怖い映画です。その怖さはどこから来るのか。人間の顔をしていない得体の知れなさからか。異例の緊急公開が実現したドキュメンタリー映画「NAZA(ナザ)」です▼監督はイスラエル人の2人のジャーナリスト。テルアビブのビルの屋上で極秘インタビューしたイスラエル軍の兵士や諜報(ちょうほう)員24人の証言で構成しています。闇に紛れて彼らが語るのはガザでの大量虐殺を可能にした軍のシステムです▼「NAZA」とは軍事用語で付随的被害の意味。ハマス構成員と目される標的を攻撃する際、犠牲が予測される民間人の数を示します。巻き添えは織り込み済み。記号化で罪悪感を消し去ります▼標的をリストアップし追跡するのはAIシステムです。その名も「ラベンダー」「パパはどこ?」。イスラエルはガザを監視下に置き、携帯での位置情報や通話記録を傍受しています。標的が自宅に帰ったところをAIが通知し、それを合図に爆撃。7万3千人を超える犠牲者は、こうして生まれました。大半が民間人です▼食料支援を求めて配給所に向かうガザの人々を狙う狙撃手。その様子を見ていた兵士は「ゲームだった」と証言します。自分は「歯車」と言い、遠隔攻撃なので人を殺した実感もない。恐らく戦争トラウマを患うこともないのでしょう▼映画で犠牲者がわずかに映るのはラストシーンです。爆撃されたビルの廃虚から突き出た人間の足が、そこに人がいたことを“告発”しています。
2026年11月7日

