日本共産党の志位和夫議長が3日、韓国・ソウル市内で行った「21世紀における社会主義の展望--日本共産党の理論と実践」と題する公開講演は次のとおりです。
(写真)講演する志位議長=3日、ソウルの国会議員会館内
きょう、こうした形で講演の機会をつくっていただいた慶尚(キョンサン)国立大学韓国社会科学(SSK)研究所、仁川(インチョン)国立大学ポスト産業社会研究所、閔洪喆(ミン・ホンチョル)国会議員事務所のみなさん、お集まりのすべてのみなさんに、心からの感謝を申し上げます。
講演にあたって、「21世紀における社会主義の展望」という大テーマをいただきました。私は、2006年に日本共産党委員長としては初めての訪韓を行って以来、韓国を訪問するのは今回で9回目になりますが、こうしたテーマでお話をするのは、きょうが初めてです。韓国で「社会主義」を語ることに心躍る喜びを感じながら、何をどう話していいかと思案をしておりました。そうしたところ、主催者の方から具体的に、「現代資本主義の限界、社会主義の構想、自由と民主主義、社会主義への道筋、最近の党綱領改定をめぐる議論」について話してほしいとの提起がありました。こうした具体的な“宿題”の設定はとてもありがたいことです。主催者の提起にしたがって、話を進めていきたいと思います。
実は、日本共産党は、来年1月に第30回党大会を開き、そこで綱領一部改定を行うことを予定しています。10月に開催した第10回中央委員会総会で綱領一部改定案と大会決議案を発表し、党大会に向けて全党討論を進めている最中です。そこできょうは、綱領一部改定案の一番ホットな内容を紹介しながら、話を進めるようにしたいと思います。どうか最後までよろしくお願いいたします。
現代資本主義の限界について
まず「現代資本主義の限界」についてです。巨大な生産力を制御できないという資本主義の矛盾は、今日、あらゆる分野で、人類史上かつてない規模と鋭さをもってあらわれています。なかでも、つぎの三つの問題は、資本主義体制が21世紀に生き残る資格を問う問題となっています。そのことを私たちは、今回の綱領一部改定案に明記しました。
貧富の格差の拡大--一握りの巨大テック企業が富とデータと権力を握る世界でいいのか
一つは、貧富の格差の世界的規模での空前の拡大です。オックスファムの最新の報告書は、世界のビリオネアのトップ10人の富が、1人につき1日1億ドルの超スピードで増えたこと、一方、世界人口の44%を占める人々が国際貧困ライン以下の生活を強いられていることを告発しました。
こうした目もくらむばかりの貧富の格差の拡大を加速しているのが、米中を中心とするごく一握りの巨大テック企業です。アップル、マイクロソフトなど「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる七つの巨大テック企業は、AI(人工知能)を武器に急速に利益をのばし、アメリカの主要大企業500社の株式時価総額の実に33%を占めるにいたっています。
彼らが巨額の利益を吸い上げる手法はどこにあるのか。それは社会や産業の基盤を抑え、そこを通る企業やユーザーから自動的に手数料、広告費、利用料を徴収する仕組み--プラットフォームビジネスを構築していることにあります。彼らは、労働者を搾取している大企業から、搾取の上前をはねる巨額の収奪をしているだけではありません。世界の市民から直接に「カネ」と「時間」を収奪しています。発展途上国でもスマホは人々の生活必需品です。最も貧しい人々から、シリコンバレーへと強欲な収奪が行われているのです。
こうしていま、ごく一握りの巨大テック企業が、世界中から富を吸い上げ、貧富の格差を加速し、「富」と「データ」と「権力」を握っています。これが野放しにされていったら、自由と民主主義が存在する空間が窒息させられかねません。国際的な民主的規制によって、巨大テック企業に社会的責任を果たさせる大改革を行うことは急務ではないでしょうか。
気候危機--限界点を超える前に抑制することは、人類の生存がかかった急務
二つ目は、気候危機が深刻化し、世界各地で、熱波、干ばつ、集中豪雨、氷河融解などを引き起こし、人類の生存にとって深刻な脅威となっていることです。
気候変動抑制のパリ協定が目標としているのは、産業革命前に比べて地球の平均気温の上昇を1・5度以内に抑えることですが、この3年間の平均では1・52度まで上昇しています。国連環境計画(UNEP)の9月の報告書は、1・5度を一時的に超過する--オーバーシュートすることは避けられないとし、そのピークを低く抑え、低下させるための「前例のない行動」を呼びかけました。
