ボディーラインを強調するスーツでさっそうと歩く。そんな華やかなバブル時代の陰で、女性たちは性暴力とハラスメントに泣いていました。綾瀬はるかさん主演の「ファーストボイス」は日本初の「セクハラ裁判」を下敷きにした映画です▼1989年の福岡セクシュアル・ハラスメント裁判。上司による性的な流言飛語のために原告は退職に追い込まれます▼性的な「冗談」や、女性の胸などにさわるハラスメントが常態化していた時代。性に関するうわさは受忍の限度内とされ、名誉毀損(きそん)では負ける可能性が高い―。そう考えた原告代理人の辻本育子さんは、憲法で保障された「性による差別を受けない権利」の侵害を訴えようとします▼法廷では、被告側の証人が卑猥(ひわい)な言葉を並べて侮辱的な虚偽の証言を行い、週刊誌は被告側のコメントを元に記事を書きたてました。声を上げた女性をメディアがたたく。それは今も▼原告の背後には、多くの声を上げられない女性たちがいました。“原告A子は私”とする支援者たちと弁護団が裁判を支えます▼「未来のために、たたかい抜いて勝ちましょう」。映画では支援者たちが分断を乗り越える場面が印象的に。自身のハラスメント被害を告発したことがある20代の女性はこう語ります。「いまは『コンプラ』『セクハラはだめ』と言われます。私たちは『ファーストボイス』の上に立っているんですね」。そのたたかいを、引き継ぎたいと。
2026年10月29日

