60年前の1966年11月1日、国立劇場が東京都千代田区に開場しました。同日、祝賀公演として「翁千歳三番叟(おきなせんざいさんばそう)」が披露され、続いて大劇場では6日から歌舞伎「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」が通し上演されました。小劇場では3日から日本舞踊、続いて雅楽、声明(しょうみょう)、邦楽、文楽、狂言の公演が行われました。まさしく日本の伝統芸能の殿堂にふさわしい幕開けでした。
国立劇場が2023年10月末、老朽化による全面建て替えを理由に閉場してから3年が過ぎました。当初は29年度の再開場をめざして建て替える予定でした。しかし、2回の入札が資材高騰や人手不足で不調に終わり、再開場の見通しは立っていません。
■計画が後ろ倒しに
もともと国立劇場は、開場から半世紀を経て、大規模改修を計画していました。ところが20年、政府の「国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム」がPFI(民間資金活用による社会資本整備)方式による全面建て替えに方針を変更しました。ホテルやレストランを併設し、その事業者から劇場を運営する日本芸術文化振興会(芸文振)が賃料を得る計画です。
第2次安倍晋三内閣以降強められた「稼ぐ文化」の名で国立文化施設に収益性追求を強いる方針の一環でした。入札の不調は自民党政権の路線の破綻にほかなりません。
政府・文化庁は25年9月、再整備計画を見直し、再開場を4年先延ばして33年度をめざすと発表しました。さらに芸文振は25年12月、建て替えられた施設の引き渡し時期を「36年3月頃を期限として事業者側に委ねる」と発表しました。そうなれば最長約12年半も閉場することになります。その期限さえ守られるのか、不安が広がっています。
芸文振は今年3月末、ホテルなどの設置という必須条件を変更し、3度目の入札公告を行いました。しかし、今なお「舞台付きレストラン(仮称)」設置をうたうなど「稼ぐ文化」に固執しています。
■伝統芸能の灯守れ
この間、国立劇場主催の歌舞伎や文楽の公演は、都内の劇場を転々としながら続けられています。花道など専用設備のない劇場では本来の舞台の魅力を伝えるにも制約があります。25年度、国立劇場主催公演の観客数は、閉場前と比べて、歌舞伎で4割、文楽で6割に減少しています。
国立劇場を公演に使ってきた劇団や伝統芸能団体も代替会場の確保に苦労し、割高な使用料にあえいでいます。
さらに懸念されるのは、空白期間の長期化によって実演者や裏方の後継者養成が困難になることです。それでは日本の伝統芸能を衰退させることにしかなりません。
日本共産党の吉良よし子参院議員は「再開場するまでの間、劇団や公演関係者が存続し続けられるよう支援が必要だ」と強く求めました(4月2日、参院文教科学委員会)。
高市早苗内閣は「骨太方針2026」で「33年度再開場にむけた国の責任による国立劇場再整備を行う」としています。だとすればPFI方式を見直し、予算の抜本増額などの手だてを講じて一刻も早い再開場をはかるべきです。