10月の新たな報告書では、現在の政策が継続された場合には、今世紀中に気温上昇が2・8度に達すること、すべての国別温室効果ガス削減目標が達成されたとしても、2・6度に達することを明らかにしました。2・6~2・8度の上昇となった場合には、地球の気候システムの主要なティッピングポイント--不可逆的な臨界点の多くを超えてしまい、人類はコントロール不可能な領域に落ち込む危険があることが強く警告されています。
こうした事態を踏まえて、私たちは綱領一部改定案に、つぎのように明記しました。
「深刻化する気候危機を、後戻りが不可能な限界点を超える前に抑制し、地球環境を守るための国際的なとりくみを強めることは、人類の生存がかかった急務である」
AIへの対応--「大洪水よ、わが亡き後に来たれ」でいいのか
三つ目は、AIへの対応の問題です。AIは、人間の脳(知性)を代替する点で、これまでの技術の発展とは質的に異なる特徴があります。その急速な発展は、産業革命を含めて人類がこれまで経験したあらゆる技術革新を上回る、巨大な影響を与える可能性をはらんでいます。
AIが、労働時間短縮、科学の進歩など、さまざまな面で人類に大きな恩恵をもたらす技術であることはいうまでもありません。
同時に、二つの深刻なリスクが存在します。第一は、AIの資本主義的利用がもたらすリスク--雇用破壊、労働強化、環境破壊、人権侵害などのリスクです。とくに軍事、戦争への利用は絶対に許してはなりません。
第二は、より深刻なもので、資本主義の利潤第一主義のもとでのAIの無秩序な開発競争の結果、人間がAIを制御できなくなる危険です。国連の報告書では、そうなった場合には、人類に「破滅的な結果」をもたらす危険があると警告しています。専門家からは、無視できない確率で「人類絶滅」が起こる可能性があることが警告されています。
こうした危険が警告されているにもかかわらず、開発競争は止まりません。9月末、アメリカのAI主要6社とトランプ政権が、AIの自主規制で合意しました。しかしそれは、AI開発を企業の自主管理にゆだねる内容となっており、開発競争そのものにはブレーキをかけない枠組みとなっています。「人類絶滅」の危険があると警告されながら、資本の利益を上に置いて、開発競争を続ける。この資本の行動は、マルクスが『資本論』で告発した、「大洪水よ、わが亡き後に来たれ!」--そのままではありませんか。
私たちは、綱領一部改定案に、次のように明記しました。
「AIを巨大企業が利用するもとで生まれている雇用、労働、環境、人権などへの害悪をただし、軍事への利用をやめさせ、人類がAIを制御できなくなる破滅的な危険を回避し、技術的発展の恩恵をすべての人びとのものにするための社会的ルールを国際協調でつくることは緊急の課題となっている」
貧富の格差の拡大、気候危機、AI--三つの問題は、資本主義というシステムに人類の未来をゆだねていいのかという問いを、深刻な形で突き付けています。いま世界的規模で、「マルクス・ブーム」が起こっています。それは、資本主義に代わる社会システムの可能性を、マルクスの思想と理論のなかに見いだそうというものにほかなりません。
「社会主義の構想」について--「人間の自由」が開花する社会
そこでつぎのテーマ--「社会主義の構想」について--に進みます。
私たちが今回の綱領一部改定にあたって、これまでの綱領の叙述を抜本的にあらためる全体的な改定を行ったのは、資本主義に代わるより高度な社会形態--社会主義・共産主義の社会の問題でした。
この問題で、私たちがとった方法は、たいへんにシンプルなものです。それは、マルクスの『資本論』『資本論草稿』『ゴータ綱領批判』をはじめとする原典に徹底的に依拠し、「マルクスの未来社会論の中心点、その輝きの核心部分を、党綱領の規定にすえる」ということです。また、ソ連流の社会主義論のあらゆるドグマに批判的なメスを入れ、それを全面的に清算するということです。
「人間の自由」の全面的開花を、最大の特徴・目的として押し出した
まず綱領一部改定案では、未来社会論の冒頭に、「社会主義・共産主義の社会の最大の特徴・目的は、人間の自由をあらゆる意味で豊かに保障し開花させることにある」という命題を正面から押し出しました。
マルクス、エンゲルスは、未来社会を語るときに、いく度となく、「自由」という言葉を強調しました。『共産党宣言』は、未来社会の特徴を、「各人の自由な発展が、万人の自由な発展の条件である連合体(アソシエーション)」とのべています。『資本論』には、「共同的生産手段で労働し自分たちの多くの個人的労働力を自覚的に一つの社会的労働力として支出する自由な人々の連合体」という特徴づけが出てきます。さらに「各個人の完全で自由な発展を基本原理とするより高度な社会形態」という特徴づけがされています。
