(写真)綱領一部改定案の報告をする志位和夫議長=12日、党本部
日本共産党の志位和夫議長は12日、第10回中央委員会総会で、提案報告の冒頭、2004年の全面的改定、20年の一部改定を経た現綱領が、「今日の世界と日本の進路を照らす羅針盤として、全体として大きな生命力を発揮している」と強調。同時に、情勢の発展、党の認識の発展にそくして改定が必要となっている部分があると述べました。
綱領一部改定案の基本的な考え方
綱領の一部改定案を提案する直接の契機は、第5章「社会主義・共産主義の社会をめざして」について全体的な改定が必要になったことです。志位氏は、04年の改定は「未来社会論も一新するものとなった」とし、(1)「国際的な定説」とされてきた生産物の分配の仕方―「労働におうじて」の分配から、「必要におうじて」の分配への変化によって未来社会の発展段階を区分する理論を乗り越えた(2)「労働時間の抜本的な短縮」によって「社会のすべての構成員の人間的発達を保障」するという、マルクスの未来社会論の最大の核心部分に光を当てた―という点で画期的な意義を持つものとなったと強調。同時に、「その後の22年間の党の理論的探究と実践を踏まえて、綱領の規定をさらに発展させることが必要になっている」と述べました。
その上で、党が、24年の第29回党大会では「人間の自由」の全面的な開花を中心にすえて社会主義・共産主義論の大きな発展を行い、その後、大会決定に基づいて理論的探究・実践にとりくんできたと強調。そのことを踏まえ、改定案は第5章で、「社会主義・共産主義の社会の最大の特徴・目的は、人間の自由をあらゆる意味で豊かに保障し開花させることにある」という命題を正面から押し出し、党の未来社会論の全体的な改定に取り組むと述べました。資本主義社会から社会主義・共産主義社会への変革の過程―過渡期についても必要な補強・整理を行うと説明しました。
第1~4章についても、情勢の進展にともなって修正・補強が必要な問題、新たに綱領上の課題として明記すべき問題が出てきており、必要不可欠な問題について改定を行うと語りました。20年の一部改定のように対象範囲を限定することなく、綱領全体を「現時点で考え得る最良の記述」のものに発展させる立場で作業を行ったと強調しました。
第1章「戦前の日本社会と日本共産党」
第1章「戦前の日本社会と日本共産党」は、(1)侵略戦争と植民地支配の起点を明確にする補強(2)家父長制のもと差別と無権利状態におかれた女性解放のためのたたかいを補強―の2点にしぼって改定を行います。
志位氏は、改定案では、1894~95年の日清戦争、1904~05年の日露戦争という二つの戦争を起点として、「50年戦争」ともいうべき連続した戦争を明確に告発したと説明。過去の侵略や植民地支配を美化し、歴史を偽造するさまざまな逆流が台頭するもとで、重要な今日的意義を持つと強調しました。
また、日本共産党が家父長制のもと差別と無権利状態におかれていた「女性の解放」のためにたたかい、創立当初から女性の人権と尊厳を大切にするために活動してきた政党であったことを紹介し、改定案に込めた思いを語りました。
第2章「現在の日本社会の特質」
(写真)綱領一部改定案の報告をする志位和夫議長=12日、党本部
第2章「現在の日本社会の特質」は、2004年の改定後の情勢の変化にそくして、部分的な修正・補強を行います。
第4節では、戦後日本に起こった情勢の変化に関わって、「形を変えて天皇制の存続を認めた」との記述を削除。第5節では、異常な対米従属が深刻になるもと、日米地位協定と、自衛隊の米軍の指揮統制下への組み込みの問題を補強します。
日本独占資本主義の現状を規定した第6節では、この20年余の情勢の進展を踏まえ、「新自由主義の強行と深刻な行き詰まり」と「軍国主義の全面的復活の危険」を明記します。
志位氏は、「改定案が端的に明らかにした日本独占資本主義の深刻な行き詰まりは、財界・大企業中心の政治が持続可能なものとはいえなくなっていること、国民の暮らし最優先の政治への根本からの転換が強く求められていることを示すものとなっている」と強調。また、「憲法9条改定と軍国主義の全面的復活を許さないために断固たたかうという“党の闘争宣言”という意味を込めた」と訴えました。
第3章「二一世紀の世界」
第3章「二一世紀の世界」は、20年の一部改定で全体的な改定を行った章であり、今回の改定案では、ごく部分的な修正・補強を行います。
第11節では、国際連帯の課題として、この間の情勢の進展を踏まえ、重視して位置づけるべき三つの点として、(1)排外主義に反対する闘争(2)深刻化する気候危機を抑制する国際的なとりくみの強化(3)AI(人工知能)に対する対応―を補強しました。
この中で志位氏は、AIがもたらす「二つの深刻なリスク」として、(1)AIの資本主義的利用(2)人間がAIを制御できなくなる危険―を告発。「『二つの深刻なリスク』は、現代資本主義がつくりだした深刻な矛盾の一つとして位置づけるべきだ」と強調し、改定案では独立したパラグラフを設けてこの問題を位置づけると説明しました。
用語の問題として「民族の自決(権)」を「人民の自決(権)」に改めます。
第4章「民主主義革命と民主連合政府」
第4章「民主主義革命と民主連合政府」は、情勢変化にそくして、「現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」について、部分的な修正・補強を行います。第2章の修正・補強とも対応する内容となるように仕上げます。
