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- くらし家庭
- 2025.11.07
ジェンダー視点の歴史教育 (1) 江戸時代の性売買
社会科教諭 高橋あお
私は昨年度、年間を通して、中学校社会科の歴史的分野の授業でジェンダーの視点を取り入れた授業を積み重ねた。日本の歴史教育は、政治史が中心になりがちで、教科書に登場するのも男性がほとんどであるということに、問題意識を持っていたからだ。
歴史の授業で登場人物が男性中心であることは、生徒たちに無意識のうちに女性蔑視、異性愛や“性別二元論”が前提であることを植えつけてしまっていると感じている。本連載では、私が取り組んだ授業を紹介していきたい。

現在の吉原大門跡の様子(筆者撮影)
まず、江戸時代の単元で、性売買をテーマにした授業を実践した。日本の歴史教育においては、性売買の歴史が取り上げられることはほとんどない。しかし、近年は生徒たちもなじみのあるような漫画やアニメ、テレビなどにおいて、遊郭や遊女を題材とする作品が多く、日本の娯楽文化として取り上げられている傾向にある。
私はこのような状況に問題意識を持った。人身売買によって、みずからの「性」を売ることを強要された遊女たちの歴史が、日本の文化として位置づけられていることにたいしては、批判的検討が必要だと感じ、授業を行ってみた。
はじめに遊郭をイメージさせるために、新吉原を描いた絵を史料として読み取ることから始めた。ここには、遊女、禿(かむろ=遊女の見習い)、遊女屋の者、遊女屋を利用する者の姿が描かれている。
生徒に気づいたことを自由に発言させたところ、禿について「なんで子どもがいるの?」「この子どもはアニメでも出てきた」といった発言が出た。禿は、生徒たちと同じ年代であり、遊女の見習いであることに触れた。
また、遊女たちの性的サービスを買う者は、参勤交代で江戸に出てきている武士や町人であることについて注目させた。江戸には幕府公認の新吉原という遊郭が存在したことについて、言及した。(金曜掲載)

