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全国自死遺児500人調査 あなたの声を
(上) 子にどう伝える?支援は? 海外・国内の現状から考える

2026年2月27日【くらし】

 子どもの頃に親やきょうだいを自殺で亡くした、あなたの声をお聞かせください―。500人を目標に、全国自死遺児調査が進められています。どんな情報が欲しかったのか。どんな支援を望んでいるのか。今苦しむ子どもたちに役立つようにと、当事者の思いを集めています。(堤由紀子)

調査を担っているのは、岡山県立大学保健福祉学部准教授の大倉高志さんと、一般社団法人リヴオン代表の尾角光美(おかく・てるみ)さん。大倉さんは14歳で父親を、尾角さんは19歳で母親を亡くしました。

社会的偏見の影響を受けて

自殺予防の研究をしようと思っていた大倉さん。遺族支援の研究が少ないと知り、遺族へのインタビューを重ねて見えてきたことがありました。

最も気になったのが、親がよかれと思って自殺だと伝えていない場合に、子どもが苦しんでいたことでした。「親戚や近所などの限られた情報から推測するしかありません。でも、死因を伝えなくても気づいていることが多い。また親が上の子どもだけに伝えると、その子も下の子に真実を伝えられなくて苦しくて、きょうだい関係にも支障をきたす。『なぜ自分だけ教えてくれなかったんだ』と親への信頼が崩れます」

遺体と対面できず、子どもが苦しみを抱え続ける例もあります。

父親が入水自殺し、警察で「若い女性は見ない方がいい」と言われ、遺体と対面できなかった当時20代の女性。遺体確認をした母親はその後、自殺未遂。「自分も遺体確認ができていれば、母親と同じ思いになれたのではと悔やんだ」と。

自殺だと伝えられず、遺体と対面もできなかった当時10代の女性。母親は列車に飛び込んで亡くなり、顔を見ないまま火葬されました。「お骨だけ拾ってもお母さんが死んだ実感がない」と振り返り、苦しみを抱えながら生きてきました。

一方で、自殺現場を目撃せず、自殺だと教えられて、遺体と対面もできた人たちは、故人との別れを比較的健全に体験している傾向がありました。

自殺だと伝えられない背景には、社会的な偏見があります。「遺族は社会的偏見の影響を受けており、死別後の行動が大きく制限されてしまう。この現状を変えていくためにも、わが国が抱える構造的な部分も明らかにしたいです」

大切にしたい「当事者中心」

尾角さんは、2009年のリヴオン立ち上げ以来、死別を経験した若者をサポートしています。

「死は、そこから立ち直るとか乗り越えていくとかいうものではないのかも」。ホームページにはこう書かれています。

大切な存在を亡くしたことで生まれる、深い悲しみや心身のさまざまな反応は「グリーフ」と呼ばれます。しかし、日本ではなかなか位置づかない。「前を向いて生きていこう」「つらいことは忘れなさい」―。そんな社会規範や価値観が大きいと尾角さんは指摘します。「乗り越えなくたって、そのことを大事に思う生き方もあると伝えたい」

メンタルヘルス教育の遅れから「自殺するぐらいなら生きろ」などという感情論があるとも。「でも、本人が正しい判断をすることができない状態なんです。そばにいる人とどうつながって支えられるか。科学的に理詰めで伝えるのが大事です」

イギリスの調査研究では、遺児支援団体の電話相談に「子どもに自殺をどう伝えたらいいか」と親からの相談がかなりありました。こうした現状をふまえ、正確な情報が提供されています。

大切にしたいのは当事者を中心にすること。イギリスの自死遺児の若者向けパンフレットは、どんなイラストが必要か、どんな表現がいいかなど、当事者にしっかり聞いて作られていました。

一方、日本では「当事者なき支援や啓発が多すぎて残念です」。尾角さんが例にあげたのが、政府広報の動画「OD(オーバードーズ)するよりSD(相談)しよう」という言葉でした。「頼る先がないと失望を深めて、この国が信用できなくなると思う」と憤ります。

この当事者重視の視点から、「真実を知るべき論」にしないよう心掛けたいとも。「伝えられなかった親を責めることになってしまうので。こうした親の声も、いつか聞いていけたらいいですね」

(つづく。(下)は3月4日付掲載予定)

●「子ども時代に自殺で親やきょうだいを亡くした私たちの声―全国自死遺児500人調査」にご協力を

参加条件は▽親やきょうだいを自殺で亡くした▽当時0~19歳▽現在18歳以上▽死別後半年以上たっている、の4点です。

調査で明らかにしたい課題は以下の通り。▽自殺の事実や死因などの望ましい伝え方▽自殺現場を見た場合に必要な支援▽遺体との望ましい対面の仕方▽情報提供と支援のあり方。

 

 

 

実施期間は来年3月まで。調査の詳細はQRコードから。

 

また、チラシの配布や配置などの協力については大倉研究室のメールアドレスt-okura@fhw.oka-pu.ac.jpまで。