見を中心とした障害認定基準、認定システムを根本的に見直します。
――障害年金の申請を困難にしている初診日認定を、大幅に緩和します。
――障害基礎年金にも3級を創設し、障害者の所得の権利を拡大します。
――厚生年金被保険者期間が一定ある人の初診日が国民年金加入中であっても障害厚生年金の支給をおこなう「長期要件」や、退職後の一定期間に初診日がある場合の障害厚生年金の「延長保護」を実現します。
――無年金障害者への特別障害給付制度について周知徹底を求めます。国は自らの不作為や年金制度の不備を認めて障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げます。
――障害のあるひとり親世帯は障害年金と児童扶養手当の加算部分の差額を受給できるようになりましたが、満額を受給できるようにします
――特別児童扶養手当や障害児福祉手当、特別障害者手当は、医学的所見を中心とした審査基準と審査方法を抜本的に見直して、本人および保護者の日常生活と社会生活における障害の程度に見合ったものにしていきます。それぞれの額を大幅に引き上げ、所得制限を廃止します。
労働・雇用の保障
障害者は一般雇用でも福祉的就労でも、低賃金におかれています。障害者で5人以上の民間事業所で働く人の平均賃金は、身体障害者は23万5千円、知的障害者13万7千円、精神障害者14万9千円、発達障害者13万円(2023年度障害者雇用実態調査)となっています。
2018年に発覚した中央・地方省庁の40年にわたる障害者雇用率のごまかしは、障害者・国民への裏切りでした。2024年6月1日時点で国の機関は法定雇用率を達成していますが、離職者も少なくなく、障害者が定着して働けるための合理的配慮が引き続き必要です。
福祉的就労の賃金・工賃は、就労継続支援A型86,752円、就労継続支援B型23,053円(2023年度平均工賃調査・厚生労働省)、生活介護4,093円、地域活動支援センター3,849円(21年4月分・きょうされん調査)です。
2024年度の就労支援事業の報酬改定の影響で、就労継続支援A型事業所の廃業が相次いでいます。また、「平均工賃月額にもとづく報酬基準(工賃が高ければ報酬も高くなる)」が継続され、就労継続支援B型は利用者の工賃が平均15,000円未満の事業所は基本報酬がすべて減額され、運営が困難をきわめています。
多くの事業所では障害者の働きがいと労働を通した社会参加を支援しています。それにふさわしい体系とすべきです。一般就労移行率を重視した報酬体系は「成果主義」であり、やめるべきです。
一般雇用
――国や自治体、民間企業の法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。
――最低賃金法第7条『最低賃金の減額の特例』(障害者除外規定)を廃止します。
――障害者雇用促進法における差別禁止と合理的配慮は法定義務です。事業者は障害者のはたらく権利を保障し、障害の特性に配慮した職場環境の改善をすすめます。
――障害者手帳のない難病・慢性疾病患者も法定雇用率や雇用の義務化の対象にします。
――障害者が職場に定着できるように、企業に対して障害特性に関する知識や支援方法等が相談できる機関を設置します。定着支援を適切におこなうためにジョブコーチ(職場適応援助者)の増員を行います。
――病状や障害が進行しても働き続けられるよう、有給での通院や病気休暇を保障します。
――障害者、難病患者等の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用を認め、読み書きをサポートする職場介助者などを配置します。
――重度障害者の通勤・職場支援の事業を実施しているのは102自治体(2024年7月31日時点)といまだ少数です。国の制度として拡充できるよう、抜本的に報酬を引き上げて担い手を育成します。
――視覚障害者のあんま・はり・灸の働く場を確保します。
――官公庁の採用試験に点字・大活字・パソコン受験を位置づけます。知的障害者への採用試験における合理的配慮を実施します。
――企業が雇用率を達成するために、「障害者雇用代行ビジネス」を通して、企業とまったく関係ない農園等が雇用の場として障害者に提供されています。「偽装雇用」とならないようチェックし、障害のない人と障害者がともに働く場がどうあるべきか検討をすすめます。
福祉的就労
2024年度障害福祉報酬改定では、就労継続支援A・B型の事業所が大打撃を受けています。平均工賃が低いと基本報酬が減額されるなど、成果主義がさらに強化されています。
――ILO条約や障害者権利条約にもとづき、障害者総合支援法にもとづく就労支援の事業所で働く障害者にも最低賃金を保障できるよう、補てんのしくみを導入します。
――就労支援の事業所の利用料負担は廃止します。重度の人や利用日数の少ない人の就労を守ります。
――低水準にある地域活動支援センターに対する補助金を、当面就労継続支援事業の水準に引き上げます。
――コロナ禍での経験をふまえ、感染症の流行などにおいて減収した利用者の工賃の個別補償制度を国としておこないます。