「人間の自由」こそ、マルクス、エンゲルスが、社会主義・共産主義の社会の最大の特徴・目的としたことであり、綱領一部改定案にはそのことを冒頭に明記しました。
第一の角度--資本主義の特徴である利潤第一主義からの自由
それでは「人間の自由」といった場合、その「自由」の中身をどう規定すべきか。綱領一部改定案では、二つの角度からそれを明確にしました。
第一の角度は、「資本主義の特徴である利潤第一主義からの自由」ということです。さきほど「現代資本主義の限界」を、貧富の格差の拡大、気候危機、AIのリスク--三つの問題で見てきました。どの問題も矛盾と危機の根源にあるのは、利潤第一主義です。すなわち、資本のもうけを増やすことへの限りない衝動が、生産の動機となり目的となっていることです。マルクスは『資本論』で、「資本の魂」をつぎのように喝破しました。
“資本にはただ一つの衝動があるだけである。それは労働者をできるだけ働かせて、できるだけもうけを大きくして自分の資本を大きくする衝動だ。これが「資本の魂」であり、吸血鬼のように、労働者から「生きた労働」を吸い出せば吸い出すほど、元気になり、力も強くなっていくのが資本である”
社会主義・共産主義の社会は、こうした「資本の魂」--「吸血鬼」から自由になる社会です。綱領一部改定案では、そのことを、第一に、搾取からの自由、貧困と格差からの自由、労働の人間性の回復という側面と、第二に、経済の計画的な運営が可能になることによる不況、恐慌、環境破壊からの自由という側面--二つの側面からのべています。「~からの自由」--資本主義がもたらすさまざまな害悪から自由になるという意味では、ここでのべている自由は消極的自由といえます。同時に、どれもが人民がみずからを解放するためのたたかいによってかちとるべき自由だということを強調しなければなりません。
「生産手段の社会化」を「人間の自由」を実現する条件・手段として位置づけた
それではどうしたら「利潤第一主義からの自由」を実現することができるか。生産の動機と目的そのものを変える社会変革が必要になってきます。それが「生産手段の社会化」--生産手段を個々の資本家の手から社会全体に移す変革です。そのことによって、生産の動機と目的が大きく変わります。「資本の自己増殖」から「人間と社会の発展」へと変わります。こうして人間は、利潤第一主義から自由になります。
私たちが、今回の綱領一部改定案にあたって理論的に整理したのは、「人間の自由」と「生産手段の社会化」との関係でした。現綱領は、「生産手段の社会化」を中心に、未来社会における社会と人間の変化を論ずるという理論構成になっています。しかしそうしますと、どうしても「人間の自由」という中心問題が影に隠れてしまうということになってしまいます。そこを抜本的にあらためて、「人間の自由」を中心にすえ、「生産手段の社会化」は「人間の自由」を実現するための「条件であり手段」であるとの位置づけを明確にしました。
綱領一部改定案についての提案報告では、「生産手段の社会化」を「人間の自由」を実現するための「条件であり手段」であるとする立場は、マルクスその人のものであったことを、彼が最晩年の1880年に作成した『フランス労働党の綱領前文』、『資本論』第三部の未来社会論のまとまった叙述などから、詳細に明らかにしました。
「生産手段の社会化」をそのように位置づけたことは、綱領の未来社会論の理論構成を、「人間の自由」を前面にするものへと、ガラリと変えることになりました。
第二の角度--「各個人の自由で全面的な発展」
綱領一部改定案が、「人間の自由」の第二の角度として位置づけたのが、「各個人の自由で全面的な発展」です。人間は誰でも、自身のなかにさまざまな可能性をもっています。しかし、資本主義のもとでは、自身の可能性を存分に生かすことのできる人間は一部に限られます。どうしたらすべての人間が、自身のなかに存在する可能性を自由にのばし、解放し、全面的に発展できるようになるか。これは、マルクス、エンゲルスが終生にわたって探究を続けた大テーマでした。
マルクス、エンゲルスが、若い時期の『ドイツ・イデオロギー』(1845~46年)で強調したのは、人間を固定的な分業から解放することでした。この構想は、『資本論草稿』と『資本論』での理論的発展を経て、1875年の『ゴータ綱領批判』での「分業の下への諸個人の奴隷的な従属」「精神労働と肉体労働の対立」からの解放などというテーゼに実を結ぶことになります。
