どうしても捨てきれなかった夢を実現するため、大リーグに行くことを表明してから24年。あの時の悲壮感漂う表情とは打って変わった笑顔でした。「自分のふるさとに戻ってきたつもりです」▼日米のプロ野球で活躍した松井秀喜さんが巨人の新監督に就任しました。会見で注目したのは、指導者の経験がほぼないことを自覚して「選手とともに伴走し、一緒に成長していきたい」と語ったことです▼現役引退後に所属していたヤンキースで若手選手の指導や育成に携わり、巨人のキャンプでも臨時コーチを務めた経験はあります。しかし、今度はチームの勝敗と全体のレベルアップにかかわる立場。責任も格段に重く▼松井さんといえばいつも思い出すのが、高校野球・甲子園大会での5打席連続敬遠です。全国の強豪が力を競い合う晴れ舞台で一度もバットを振れなかった悔しさ。それは、その後の野球人生にも心に巣くったしこりのように▼監督からの指示で挑戦する機会を奪われた投手もあの連続敬遠がつねにつきまとってきたと。高校野球とは、スポーツとは、指導者とは。根本から見直す出来事の当事者が、どんな指導者像を描くのか▼少なくなったとはいえ、日本のプロ野球やスポーツ界にはいまも上意下達の教えが根強く残っています。選手自身が成長できる環境をつくっていきたいと強調した新監督。選手の伴走者としてグラウンドに新たな息吹をふきこむことを期待したい。
2026年10月25日