―――自治体から福祉現場へ仕事の紹介、斡旋などを支援します。
―――就労継続支援A型事業所は、収益から賃金を支払うことを徹底するため、今年度からさらに厳しい評価・報酬体系になり、廃業や就労継続支援B型事業への移行が増えています。廃業は事業主の責任とともに、障害者自立支援法導入以来、そもそも営利法人の安易な参入を促してきた国の責任もあります。失業した障害者の公的支援を求めます。
―――重度障害者や精神障害者など、体調に波がある人たちを受け入れている就労継続支援B型事業所に対し、基準未満の低賃金を理由とした報酬削減は本末転倒です。基本報酬を引き上げて就労を支援します。
社会参加を促進させるまちづくり・情報保障を
交通利用の自由、バリアフリーの推進を
2025年4月から精神障害者に対しJRの鉄道運賃割引がやっと開始されますが、利用条件は「距離が片道101㎞以上」となっており、最大の要望である通院などの短い距離での日常の交通利用に使えるよう、早急に見直すべきです。
――公共交通機関の料金割引制度の改善・拡充にとりくみます。障害者手帳を持たない難病・慢性疾病患者には登録者証の利用などでも割引が使えるようにします。
――障害者手帳の「1種」「2種」の区分により扱いが違う運賃割引の適用を、付き添い者の有無や距離に関係なく割引されるよう求めます。
――駅のホームドア、可動式ホーム柵の普及をすすめ、駅員による転落防止等の対策を徹底します。ノンステップバスの導入をすすめ、交通や建物などのバリアフリー化をすすめます。
――車いす利用者など駅利用に事前予約が強いられ、安全面にも逆行する駅の無人化に歯止めをかけます。少なくとも、障害者施設や特別支援学校などがある駅の無人化をやめさせます。
――障害者用・オストメイト対応の「多機能トイレ」、すべての人に開かれた「ジェンダーレストイレ」を普及し、ユニバーサルシートをあわせて設置します。
――点字ブロック・音響式信号機・エスコートゾーンの整備をすすめます。
――2024年7月から横断歩道の白線の間隔を45~50㎝から90㎝まで広げることを可能とする規則が施行されました。視覚障害者などにとって横断歩道を認識しづらくなるとの声があがっています。維持費の削減を理由にしていますが、歩行者の安全を優先するよう求めます。
――障害者が安心して生活できる公営住宅を計画的に建設するよう求めるとともに、抽選なしの優先入居を制度化します。
文化・スポーツ・余暇活動の保障を
――文化・スポーツ、余暇活動に誰もが親しめるよう、施設整備や環境づくりをすすめます。競技スポーツにとりくむ障害者アスリートの競技環境整備を支援します。また、障害のある青年や成人の余暇活動の場への公的支援の抜本的な拡充を求めます。
情報アクセス、コミュニケーションの保障を
手話の取得や使用、手話通訳者の確保など手話のさらなる普及をめざす「手話施策推進法」が2025年6月に成立しました。聞こえない人の権利をまもります。
障害者のコミュニケーション手段の自己選択・自己決定を尊重し、社会参加を保障する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」において、障害者権利条約の具現化として、情報取得や利用の手段を障害当事者が望む形で保障できるよう、国や地方自治体は予算を確保し、環境整備をすすめます。アクセシブルな情報通信技術(ICT)の調達を政府に義務づけるとともに、「新技術」の開発段階からの障害者の参加を保障します。
――手話が言語として当たり前に使える社会をめざします。
――「マラケシュ条約」にもとずき、読書や文字の読み書きに困難がある人たちの「読書権」を保障します。「読書バリアフリー法」による点字、オーディオブック、電子書籍等の作品の複製などを推進します。
――公的機関などに読み書き(代読・代筆)情報支援員を配置します。
――障害者対応のATMの普及や、点字通帳や出入金明細書の発行、窓口対応の改善など金融機関の業務を改善します。
――人工呼吸器を装着した難病患者や重度障害者のコミュニケーションツールとして機器の開発を促進し、これらを補装具や日常生活用具の対象とします。意思伝達装置の入力スイッチ設定支援制度を創設し、専門機器が支援できる体制を整備します。
――テレビの解説放送や手話・文字放送を拡充します。
――セルフレジや飲食店の注文のタッチパネル化などがすすむ下で、障害のある人やタッチパネルに不慣れな人のためにも人的配置を残します。
――デジタル化の進行の中での障害者のプライバシーを守ります。
政治参加を保障し、司法の場における権利保障を
参政権の保障を
――障害者権利条約、障害者差別解消法によって定められた障害のある人の投票における環境整備と合理的配慮を行います。
――「総務省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」を、すべての選挙管理委員会に徹底します。投票所の設置・人的配置の改善をすすめます。
――手話や字幕をすべての政見放送に義務づけます。
