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こども性暴力防止法 12月25日から 脱“事業者まかせ” 鍵は

立教大学名誉教授・“人間と性”教育研究協議会 浅井春夫さん

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こども性暴力防止法が12月25日に施行されます。子どもを性暴力から守る総合的な法律で、特に教育・保育などを行う事業者が職員の性犯罪歴を確認する仕組み(日本版DBS)に注目が集まっていますが、“事業者まかせ”が実情です。制度の目的を生かすにはどうしたらよいか。立教大学名誉教授で“人間と性”教育研究協議会の浅井春夫さんに聞きました。(二宮亜里)

Q 評価点、改善点は?

A こども性暴力防止法は、子どもへの性暴力の防止について総合的な取り組みの必要性を提起し、日本版DBSは国として「子どもへの性暴力は許さない」と強いメッセージを発信した点に意味があります。

しかし、不十分さが多々あります。子どもと関わる事業者が(1)取り組みを義務付けられた者(学校、認可保育所など)(2)国の「認定」を受ける・受けないが事業者判断に任され、受けたら取り組む者(放課後児童クラブ、学習塾など)(3)対象になっていない者(医療機関、認定を受ける意思のない事業者など)―の3層構造になっています。性的人権を保障する際の空白領域が生じることは、人権の格差に関わる大問題です。

情報に制限が
イギリスでは、基本的に、子どもとかかわるすべての職種で、事業者は職員の犯罪歴を確認できます。性犯罪だけでなく、子どもに危険を及ぼす犯罪歴、および、関係する情報がある場合も含みます。日本版DBSでは、特定の性犯罪歴のうち、裁判で有罪判決が確定しても、例えば拘禁刑でも20年たてば確認できなくなるなど、調べられる情報に制限があります。各国では無期限が基本です。

事業者は、性暴力を防ぐための取り組み(安全確保措置)と、性犯罪歴を適正に管理するための取り組み(情報管理措置)を実施することになります(図参照)。何が「性暴力」や「不適切な行為」に当たるかを就業規則などに定め、事案が起きたら、性暴力の「おそれ」「疑い」の有無を判断します。事業者の裁量に任されることが多く、国や自治体による研修の実施、教材開発、研修費や書類管理の支援が必要です。

包括的性教育
Q 事業者は何を大切にしたらよいですか?

A 性犯罪の9割が初犯と言われます。日本版DBSが始まりますが、性犯罪の予測と防止は、実際には困難です。性暴力をなくすために、今までの教育・保育の内容でよいか、職員の言動・対応はどうか、と事業全体を見直すとよいのではないでしょうか。ハラスメントや暴力が起こりえる環境では、性暴力も起きやすくなります。

こども家庭庁の「施行ガイドライン」や「取組を横断的に促進するための指針」に、不適切な行為の具体例が掲載されています。同時に留意点として「過度な萎縮につながらないよう、実態に即して」共通認識を形成することが重要です。

「子どもの人権の尊重を徹底する」との理念と視点から事業の実践を検証し、事業者の基本方針を子どもたち、保護者にも共有することが大切だと思います。

Q 包括的性教育も不可欠なのでは?

A 性暴力被害は、「いやだ」と感じても言葉や態度に出せない場合も多く、発覚しにくい。「被害にあった」と認識できないこともあります。性を人権とジェンダー平等の立場でとらえる包括的性教育を進めることは、制度を機能させるために不可欠です。イギリスでは並行して進めており、日本が学ぶべき点です。

人手・費用ギリギリ NPO法人かるがも花々会

「指定障害児通所支援事業なので義務の事業者に該当しますが、こども家庭庁の資料が500ページ以上、動画もたくさんで。内容を理解するだけでも大変です」

障害のある子の発達支援・放課後活動、青年部の余暇活動を行うNPO法人かるがも花々会(東京都東久留米市)の理事長・下田大輔さん、統括責任者の加辺(かべ)紘樹さんはこう言います。

約60人の利用児・者を、8人の常勤職員、約30人のパート職員で支援する小さな事業所。日々の業務のほか、地域活動や家族支援なども行うにはギリギリの職員数です。今後の研修時間と研修費をどうやって確保するか。性犯罪歴を確認する端末機器を購入するための費用負担も心配です。

子どもの面談やアンケートに取り組むよう求められることも悩みです。「性暴力や不適切な行為について、障害のある子どもが理解できるように質問するのは難しいと感じます」

加盟する全国放課後連(障害のある子どもの放課後保障全国連絡会)、放課後連・東京の同業者たちで「特別支援学校ではどうやって教えるのだろうか。参考にしたい」と話し合い、都の担当部署へも問い合わせました。「障害のある子どもたちが混乱なく理解できるように、行政とも連携したい」(加辺さん)

下田さんは言います。「放課後の居場所は、言葉でのやりとりだけでなく、互いに体を寄せ合って遊び、ぬくもりを大事にしてきました。職員・子ども・保護者と“信頼の三項関係”を築いて、よい支援ができるように取り組みたい」