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2026年10月31日

主張

「声の権利」の保護
実演家の尊厳を守る法改正を

 生成AI技術の急速な発展に伴って、「声の権利」が大きな問題になっています。

 AIを使って芸能人の肖像や声を無断生成した画像や動画が昨年6月から2カ月間で4万件を超え、芸能人らが受ける損失は20億~45億円に上るという試算も発表されています(肖像パブリシティ擁護監視機構調査、6月)。

 声優をはじめとした実演家、アニメーターなどが「NO MORE 無断生成AI」のとりくみなど社会的にもアピールし、「声の権利」を守る運動を精力的にすすめてきました。

 こうした当事者のたたかいも背景に、法務省の有識者検討会は8月、「生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針」を発表し、「声」も「パブリシティ権の対象となる」と取りまとめました。

■損害賠償が可能に

 パブリシティー権は「商品販売等を促進する顧客吸収力を排他的に利用する権利」とされます。著名人の商業的価値を守るもので、これまで名前や肖像は保護対象とされていましたが、「声」は対象ではありませんでした。

 国の指針に明記されたことにより、無断使用など権利が侵害された場合に損害賠償請求ができるようになります。

 さらに、自身の声を許諾なしに模倣した動画をSNSに投稿された人気声優の津田健次郎さんが権利侵害を訴えた裁判で、東京地裁は9月30日、声優のパブリシティー権侵害だと判断しました。裁判で「声」も対象に含まれるとの判断が示されたことは画期的です。

 そもそも、芸術家など著作権者の権利を守る著作権法では、映画やアニメ、音楽などの「作品」は保護の対象ですが、「声」については表現手段として位置づけられ、保護対象ではありません。

 作品の重要な伝達者である声優など実演家の著作権法上の権利は著作隣接権とされ、基本的には報酬請求権で、利用を差し止めるような強い権利ではありません。

 実演家の権利を守る著作権法の改正や、人権を守る実効性のあるAI規制法の制定が必要です。

■当事者の声を聞け

 10月15日に声優・俳優の協同組合「日本俳優連合」(日俳連)が「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を発表しました。

 そこでは「私たち実演家にとって、声は単なる音声データではありません。声には、その人の人格や個性、長年培ってきた表現技術、そして作品を通じて育まれてきた文化的価値が宿っています」と述べています。

 ガイドラインは国際俳優連盟の「AIの乱用から実演家を保護する決議」で提唱された保護三大規範「個別具体的な同意」「透明性」「公正な対価」も紹介しています。

 前述の法務省の「解釈指針」で「声の権利」を守る一歩が踏み出されたところです。政府・文化庁は、日俳連の「ガイドライン」や国際俳優連盟の決議などを尊重して、より実演家が尊厳をもって活動できるように、法改正などの検討を急ぐことが求められます。