――投票券などとともに投票支援カードを送付し、投票所での合理的配慮を保障します。
――選挙公報は1日も早く発行・送付し、点字・音声・拡大文字などの選挙情報を選挙公報に位置づけます。
――体の不自由な人や投票所に行くことが困難な人のために、希望する自宅や病院・施設を回る「巡回投票」をすすめます。障害者の投票権を保障するために、移動投票・郵便投票を改善します。
――投票所を近くて便利な場所になるよう増設し、バリアフリー化をすすめます。投票所への移動を、「政治的活動」としてガイドヘルパー等の利用ができないかのような現状を改めます。
――被後見人が支障なく選挙権が行使できるよう、国や自治体の環境整備をすすめます。
――公職選挙法の「文書活動の規制」を撤廃し、ファクスの利用などを自由にします。
――選挙の候補者や議員活動での介助、代読、手話通訳などの合理的配慮を保障します。
――希望する病院や施設が「不在者投票施設」に指定されるよう、概ね50人以上となっている指定基準を緩和します。
司法権の保障を
――障害者が裁判を傍聴する場合や、原告・被告として裁判の当事者となる場合に不利益を生じることがないよう、意思疎通への配慮、障害者をまじえた職員研修など、司法当局が手立てをとります。
――裁判での点字文書の拡充や手話通訳、要約筆記を公的に保障します。
――損害賠償額の中の柱の1つである「逸失利益」において、障害者差別の解消を求めます。
いのちをつなぐ医療・難病制度の拡充を
憲法25条や障害者権利条約25条の立場から、障害・疾病の区別なく、窓口負担ゼロで医療を受けられる日本をめざします。当面、現行の窓口負担を引き下げて、障害者や難病患者・慢性疾病児の医療費は、優先してすみやかに無料にすることは当然です。
マイナンバーカードの取得は任意です。保険証と一体化のマイナンバーカードの強制取得は中止し、障害者や患者の医療の権利を保障する健康保険証の存続を求めます。今までの保険証の代わりとなる資格確認書は、マイナ保険証を持っている人を除外せず、全員に国の責任で交付します。
“治りづらい疾病を有する”障害者として難病・慢性疾病患者の施策の推進を
難病とは、医学的には治りにくく、研究や新薬開発の光が当たりづらい希少・難治性疾患で、国内では現在わかっているだけでも500~600の疾患があるといわれています。日本の障害概念は「固定・永続」という狭いとらえ方から、疾病という状態での障害を認めておらず、難病・慢性疾病をもつ人は長い間、「福祉の谷間」におかれ、福祉サービスから除外されてきました。ようやく2011年に障害者基本法が改正され、難病のある人も障害者として法的にも位置づけられることになり、さらに障害者総合支援法の障害の範囲に「難病等」が加わり、身体障害者手帳がない難病等患者も障害者福祉の利用に道が開かれました。
しかし、その対象疾病の範囲は、一部の疾病に限られていたり、障害者雇用促進法の法定雇用率の対象になっていなかったりするなど、まだ充分ではありません。そのために、障害の概念を見直し、難病・慢性疾病患者に対する雇用・福祉施策の充実をすすめていかねばなりません。
難病・慢性疾病患者も「治りづらい疾病を有する障害者」として総合的な障害者施策をいっそうすすめます
予算措置として難病の医療費助成が長い間おこなわれてきましたが、2015年に難病法及び改正児童福祉法の施行で、法的に位置づけられて施策が実施されています。
難病法では、難病を、①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が未確立、③希少疾病であって、④長期の療養を必要とするもの、と定義しています。そのうえで医療費助成の対象となる指定難病になる要件として、①患者数が人口の0.1%程度で、②客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立されていること、をあげています。
――難病・小児慢性疾病の患者の医療費は無料にします。難病の医療費助成の範囲は、当該疾病にかかわる治療費だけでなく、一般の医療にも広げます。
――患者数の多い疾病でも、治療法がなく、長期にわたり医療が必要な疾病は、すべて医療費助成の対象にします。
――新たに発見された難病が、順次すみやかに医療費助成の対象になるしくみにします。
――指定難病に導入されている重症度基準を、患者の日常生活や社会生活の困難さを基準としたものに改善します。
――医療費助成の申請手続きを簡素化するとともに、大きな負担である「臨床調査個人票」の文書料を無料にします。毎年更新するのではなく、病状の変化が見込まれる時期に更新手続きを行うようにします。
――登録者のデータベースがどのように活用されているのか、患者へも明瞭なものにします。また、データのセキュリティー対策とプライバシー保護に万全を期します。民間へのデータ提供においては、その目的と活用についての審査を、患者団体も含めた機関によって厳格にすすめるようにします。
――難病患者も障害者雇用促進法の法定雇用率の対象とします。
疾病児・医療的ケア児と家族に社会的支援をすすめる
