自民党が新たに示した衆院議員定数(465)を比例代表のみ31削減する案は、民意を切り捨て、国会の行政監視を弱めるだけで、削減には道理も根拠もありません。
人口減少理由に
国際的・歴史的に最低・最少
(写真)記者会見する「議員定数削減反対!緊急アクション」の呼びかけ人各氏=9月15日、参院議員会館
自民党は、衆院議員定数31削減の理由に人口減少を挙げています。2015年の人口と30年の推計人口を比べ、6・7%減少するとの数字をもとに削減数31を算出したとしています。
しかし、15年を起点として人口動態にあわせて議員数を決める道理はありません。1925年の男子普通選挙時に衆院議員定数は466でした。現在の人口は当時の2倍になっています。人口動態にあわせて議員数を決めるというなら、定数は900を超えていてもおかしくありません。
衆院議員定数は、1986年に512となりましたが、その後は人口が増えても定数は減り続け、現在の定数465は過去100年で最も少ない状態です。15年と30年の人口を比較して定数を削減するなど理屈にあいません。
国際的にみても日本の国会議員数は少ないのが実態です。主要国では人口11万~15万人に下院議員1人なのに対し、日本は人口27万人に衆院議員1人です。
日本の衆院議員定数は人口100万人あたり3・7で、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中36番目という最低水準です。(グラフ)
国会議論の到達点からみても定数削減に道理はありません。
現行定数になった2016年当時、衆院議長のもとに置かれた有識者調査会は「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出(みいだ)し難い」と答申しました。法案審議では自民党議員も「国民の声を代弁する貴重な議席は国会議員のものではなく国民のものだ」と発言。「定数削減に合理的根拠は存在しない」ことを与野党が共有しています。定数削減は、この国会議論の到達点を根底から覆すものです。
比例だけを削る
民意をゆがめ虚構の多数
現行の小選挙区289、比例代表176の衆院議員定数のうち、比例のみ31削減する道理もありません。
自民党の鈴木馨祐議員は削減案を示した22日の政党間協議後、記者団に「地方の人口減少を考えると、小選挙区で削減すると地方の声が政治、国会に届かなくなることになりかねないので、比例で削減をせざるを得ない」などと述べました。
「地方の声が届かなくなる」というのであれば、定数を削減しなければいいだけです。比例のみを削減する説明にはなりません。衆院選挙制度協議会(5月)に出席した地方団体からも「定数削減は地方の切り捨てになる」など、定数削減自体に反対や懸念を示す声が相次ぎました。議員定数を減らせば、地方の議席は減り、若者や女性、マイノリティーの政治進出も妨げられます。
現行の小選挙区比例代表並立制は1996年の衆院選から導入されました。小選挙区は、選挙区内で最大得票を得た1人しか当選できず、議席に反映されない多くの「死票」を生み出します。民意を切り捨て、ゆがめる深刻な弊害があるため、政党の得票数に応じて議席を反映する比例代表と組み合わせた制度となりました。
自民・鈴木氏は、小選挙区制で「民意を集約」し、比例代表で「民意を反映」してきたなどとして「組み合わせのバランスが著しく変わってしまうことは望ましくない」と主張。そのため定数削減とあわせて、比例の議席配分方式を現行のドント式から、中小政党に議席が反映されやすい修正サンラグ式への変更を提案したと述べました。
しかし、自民党が協議の場に示した、修正サンラグ式にした場合の各党議席配分の試算によると、与党の比例議席は減りますが、総議席占有率は現行よりも高まっています。2月の衆院選の得票にあてはめると自民の総議席占有率は現行で70・97%ですが、修正サンラグ式で比例定数を31削減した場合は71・43%になります。同じく維新は同7・10%から7・37%でした。
現行制度導入時に小選挙区300、比例200だった定数は、この間の定数削減により小選挙区で11議席、比例では24議席も減らされてきました。2月の衆院選で自民は小選挙区で49・2%の得票で86・2%の議席を得ており、民意をゆがめる弊害は深刻さを増しています。
政党間協議で日本共産党の塩川鉄也議員は、民意反映のためとされた比例の議席をさらに31も削減すれば、ますます小選挙区中心の選挙制度となると指摘。「民意をゆがめ、虚構の多数をつくりだし、強権政治を加速させる」として、定数削減に断固反対を表明しました。
ドント式とサンラグ式
現行のドント式は、各政党の比例総得票数を1、2、3、4…と順に自然数で割り、算出された数値を大きい順に並べ、議席を配分する方式です。
サンラグ式は、各党の総得票数を1、3、5、7…の奇数で割るという違いがあります。ドント式よりも二つ目以降の計算で算出される数値が小さくなるため、中小政党に有利だとされます。今回提案された修正サンラグ式では、最初の奇数(1)を1.4に置き換えます。