〔国の独立・安全保障・外交の分野〕では、日米安保条約を廃棄するという大目標を揺るがずに追求しつつ、廃棄前でも実現すべき緊急の課題に、安保条約に対する態度の違いを超えてとりくむという「二重のとりくみ」が重要になるという立場から修正・補強。〔憲法と民主主義の分野〕では、差別と分断をあおる排外主義に反対する立場や、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)を保障する立場を明記します。
〔経済的民主主義の分野〕では、雇用と労働、SRHR、財政と税制に関わって修正・補強を行います。
志位氏は、それぞれの内容を詳述した上で、ここで示した改革が、「『ルールなき資本主義』という日本経済の構造的弱点をただし、新自由主義による暮らしと経済の深刻な行き詰まりを打開する、抜本的な民主的対案の提唱となっている」と述べました。
第5章「社会主義・共産主義の社会をめざして」
第5章「社会主義・共産主義の社会をめざして」では、全体的な改定を提案します。
全体の構成を、第16節「社会主義・共産主義の社会の基本的な特徴」、第17節「社会主義的変革の時期―過渡期においての党の方針」、第18節「発達した資本主義国での社会主義的変革のもつ意義と壮大な可能性」へと整理します。
第16節では、現綱領の叙述を全体的にあらためます。三つの段落にわたって、(1)社会主義・共産主義の社会の「最大の特徴・目的」が「人間の自由」の全面的な開花であることを正面から打ち出し、「生産手段の社会化」は、それを実現するための条件・手段であるとの位置づけを明瞭にし(2)未来社会における自由の特徴を「資本主義の特徴である利潤第一主義からの自由」という角度から明らかにし(3)「各個人の自由で全面的な発展」を未来社会の基本原理として明記し、その保障となるのが「労働時間が抜本的に短縮され、すべての人間が十分な自由な時間をもつことである」と規定します。
志位氏は、三つの段落での規定が、「マルクスの未来社会論の中心点、その輝きの核心部分を、党綱領の規定にすえたものとなっている」と強調。その上で、改定案の内容にかかわる理論的問題をマルクスの文献なども紹介しながら詳しく語りました。
また、04年の改定が明らかにした未来社会論の積極的意義と過渡的制約にも言及。その上で、今回の改定案は、現綱領に残された問題を乗り越え、現綱領で未清算のまま残ったレーニンに由来する二つの「国際的な定説」―未来社会における生産力と国家権力に関する旧来の理論を清算し、マルクスの本来の立場を明らかにした歴史的意義があると強調しました。
第17節では、現綱領の内容を生かし、一部整理し、補強します。
現綱領では、日本における社会主義への道に関わって、「次の諸点にとくに注意を向け、その立場をまもりぬく」として、(1)生産者が主役という社会主義の原則(2)市場経済を通じて社会主義に進む―という二つの点を明記していますが、改定案ではこれに加え、思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由を厳格に保障し、「指導」政党や「国定の哲学」を認めないという規定を第三の点として位置づけます。志位氏は、旧ソ連の誤りを絶対に再現させてはならないという立場からの「合理的な整理」だと強調しました。
さらに、過渡期の任務として、支配・被支配のなごりを一掃し、真に自由で平等な人間関係をつくる変革を補強。節の最後は、「社会主義・共産主義の日本では、人間がほんとうの意味で、社会の主人公となり、『国民が主人公』という民主主義の理念は、政治・経済・文化・社会の全体にわたって、社会的な現実になる」との一文で締めくくります。
第18節の補強箇所は一点だけで、社会主義的変革の事業が「特別の困難性をもつとともに、人間の自由が飛躍的に拡大する壮大な可能性をもった事業」であることを強調します。志位氏は、こうした綱領上の位置づけを踏まえ、この間、欧州や北米の左翼・進歩勢力との交流と連帯を進めてきたと語りました。
最後に志位氏は、「自由な時間」―「自由に処分できる時間」論を軸とした未来社会論の探究は、遠い将来の問題―未来社会の問題にとどまらない今日的意義をもつと強調。(1)現代の労働者・青年の切実な願いにこたえ、民主的結集を進める力(2)労働時間短縮を求める現代のたたかいは、未来社会に「地つづき」でつながっている(3)「自由な時間」論は、21世紀のさまざまな課題を解決するキー・コンセプト(鍵となる概念)(4)旧ソ連流の社会主義論を根底から克服する大きな力―という視点から詳しく語りました。
この中で志位氏は、改定案は、マルクスの未来社会論の一番の輝き―「人間の自由」「各個人の完全で自由な発展」「自由な時間」を、綱領の未来社会論の中心にすえるとともに、旧ソ連流の社会主義論―社会主義に関わる一連の「国際的な定説」を全面的に清算し、それと根本的に決別する歴史的意義をもつと指摘。党が、こうした未来社会論の発展を勝ち取ることができたのは、自主独立の路線を貫き、科学的社会主義の理論の刷新と発展のために力をつくしてきた先人たちの苦闘と努力、先駆的探究の積み重ねがあったことを強調し、「改定綱領案を力に、日本を変え、世界に働きかけ、強く大きな党をつくるたたかいに新たな決意でたちあがろう」と訴え、報告を締めくくりました。