2021年6月に「医療的ケア児と家族の支援法」が成立しましたが、現行の制度や予算では、その目的を果たすには不十分です。法には子ども・障害児としての権利を保障し、合理的配慮をすすめるという条文がありません。次期法改正時、子ども・障害児としての権利保障をもりこむべきです。
国や自治体の責任で、保育所や学校の支援体制を拡充します。子どもの自立の観点からも疾病児や医療的ケア児が家族の付き添いなしで、通園・通学できるようにするとともに、保育所や学校への看護師・支援員配置をすすめます。特別支援学校のスクールバスの整備など通学保障をすすめます。
――すべての小児慢性特定疾病患者が20歳を過ぎても医療費助成が継続されるよう、「指定難病」の要件を見直します。
――慢性疾病がある病児が生涯を通じて適切な医療と自立のための支援が受けられるよう、小児から成人までの総合的な診療体制の整備と、移行期医療支援センターの設置を推進し、移行医療をすすめていきます。
――重症の疾病児ほど治療できる専門医療機関は限られています。身近なところで治療が行えるように専門医療機関の整備・拡充と医師・看護師等の増員をおこないます。
――やむを得なく遠隔地への医療機関へ通わざるを得ない病児と家族を支援するために、小児慢性特定疾病、難病患者と家族の通院交通費への助成をおこないます。
――患者と付き添いの家族のための滞在施設の整備と既存施設への施設運営費への補助をすすめます。
――小児慢性特定疾病対策の予算を大幅に増やして、教育の保障ときょうだいへの支援、福祉の拡充をすすめます。
障害児者の入院
重度訪問介護の医療機関でのヘルパー利用は支援区分4~6まで広がりましたが、看護師などに介助方法を伝えるだけで直接介助は認めていません。
――一部の重度者に限定せず、通院や入院時に介助を必要とするすべての障害児者に対して、コミュニケーションや日常生活を支えているホームヘルパー等が病院内での直接介助や見守り支援ができるよう、医療と福祉の垣根をはずし、実態的な支援がおこなわれるよう制度の拡充をはかります。
自立支援医療の改善を
――自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料を実施し、低所得世帯以外についても無料にします。当面、育成医療と同様に更生医療にも自己負担上限額を設けます。入院時食事療養費の患者負担は無料とします。
――育成医療と更生医療の「重度かつ継続」の経過的措置を恒久的な制度に見直します。「重度かつ継続」者の入院時食事療養費の負担をなくします。
――育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。また、給付の対象を内科的治療まで拡大します。
――更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく、状態を維持したり、これ以上の悪化や二次障害を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。「重度かつ継続」の対象範囲を拡大し、断続的であっても高額の医療費がかかる場合にも適用します。
障害者医療費助成制度を国の制度に
――自治体独自の制度である〔重度/重度心身/心身〕障害者(児)医療費助成制度は国の制度に変えて、窓口負担を無料にします。当面、自治体によって対象外としている中・軽度の障害者や知的・精神障害者なども助成の対象とし、窓口負担や所得制限を撤廃します。窓口負担をなくしていることで、国保の国庫補助を減額する自治体へのペナルティー制度の廃止を求めます。
精神障害者の医療・福祉の拡充
精神科病院の入院医療の監視強化や身体拘束・隔離の人権を損なう行為に歯止めをかけ、医療体制を手厚くするとともに、国際的な規範に即して精神障害者の地域のくらしを支えます。
精神保健福祉法において、2024年4月から精神科病院にも虐待の通報義務が課せられました。虐待防止のための職員研修などをおこない、暴力、長時間の身体拘束など障害者に対するあらゆる虐待をなくします。
――世界に例のない、家族に同意を求める強制入院である医療保護入院は、廃止します。
――精神科病院での身体拘束や、強制医療を解消します。
――他の診療科に比べ医師や看護師の配置が少なくてよいとしている「精神科特例」を見直し、診療報酬を引き上げて医療体制を厚くします。
――患者や家族に寄り添う精神科病院・クリニックの情報公開をすすめ、当事者の会、ピアカウンセリングなどを支援します。
――措置入院した患者の退院後の支援を話し合う「精神障害者支援地域協議会」への警察官の参加を中止します。個別ケース検討会議への本人や家族の参加を「必要に応じて」から、積極的な推進に転換します。
――社会的入院を解消します。精神科病棟の居住系施設への転換はやめて、地域にグループホームなど住まいの場を増設し、在宅での訪問支援を拡充します。相談支援を拡充し、就労支援をはじめとした所得保障などをすすめます。
――自立支援医療(通院公費)の低所得世帯のすみやかな無料を実施し、低所得世帯以外についても無料にします。