辞任で問題の幕引きをはかることは許されません。政治家によって行政の公平性がゆがめられた疑惑をきちんと検証し、利益誘導政治をただすことが必要です。
簗(やな)和生農水相が事実上、更迭されました。自身を選挙で支持しなかった首長の自治体の道路予算を「大幅にカットした」と発言したことに加え、公職選挙法に違反する利益供与の疑いも新たに浮上したことで辞任に追い込まれた格好です。
■拭えぬ国民の不信
とりわけ高市早苗首相の任命責任は重大です。
高市首相は当初、「とにかく働いて仕事で返せといっている」(8日の衆院本会議)と更迭を拒否し、かばい続けてきました。
批判の高まりを受け、「本当にダサい」「軽はずみだ」(13日の衆院予算委員会)と答弁しましたが、問題を矮小化(わいしょうか)しています。
簗氏は「予算カット」発言について「他の支部の集まりでも、そうした話をしたのは事実だ」と認めています。簗氏が有権者を恫喝(どうかつ)し、利益誘導したことは明らかです。
しかし、高市首相が問題にしたのは「(簗氏が)何もやっていないのに地元で自分を大きく見せようとした」ということだけ。政治・行政の公平性を揺るがしたことについては何ら批判も反省もしていません。これでは国民の不信は拭えません。
道路予算への影響が本当になかったのかも、引き続き検証する必要があります。
簗氏は、予算配分決定前の2月に、栃木県の那須烏山市と那珂川町の2市町の道路予算について、国土交通省に問い合わせをしていました。実際に、2市町に配分された道路予算は前年度比で大幅に減額されています。簗氏の働きかけがなかったかは大きな焦点です。
簗氏は、問い合わせたことを認めながら、「減額を求めた事実は一切ない」と主張しています。しかし、国交省は、簗氏から問い合わせを受けた際のメモや記録はないとしており、簗氏の主張を裏付ける証拠はありません。
本当に記録はないのか。国交省の説明が事実なら、記録を作らなかった理由や予算配分への影響を否定する根拠をどう説明するのか。疑問に答える責任があります。
■利益誘導にメスを
簗氏に限らず、与党議員が献金や集票の見返りに特定の業界や団体、地域への予算配分に“口利き”を行い、政治的な圧力を加えてきた疑いについても、きちんとした検証を行い、ただす必要があります。
高市首相は「改めて適切な予算配分を徹底させる」というだけで、全府省庁調査もしようとしません。しかし、問われているのは政治・行政の公平性への信頼です。高市首相が問題発覚後も簗氏をかばい続けたことで、高市政権のもとでは、政治的な影響力で予算が左右されかねないとの懸念が広がっています。
簗氏の辞任は当然です。しかし、梁氏の発言の背景にある自民党の利益誘導政治そのものにまでメスをいれなければ、問題の根本解決をはかることはできません。

