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- くらし家庭
- 2026.07.01
災害時の口腔ケア
日本災害歯科支援チーム 「食べる」「話す」「笑う」取り戻したい
2026年6月7日【くらし】
大きな災害が起こり、自宅から避難所へ。不自由な生活の中で、身体的にも精神的にも大きな支えとなるのが「お口のケア」です。大切なケアは何か。そして、そのためにどんな支援が必要なのでしょうか。4日から10日は「歯と口の健康週間」です。(堤由紀子)
日本災害歯科支援チーム「JDAT」。大規模災害時に、歯科医療や口腔(こうくう)ケアを提供する専門職チームです。2022年3月に発足。24年1月の能登半島地震で初めて活動しました。
「それまでも支援はしてきましたが、『歯科医がなぜ来たの?』という受け止めもありました。被災者の健康を守りたいと、全国的な支援のしくみをつくりました」
こう話すのは日本歯科医師会常務理事で、高知県の歯科医師、野村圭介さんです。
日本歯科医師会は、日本災害歯科保健医療連絡協議会の基幹事務局を担っています。同協議会が、被災地域の都道府県の要請をふまえた厚生労働省からの要請に基づいてJDATを派遣します。
生活の基本
歯の不具合があると、十分に食べられず低栄養になることも。「人間の生活の基本は『食べる』『話す』『笑う』。こうした部分を元通りにしてあげたい」と意気込みます。
能登半島地震の際は4月27日まで支援チームを派遣。歯科医師や歯科衛生士、事務職をはじめ364チーム、1325人が避難所や高齢者施設など現地に入りました。

避難所で被災者の歯・口の健康状態を確認し、口腔ケアの助言などをしています(日本歯科医師会提供)
まずは、入れ歯や痛くなった歯などの応急処置を実施。石川県の隣県、福井県から巡回診療車を借りて、珠洲(すず)市の道の駅で歯科治療を行ったこともありました。「この経験で巡回診療車の意義が改めて見直されました。災害時だけでなく、平時に中山間地域等で活用されることを期待したい」とも。
応急処置を終えた後は、口腔ケアで誤嚥性(ごえんせい)肺炎などによる災害関連死を防ぐ活動を進めます。「支援を受けて、きちんと食べられるようになった」と感謝の声が届きました。水がない場合に有効な液体歯磨きなど、ニーズに基づいた物資の支援も実施しました。
一方で、行政や医療・福祉関係チームとの情報共有・連携がスムーズにいかないケースもあったという課題も。「JDATは、医療チームと福祉チームの両方を兼ねる部分があります。そういう位置づけを生かして、うまく連携がとれるように対応していきたいです」
研修で備え
支援で何より大切なのは「被災者ファースト」で動くこと。「診療所で診療しているような“待ちの感覚”ではダメ。自分自身が赴いて、被災者に寄り添うことです」と野村さん。そのための研修を実施して、普段から支援に備えています。
「まずはJDATを知っていただきたい。そしてしっかりした組織にするためにも、幅広い参加を呼びかけたいです」
水なくても歯磨き有効
日本口腔衛生学会副理事長 嶋﨑義浩さんに聞く
災害時に口腔ケアがなぜ大切なのか。それは、誤嚥性肺炎による災害関連死が多いからです。
「もちろん、基礎疾患が悪化して亡くなってしまうこともあります。ただ、口の中の衛生状態が悪ければ誤嚥性肺炎のリスクは高まります」
こう話すのは、日本口腔衛生学会副理事長の嶋崎義浩さんです。
ただ、歯磨きをしたくても水が不足していたり、移動がなかなかしにくかったりという悪条件も。「水がないとちょっと…」という気持ちも生まれるかもしれませんが、「磨いているうちに唾液も出てきます」と嶋崎さん。「使用した歯ブラシはウエットティッシュがあれば、それでふいてもらっても。キャップもあるとよりいいですね」
完全な洗浄能力はないものの、ガムで清涼感を得るのも一つの手だと言います。歯ブラシを使った口腔清浄が困難な状態で1日3回ガムをかんだところ、不快感が少し改善されたという調査も。「とはいっても、甘味料が入っていると逆に虫歯を誘発するので、キシリトールガムで。個人や自治体の備えに入っているといいかもしれません」
“生き死に”に関わる誤嚥性肺炎の予防。公的な支援はもちろん、「周りの誰かが、お口のことを気にしてあげることが大事かなと思っています」。

