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体育嫌いと呼ばないで~仲間と楽しむ運動文化 小学校教員 川渕和美
(1) 妖怪たちと一緒なら

2026年5月1日【くらし】

4月。出会いの授業を考えていた時、しんやの顔が浮かんだ。体育への苦手意識が強く、教師が声をかけても動けずかたまっていたと引きつぎがあったのだ。そうした子を前にどんな体育の授業をつくろうか…。

まずは観察しようと、しんやに近づいてみると、そこには色とりどりの妖怪たち! リアルだけど、どこかかわいくて、やさしいタッチの妖怪の絵を描いていた。そういえば、自己紹介で「妖怪が好き」と言っていたことを思い出す。これは教材につなげたい!

4月は投げる運動。いつもはペットボトルだけど、大事なのは投運動の面白さを味わうこと。よし! これだ! 投げるものを思い付き、しんやには「体育の授業で使いたいから、妖怪を描いてくれない?」と頼んだ。しんやは驚いた表情で「え? いいけど…」。

      イラスト 鴨下潤

翌日、小声で「何人くらい必要なの?」と、声をかけてくれた。うれしいなあ。しかものり気だ。また翌日「先生、これ」。手には丁寧に描かれた5人の妖怪、名前入り。「しだいたか」「土ころび」…。最初の体育、きっと楽しくなる!

大事な妖怪の扱い方も確認した。「退治するみたいな設定でも大丈夫?」「全然いいよ~」と言ってくれたので、ほっ。投げるものは子どもたち自身で作った新聞紙ボール、目玉のおやじ。しんやが描いてくれた妖怪に、みんなで挑もう!と投げかけた。「しんやが描いたの?」「すごい!」。みんながしんやの妖怪に夢中になった。

授業は三つのステージを設定。楽しくなって、みんなどんどん投げる。投げ方のコツをみんなで確かめ、普段ボールで遊ばない子も、授業を抜け出すことの多い子も、たくさん投げた。

肝心のしんやは、やっぱり抵抗がある様子。でも、皆が楽しそうに投げる姿を見ながらひっそり投げた。「いいね!」と声をかけると照れくさそうに笑った。家では「オレ、体育が好きになってきた!」と話していたそうだ。(金曜掲載)