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- くらし家庭
- 2025.12.04
床人生 今井晶子 ①我、発見せり!
視界には入っているかもしれないけれど、目線より下を意識している方は少ないのではないでしょうか。私もそうでした。室内で、屋外で、足もとを注視することはありませんでした。
ところが、足もとが変わると何かが変わるということに気づいてしまった。そこから私の床追い人生が始まりました。下を向いて歩こうです。

ヨーロッパや近隣アジアに美しいタイル床は数あれど、私が心ひかれたのは昭和のタイルやクッションフロア。クッションフロアとは、クッション性のある塩化ビニル素材のシート状の床材です。タイル床もクッションフロアも、子どもの頃に家の中ではキッチンやお風呂場で、外では純喫茶などで見慣れていたもの。覚えのある方も多いでしょう。
意識していなかったものが、ああ、あった! そういえば!と幼少期の記憶とつながり、私にとってのエウレカ=「我(われ)、発見せり!」となったのです。
昭和の床は、まずは近辺の純喫茶で発見できました。床を撮らせてほしいとお願いすると、え? 床?と最初は驚かれるのですが、すてきな床にはやはりオーナーさんたちのこだわりが。エレガントだったりエキゾチックだったり、当時の海外への憧れを感じます。
タイルもクッションフロアも、年月がたち廃番になっていると同じもので補修することができません。創業時から何十年も愛着をもって大事に手入れされていたからこそ、今でもその輝きを見ることができます。
床から壁、天井、照明などが一体となった空間は、キラキラと輝く宝箱のように思えます。下を向いて歩くことで、今までと違う角度の世界が見えてきました。これは私にとっての宝となり、床を考え追い求める人生が始まったのです。
(グラフィックデザイナー) (火曜掲載)

