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高市政権が狙う「対外情報機関」とは

 「スパイ防止法」制定をめざす自民党と日本維新の会、参政党が総選挙公約に盛り込んだ「対外情報庁」は、米国の中央情報局(CIA)に倣ったスパイ謀略機関です。1947年に「国家安全保障法」の制定により設立されたCIA。トランプ米政権のベネズエラ侵略でも暗躍し、世界中で国家転覆、軍事活動を含む違法な秘密工作をほしいままにしてきました。平和・人権・民主主義を掲げる日本国憲法に反して今、なぜ、こんな機関までつくろうとするのか―。(伊藤紀夫)

侵略でも暗躍する謀略機関・米CIAに倣う

 昨年12月、ベネズエラ沿岸にある港湾施設をドローン(無人機)で攻撃したのもCIAです。CNN(米国のテレビ局)によると、トランプ大統領はインタビューで、この攻撃を認めました。1月3日にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した国際法違反の侵略でも、CIAの関与が報道されています。

 「今回のベネズエラ攻撃では先乗りしてCIAの秘密工作員が入っているわけです。彼らはベネズエラの法律を犯していますが、米国は違法なことをしても構わないと決めているのです。CIAは情報収集と分析だけではなく、秘密工作を任務としています。日本では戦前・戦中の特高警察や憲兵の時代にあった特務機関の工作に当たるものです。今、日本がそういう危険な機関を設けるなんてありえないし、やれないと思います」

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春名幹男さん

 そう話すジャーナリストの春名幹男さんは、共同通信ワシントン支局長の時に米国立公文書館で調べた資料に基づいて『秘密のファイル CIAの対日工作』を書きました。

 その著作の中で、1958年の衆院選に向けてCIAが岸信介首相に資金を渡していたこと、58年に佐藤栄作蔵相(のちに首相)が米政府に59年参院選用の選挙資金を提供するよう求めていたこと、60年の安保条約反対闘争でデモ行進を襲撃した右翼にCIAが資金を提供したこと、62年に沖縄の琉球立法院選挙で親米派を勝利させるためにCIAは自民党を介して資金提供したことを明らかにしています。

 朝鮮戦争中の51年から52年に、日本を占領したGHQ(連合国軍最高指令官総司令部)の秘密諜報(ちょうほう)機関「キャノン機関」は、文学者の鹿地亘氏を拉致・監禁・拷問し、米国の諜報活動への協力を強制する事件を起こしました。

 当時、キャノン少佐(のちに中佐)の専属コックも務めていた山田善二郎さん(元日本国民救援会中央本部会長、故人)は、彼らのアジトで鹿地氏が協力を拒んで自殺を図った時に手当てを命じられ、その後、身の危険を感じながら救出に尽力しました。

 山田さんは「CIAは、いまなお、世界の各国で鹿地亘の不法監禁事件で明らかにされた手口と瓜(うり)二つの、時にはそれをはるかに上回る狡猾(こうかつ)で冷酷、残虐な手口で、スパイや謀略をほしいままにしている」と告発しています(『アメリカのスパイ・CIAの犯罪』)。

 70年代にはチリのアジェンデ政権を転覆するクーデターで暗躍するなど、世界各地で国家主権を侵害する犯罪行為を繰り返しているのが、CIAです。

 春名さんは「CIAのような機関をつくるといえば、海外から相当警戒されます。日本は外国に行って外国の法律に触れるようなことはしてはいけないと思います」と批判します。

「戦争する国」へ国民監視・弾圧反対運動急務

 それなのになぜ、「対外情報庁」の創設を掲げ、「組織の在り方は、米国中央情報局に倣い、総務班、工作班、分析班及び科学技術班等を設けることとする」(維

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小澤隆一さん

新の中間論点整理)というのか―。

 憲法学者の小澤隆一さんは「2015年に成立した安保法制で集団的自衛権の行使を認め、米国とともに海外で戦争できる方向に踏み切り、今、高市政権は安保3文書に基づく大軍拡を前倒しして、敵基地攻撃の長射程ミサイルの配備などを進めています。スパイ防止法は、それに伴う治安体制に魂を入れ、国民監視の網をかけようとするものです。CIAのような組織の創設は彼らにとっても『高根の花』でしょうが、いろいろな省庁に散らばっている情報機関を統合して管理する部局をつくろうとしているのでしょう」と語ります。

 戦前の日本では「スパイ防止法」に当たる軍機保護法、天皇絶対の「国体」や侵略戦争に反対する人たちを弾圧した治安維持法が猛威を振るいました。第1次世界大戦に参戦した米国が制定した「スパイ防止法」は、徴兵反対のビラまき運動や言論を弾圧・処罰し(シェンク事件)、第2次世界大戦後の「冷戦」「赤狩り」の時代にも弾圧の嵐が吹き荒れました。

 「米国では1952年に原爆開発情報をソ連に流したなどとして、ローゼンバーグ夫妻に死刑判決が下されました。自由と民主主義を標榜(ひょうぼう)する国で、スパイ防止法によって、夫妻は10歳と6歳の息子を残して53年に処刑されたのです」

 そう言う小澤さんは警鐘を鳴らします。「スパイ防止法は日本国憲法のありとあらゆる原理原則と規定に反するもので、本来、憲法上ありえない法律です。この法律で一番ガードしたいのは軍事がらみの秘密で、戦争放棄を掲げる9条に反します。セキュリティークリアランス(適格性評価)の徹底ということで、企業や研究機関で働く人のプライバシーを丸裸にして監視し、知り得た情報の漏洩(ろうえい)を重罰で禁じれば、取材活動や表現の自由、思想・良心の自由、ひいては研究や学問の自由まで奪われることになります」

 春名さんは「オバマ米政権の時代にはスパイ防止法をかなり使いました。そのほとんどはメディアへのリーク(機密を漏らすこと)を摘発するものでした。トランプ大統領もやっていますから、その危険はあるわけです。結局、取材がシュリンクする(縮む)ことになります。国家の情報が漏れなくされたら、民主主義社会を保つことはできないと思います」と指摘します。

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トランプ米政権によるベネズエラ侵略を糾弾する日本共産党の街頭演説で訴える小池晃書記局長=1月8日、東京・池袋駅西口

 「スパイ防止法」は、トランプ米政権に追随して戦争への道を突き進むため、憲法の平和、基本的人権、民主主義を踏みにじり、悪名高いスパイ謀略機関の創設まで掲げているのです。

 党利党略の解散・総選挙を表明した1月19日、高市首相は、「国家情報局の設置」「スパイ防止関連法の制定」が「急がれます」と述べ、自民党は衆院選公約に「対外情報機関を設置」も明記しました。

 高市政権は特別国会で関連法案の提出を狙っており、希代の悪法を葬り去るたたかいは急務です。