マルクスが、人間解放の決定的なカギとして一貫して探究していったのが、「自由に処分できる時間」という考えでした。彼は、経済学の本格的な研究を開始した1851年7月ごろ、大英博物館で、一冊の匿名のパンフレットに出会います。筆者はのちに、文芸評論家のチャールズ・ウェントワース・ディルクであることが、日本人の研究者によって明らかにされます。そこには、「富とは自由に処分できる時間のことなのであって、それ以外のなにものでもない」と書かれていました。マルクスは、この一節に強い感銘をうけ、「ロンドン・ノート」のなかに詳細な抜粋を書きつけました。
彼は、1857~63年にかけて執筆した『資本論草稿』のなかで、この抜粋に繰り返し立ち返り、「自由に処分できる時間」という考えを、自身の未来社会論の根本にすえていきます。『資本論草稿』をこの角度から読んでいきますと、「社会の発展は、時間の節約にかかっている」、「資本家は自由な時間、すなわち文明を、横領する」、「自由に処分できる時間は、自由な発展の場を与える」などの珠玉のような言葉に出会うことができます。
こうした考察の中で、マルクスは、資本主義的搾取によって奪われているのは、「モノ」や「カネ」だけではない、本来、人々がもつことができる「自由に処分できる時間」--労働者の知的・精神的発展の可能性が奪われていることを明らかにしていきます。そして彼は、資本主義的搾取をなくすことによって、万人が十分な「自由な時間」--「自由に処分できる時間」をもつことにこそ、各個人が自由で全面的に発展していくための最大の保障があることを突き止めていきました。こうしたマルクスの考察は、『資本論』第三部の第48章「三位一体的定式」のなかに書き込まれた「必然性の国」--「物質的生産の領域」のうえに築かれた「真の自由の国」--「自由に処分できる時間」という未来社会論のまとまった叙述へと結実していきました。
綱領一部改定案では、このことをつぎのような表現にまとめました。
「社会主義・共産主義の社会は、各個人の自由で全面的な発展を基本原理とする社会である。その保障となるのは、労働時間が抜本的に短縮され、すべての人間が十分な自由な時間をもつことである。自由な時間を使って、すべての人間がその能力をのびのびと発展させ、それが社会の発展につながる好循環が生まれる。ここにこそ社会主義・共産主義の社会の真の自由の輝きがある。生産手段の社会化は、搾取を廃止し、資本主義に特有の社会的浪費をなくすことによって、労働時間を抜本的に短縮する条件となる」
ここでのべている自由は、自分のもっている可能性を自分の意志で自由に実現するという意味では、積極的自由といえます。マルクスは『資本論』の叙述のなかで、「真の自由の国」における「人間の力の発達」について、「それ自体が目的とされる人間の力の発達」と表現しています。すなわち、「各個人の自由で全面的な発展」は、「それ自体が目的」なのであって、それ以外の外的な目的をもたないということです。すなわち「人間の発展」というのは、「あれこれ」のため、「社会のため」とか、ましてや「国家のため」のものではありません。「それ自体が目的」であり、そこに究極の価値を見いだす社会が、社会主義・共産主義の社会にほかなりません。こうした点において、マルクスの未来社会論は、人間の発展、人間の尊厳を何よりも大切にする「人間賛歌」の理論といえるのではないでしょうか。
旧ソ連流の社会主義論を全面的に清算した歴史的意義
この問題の最後に強調しておきたいのは、私たちの未来社会論の発展が、旧ソ連流の社会主義論の全面的な清算と一体のものであるということです。
旧ソ連流の社会主義論の最大の理論的誤謬(ごびゅう)は、マルクスの未来社会論を、もっぱら「物質的生産の領域」--「必然性の国」だけでとらえ、物質的な富があふれるように拡大することを最大の目標とする議論に落ち込んだことにありました。それは人類の未来史からその最も輝かしい部分--「真の自由の国」を切り捨てる、きわめて重大な誤りでした。そしてそれは、旧ソ連において社会主義とは無縁の人間抑圧の体制がつくられ、崩壊にいたったことと決して無縁ではありません。綱領一部改定案は、旧ソ連流の社会主義論を全面的に清算し、それと根本的に決別する意義をもつものとなったと考えます。
私たちの綱領は、旧ソ連のような専制主義、統制経済、国家による特定の世界観の押し付けをきっぱり否定し、資本主義のもとでつくりだされた「自由と民主主義の諸制度」などを、「継承し発展させる」ことを高らかにうたっていますが、それは「人間の自由」の全面的開花を「最大の特徴・目標」にすえた未来社会論と一体不可分のものです。
