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内調を格上げする国家情報局設置法案
『内調』の著者でアジア調査会事務局長 岸俊光さん
親米反共で治安対策・世論工作 情報公開・民主的統制の強化を

岸俊光さん

高市早苗政権が13日、国会に提出した国家情報局設置法案は、内閣情報調査室(内調)を格上げして国家安全保障局と同格とし、政府の情報収集・分析機関を強化するものです。自民党と日本維新の会の連立政権合意書に盛り込まれており、スパイ防止関連法制、対外情報庁創設とセットで、その第一段階といえます。そもそも秘密の闇に覆われた内調とはどんな組織で何をやってきたのか、その増強は国民に何をもたらすのか、『内調』の著者でアジア調査会事務局長の岸俊光さんに聞きました。(伊藤紀夫)

―高市政権がGDP(国内総生産)比2%を超える軍拡と一体で進める治安体制強化の一環といえます。内調の取材、研究から、その実態をどのように見ていますか。

内調は1952年4月に内閣総理大臣官房調査室として新設された首相直属の情報機関です。57年8月に内閣調査室、86年7月に内閣情報調査室となり、今日に至っています。

内調が新設された時期は、50年8月の警察予備隊の創設、54年7月の自衛隊発足と重なります。米国の意向に沿う再軍備化の中で、親米反共の情報機関として内調は生まれたわけです。

当初は冷戦の時代で、内調が最も重視したのは日本の共産化を防ぐことでした。最初は治安対策から始まっています。内調発足までに作られた原案の一つには「調査室の活動の当面の重点目標を共産党及びこれに同調する勢力の(企画、宣伝、運動の)実体を国民の前に暴露することにおく」という記述があります。

内調発足時からのメンバーだった志垣民郎さんは、私が編者になって『内閣調査室秘録』を著しました。その中で、共産党対策を担ったメンバーが「内調の使命もまたここにあるとの考えを持っていた」と語っています。

吉田茂首相の秘書官だった公安警察出身の村井順氏が「独立するからには、日本にもCIA(米中央情報局)のような情報機関が是非必要である」と意見具申したところ、「それでは、お前がやれ」と吉田首相にいわれ、内調が発足した話も紹介しています。志垣さんら3人の内調メンバーがCIAの招待で59年、50日間にわたる研修旅行をした日誌もあります。

委託団体や委託研究に資金をだして、その中で学者を取り込んでいく実態についても、志垣さんのリアルな日記や証言が明らかにしています。

―第2次安倍晋三内閣では米国とともにたたかう集団的自衛権の行使を可能にする安保法制、特定秘密保護法の制定、国家安全保障会議の設置とともに、内閣情報官、内閣衛星情報センターの設置、国際テロ情報集約室の新設など内調の拡充が進みました。その歴史から見て、今回の内調格上げの意味は何でしょうか。

内調は当初から公安警察、外務省、公安調査庁、自衛隊などの情報機関の連絡調整を担ってきましたが、司令塔として他省庁に対する指示権は持てず、長年の懸案でした。発足から74年、高市内閣は当初からの悲願だった情報集約に今回手をつけようとしているわけです。

しかし、これは内部でも懸念されていましたが、政権の「お庭番」的に使われる恐れがあります。時々のいろいろな問題について、国民に対する世論対策、悪くいうと世論工作に使われる恐れは常にあります。

野党の状況を調べるのはもとより、与党の政治家のことも調べるし、世論の動向も把握します。日本共産党について資料集を作っていつもウオッチしていた時代もありました。

マスコミに対する関心も強く、特に政府寄りではない新聞社などへの働きかけもしてきました。報道対策だけでなく、知識人の取り込みも含め、こうした工作が強まる恐れもあります。

内調は首相官邸の関心に沿って情報を集めることはもちろんですが、内調スタッフの関心からスタートすることも多いため、政府の意向とズレたり、情報機関の枠を超えて政策に関与したりすることもあったようです。

情報公開も不十分なので、どんな仕事をしているかチェックすることも難しい組織です。野党が国会で取り上げて、CIAとの関係を突っ込まれても、言を左右して絶対に認めませんでした。民主的な統制が最も難しい課題になるでしょう。

―国家情報局設置法案のあとにはスパイ防止関連法制やCIAをモデルにした対外情報庁創設が控えています。この点はどうですか。

CIAのような情報機関を創設する願望は、先に触れたように、当初からありましたが、当然、頓挫してきたわけです。それは民主化された日本にそぐわず、憲法にも抵触しかねない組織だからです。

CIAは対外情報の収集・分析だけでなく、ベネズエラやイランへの軍事攻撃の際に秘密工作をしていたことに見られるように、国家転覆さえ任務とする謀略機関です。そういう組織の創設は、今の日本の法体系のもとでは簡単にできることではありません。

「スパイ防止法」については、産業スパイなど経済安全保障が念頭にあると思いますが、これも運用や統制が難しい問題があります。一般の人は関係ないと思うかもしれませんが、機微な情報に接触する日本人にはアプローチして監視してくるでしょう。

外国のスパイを捕まえるのは、本当に難儀なことです。外国人を捕まえたら、当然、国際問題になってくるので、政府は慎重にならざるをえません。しかし、それに協力した疑いのある日本人だったら、国内法でやりやすいので摘発される可能性があります。

―市民のプライバシー権、思想・良心の自由、表現の自由・知る権利、報道の自由など、憲法が保障する基本的人権を侵害することになりますね。歯止めをかけるには何が必要ですか。

ここまで来たのは戦後初めてのことなので、政府も国民もインテリジェンス(情報の収集・分析)機能を強化する意味をしっかり認識して、対応すべきだと思います。

内調についても、マスコミは表面的なことだけでなく、過去の歴史を調べて、その実態はどういうものかを伝えていくことが大事だと思います。

秘密のベールに包まれ、運用・統制が難しい組織だけに、国会や第三者機関によるチェックを含めて情報公開を進め、民主的統制を実効性のあるものにする必要があります。

 

 

きし・としみつ 1961年愛媛県生まれ。一般社団法人アジア調査会常務理事・事務局長。博士(学術)。専門は政治宣伝。著書に『内調内閣情報機構に見る日本型インテリジェンス』、『核武装と知識人 内閣調査室でつくられた非核政策』、編著に『内閣調査室秘録 戦後思想を動かした男』(志垣民郎著)など。