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連載「ママのゆるコツ」1 渡辺のぞみ

ママのゆるコツ1の紙面

お母さんのため息

2025年11月4日

 著書『ママのゆるコツ事典』(文響社)を出版したのは、娘が5歳と1歳の頃。毎日が嵐のようだった。産休・育休もないフリーランスだったから、2人とも生後3カ月で託児した。疲れて思考停止したとき、ふと思った。「母親がこなすことの数々は壮大な仕事だ」と。そんな毎日をどうにかするコツを詰め込み、自分みたいなお母さんを応援したくて編んだのが本書だったのである。

時はたち、娘たちは今12歳と9歳。未就学児の子育てはすでに遠く、当時のため息のいくつもが消えている。「だっこー」とせがまれることも、急な発熱で電話がくることもなくなった。紙おむつやおしりふきなどの日用品も姿を消していた。ずいぶん身軽になったと感じる。留守番もおつかいもできるし、頼めば風呂掃除や炊飯もしてくれる。頼もしいときすらある。

じゃあ、私のため息は減ったのか。いやいや、そんなことはない。悩みの中身が変わっただけで、むしろ増えている。

特に中1の長女との距離感は難しい。受験がいやでも視野に入ってくるから、勉強が気にならないと言えばうそになる(実はすごく気にしている)。カラオケに行きたいとか、スマホがほしいとか、遊び方や友人関係の広がりもめざましく、その都度「わが家はどうするか?」が悩ましい。(結果、夫婦で話すことが増えた。またその結果、丁々発止のやりとりも増えた)

慎重に言葉を選んでも「お母さん、うっとうしい」と一蹴される始末。50歳を目前にしたいい年齢(とし)なのに、娘に届く言葉がするりと出てこない自分が情けない。「こんなはずじゃなかったのに」。ため息は止まらない。

いつしか私の目の前には、終わりの見えない真新しい線路が再び延びていた。「どこまで続くんだろ」とぼうぜんとするけれど、子どもの成長は待ったナシだ。立ち止まるわけにはいかないから、気持ちを奮い立たせて、今日もなんとかやっていこうと思う。

※本連載には子どもが登場しますが、本人の許可を得て掲載しています。(書籍編集者)

(火曜掲載)