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NO!主務教諭(上)
教師の“横つなぎ”阻む制度 
声上げ続ける教職員組合

2025年12月17日【くらし】

 教諭の上に若手教員のサポートや、学校内外関係者との調整役を担う「主務教諭」という“新たな職”を創設することができる―。一見役立ちそうなこの制度ですが、学校現場では「子どもたちのためにならない」と、導入させない取り組みが広がっています。(堤由紀子)

「主務教諭」は「主幹教諭」(置いていないところもある)と「教諭」の間に置くことができる職階です。8割近くいる教諭を二つに分けることで、新たな階層が生まれます(図)。公立学校教員の残業代不支給制度を温存する「改定教員給与特別措置法」(給特法、6月成立)によるものです。

早ければ来年4月からスタートしますが、導入するかどうかは各教育委員会に任されています。

違いこえて

神戸市教委は今年4月の段階で、同制度は導入しないと表明しました。

教職員組合の全教神戸は、毎年4月に教育次長と面談。同様の施策が持ち上がるたびに「『それは分断を生みますよ』と話してきました」。こう語るのは書記長の久宝(きゅうほう)一也さん。主務教諭についても「もし導入するとして、業務内容は一体何になるのか?」と問うてきました。

「働き方改革」と言いながら、大切なものが奪われていく。こうした流れに久宝さんは強い怒りを感じています。「授業だけだとしんどい。さまざまな関わりの中で子どもが成長したり、親とわかり合えたり。そんな時、教師になってよかったなと思えるんです」と。「人と人とがつながることで、人は成長します。私たちは教師の『働きがい』を取り戻します」

さらに組合の違いをこえて懇談を重ね、教委に要求を出してきたことも大切な取り組みでした。

「もちろん、思いのずれもあります。でも、よくよく話をすると歩み寄れる部分が見えてくる」と久宝さん。「しゃべればしゃべるほど、一緒にやりたいことが増えるんです。同じ現場で働いてきた仲間ですから」

県教委も…

全教千葉は年6回、県教委と交渉しています。今年度は毎回、主務教諭は導入しないよう要求項目にあげてきました。

「上下関係ができて職場を壊すからやめてほしい。給与を下げるなど絶対にしてはならない。こう訴えながら県教委の動向を注視してきた」と話すのは、書記長の浅野涼平さんです。

現場教師がほとんど知らないまま、導入されようとしていることに、浅野さんは大きな懸念を感じていました。「現場の声を吸い上げて政策をつくる、ということをしてこなかったことも、“無理解”の大きな要因です」。そこで、導入されたらどうなるかを組合の機関紙に繰り返し掲載し、周知を図りました。よりよい教育を求める全国署名の項目にも「主務教諭は導入しないこと」を入れて、署名の際に触れてきました。

県教委自身が大変になることも、組合として示しました。選考業務の負担増、年度末異動の煩雑さ、特に中学校で教科を考慮した人事事務が複雑になる…。「それでも階層が細かくなればなるほど教師同士の“横つなぎ”が短くなり、管理しやすくなるのでしょう。いろいろな人が声を上げることが本当に大事です」

新しい署名

全教は12月はじめ、新しい署名を呼びかけました。すべての教職員の処遇改善と長時間過密労働の解消を求めます。

書記長の金井裕子さんは「さまざまな団体と懇談を進めてきましたが、『教職員増は必要条件!』というスタンスは一緒です」と言います。

東京都は、主務教諭にあたる主任教諭の導入を先行させました。文部科学省は「職の階層化によって仕事の効率化が図られる」と言います。しかし全教の調査では、東京の教職員が他県よりも超過勤務になる結果となりました。

「職場で教職員が子どもについて“ああだこうだ”と語り合える関係が大事」と金井さん。若い教員の方が子どもに寄り添って、心をつかんでいることもあると。「学校は民主主義を育む場所。対等であることが大前提です」

さらに、教員の働かされ方は、労働界全体の改変の流れの中にあることを注視すべきだとも。「残業代不支給の『適用除外』は、超勤をもたらす見本のようなもの。『労働者全体の課題だ』と一緒に声を上げたいです」

※署名は全教サイトからダウンロードできます。

(つづく、(下)は19日付に掲載予定)