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- くらし家庭
- 2026.08.17
絵本『辺野古の浜の文子さん』
「おばあは、どうして座りこみを続けるの?」
作者・岩下美智子さんと上方平和教育研究所共同代表・平井美津子さん
“平和ではない”沖縄の現実ここに
2026年8月16日【くらし】
96歳の島袋(しまぶくろ)文子さん。沖縄・辺野古の基地建設を止めるため座りこみを続けています。この文子おばあの道のりが絵本『辺野古の浜の文子さん』(高文研)になりました。作者の岩下美智子さんと、上方平和教育研究所共同代表の平井美津子さんが思いを語り合いました。(堤由紀子)

「沖縄のことはよく知らなかったので、どんな顔をして行ったらいいかわからなかったんです」
中学校の英語科教員だった岩下さんは、沖縄に行きそびれていました。訪れるきっかけは、2001年アメリカでの同時多発テロ。「米軍基地が集中して攻撃対象になる沖縄には行かない」という空気に「基地をたくさん置きながらふざけんじゃない!と思ったんです」。
よそごとに…
初めて足を運んだ沖縄。何もかも美しいことに驚きました。沖縄の文化と、米軍基地を押しつけられている姿を他の人たちにも見てほしい、と退職教員仲間でツアーを組んで再び沖縄へ。文子さんと出会いました。
自宅に行った時のこと。「何をしに来たかね」「北沢(当時の防衛相)連れてきなさい。言って聞かせることがある」。腕組みをして言われました。
はじめは怖い人だと思いましたが、話すうちに親しくなり、本土を知らないという文子さんを長野県に招くことに。しかし、何度も招いても「沖縄は大変ね」などとよそごとになりがちでした。
文子さんの思いを伝えたい。沖縄のことを正しく知ってほしい…。ある日、地元紙で童話投稿募集を見つけ、子ども向けに文子さんのことを書いたのが、今回の絵本の始まりです。「貧乏人のむすめに勉強なんかいらない」と奉公先で大切な教科書を焼かれてしまったこと。戦火の中、目の見えない母と弟の手を引いて逃げ惑ったこと。そして、新しい基地建設が進められていることも。
知ってほしい

岩下さん(左)と平井さん
「激することなく、シンプルに淡々とつづりました」と岩下さん。「戦争につながるものは全部ダメ、だから基地はダメだ」と座り込みを続ける理由が伝わってきます。
同時に「戦争はイヤ、だけでは何か足りない」と、分断をたくらむ勢力がいることも描きました。
◇
「基地をつくるのに協力してくれたら、たくさんお金をあげますよ」
「基地があったら商売がうまくいきますよ」
そう言われて、賛成する人もいました。
でも文子さんは賛成できません。
「基地は戦争のためのものでしょう。戦争になればまた子どもたちが、わたしのような目にあうよ」と思うからです。
◇
「この2ページに、文子さんの苦しさが凝縮されていると思います」
こう話すのは、中学校の社会科教員として長く平和学習に携わってきた平井さん。辺野古沖での事故をきっかけに、基地反対運動や平和学習に対する視線が厳しくなっている現状を憂えます。
修学旅行で沖縄戦の話を聞くのはいいけれど、基地には連れて行かない。「政府にたてつくようなことを学ばせるのはやめさせよう、という感じです」。でも沖縄は今も平和ではないという現実が、本の帯にある「おばあは、どうして座りこみを続けるの?」という言葉に込められていると。「基地はイヤだという人たちの声を聞く責任が、私たちにはある。たとえ基地には行けなくても、学べる本ができました」
絵を担当したのは、えんどうたかこさん。沖縄をこよなく愛し、キジムナーをモチーフにした作品制作を続けています。「有名な方なので、どんなふうに描いたらいいかなと。一つ一つの表情を、これでいいんだろうかと確認しながら仕上げました」。周囲からは「意志がこもった目が、とてもいい」と好評です。
岩下さんは言います。
「事故を口実に、平和を求める運動を全部つぶそうと襲いかかってきている気がしてなりません。沖縄で何があったのか。今何が起きているのか。人々はなぜ座り込まなければならないのか。知ってほしいです」