そして日本共産党が、今日、こうした未来社会論の発展をかちとることができたのは、相手がソ連であれ、中国・毛沢東派であれ、どんな大国であっても、無法な干渉を断固としてはねのけ、日本の運動の進路は自分自身で決めるという自主独立の路線を貫き、この路線のうえに科学的社会主義の理論の刷新と発展のために力をつくしてきた、歴史的なたたかいがあったことをお伝えしたいと思います。
「社会主義への道筋」について--段階的発展と多数者革命の立場で
日本の政治の「二つのゆがみ」をただす民主主義革命にとりくむ
最後に「社会主義への道筋」についてお話ししたいと思います。
わが党の綱領は、社会の段階的発展と多数者革命という立場に立っています。すなわち、社会というのは、その時どきの直面する矛盾を解決しながら、一歩一歩、階段を上がるように段階的に発展していく、そして、この階段のどの一段も、選挙で示された国民多数の意思にもとづいて上がっていく--これがわが党綱領の立場です。
こうした立場から私たちの綱領は、現在、日本社会が必要としている変革は、異常なアメリカ言いなり、財界・大企業中心という「二つのゆがみ」をただし、国民が名実ともに主人公になる新しい日本をつくる民主主義革命であると規定しています。
アメリカ言いなりという点で、日本は、世界のなかでも異常なゆがみを抱えています。沖縄をはじめ日本全土に米軍基地がはりめぐらされ、在日米軍には、日本の国内法が適用されず、警察権も及ばないなど、日米地位協定のもとで異常な治外法権的特権が与えられています。綱領一部改定案では、日米地位協定の抜本的見直し、安保法制など海外派兵立法の廃止、軍国主義の全面的復活の阻止、憲法9条擁護を太く打ち出しました。綱領一部改定案の提案報告では、国民多数の合意で、日米安保条約を廃棄し、対等・平等・友好の日米関係に転換させるための独自のとりくみの強化を呼びかけました。
財界・大企業中心という点で、日本は、欧州などに比べても国民の暮らしと権利を守る社会的ルールが弱いという構造的弱点を抱えています。欧州にくらべて労働時間は年間300時間も長く、過労死が絶えない、最低賃金が欧州の半分の水準に抑えられていることなどは、その象徴です。それにくわえて、この間、新自由主義とよばれる弱肉強食と自己責任を押し付ける経済政策が強引に進められてきたことが、国民生活と日本経済の長期にわたる停滞・悪化を引き起こしています。綱領一部改定案は、こうした現状に批判的分析をくわえるとともに、経済の民主的改革の内容を充実させ、深刻な行き詰まりを打開する包括的な民主的対案を発展させました。
綱領一部改定案で、「性と生殖に関する健康と権利」(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ=SRHR)を保障すること、「国の責任でケア労働者の待遇改善をはかる」ことなど、現代日本が直面している新しい課題を明記したことにも、積極的な歓迎の声が寄せられています。
国民の苦難を軽減する日常闘争にとりくみながら、国民多数の合意で民主主義革命の階段を上り、この仕事をやりぬいたのちに、これも国民多数の合意で社会主義的変革の道に進む。これが私たちのプログラムです。
未来社会の魅力を語るとりくみ、国際連帯と国際的な理論交流について
ただ、だからといって、未来社会の魅力を語るのは将来の話ということではありません。日本国民は、異常なアメリカ言いなり、財界・大企業中心の政治に苦しめられているだけでなく、日々の生活と労働のなかで、また世界の激動のなかで、資本主義体制そのものの矛盾を体験しています。そうしたもとで、私たちは、直面する民主的改革のための多数派を結集する仕事にとりくみつつ、未来社会の魅力を大いに語り、対話を広げることを、大方針にしています。全国の党支部の半数以上、8500の党支部で『資本論』の学習運動が開始されています。日本でも「マルクス・ブーム」を起こすという大志をもった活動に、新たな決意でとりくんでいるところです。
深刻な資本主義の矛盾が地球的規模で噴き出しているいま、また、「グローバル化」の名で資本主義的搾取と収奪のネットワークが地球的規模で張りめぐらされているいま、社会主義をめざす運動の側も国際連帯が必要だと思います。最初に社会主義の道に踏み出すのは一つの国であっても、それが世界的規模の流れとなってこそ、社会主義・共産主義の社会は現実のものとなるという展望をもつことができるのではないでしょうか。私は、昨年、欧州各国を歴訪し、今年はアメリカ・カナダを歴訪し、左翼・進歩勢力との連帯を強めるとともに、マルクス主義の理論交流にもとりくんできました。このとりくみをもっと強めていきたいと決意しています。きょうのこの素晴らしい企画が、韓国のみなさんとの新しい交流と連帯の一歩となることを心から願って、発言の結びといたします。

