日本共産党の人権・ジェンダー平等訪韓調査団が9月に韓国ソウル市などで同国の性売買や労働問題などの取り組みを調査した報告が、1日から動画配信されています。団長の吉良よし子参院議員、仁比聡平参院議員、梅村早江子元衆院議員は現地の人たちとの交流で響き合い、胸を熱くした経験を語っています。
https://www.youtube.com/watch?v=6CwlzP3RS08
「夜の街の路上に、10代の少女が『性を売る側』として立つ。こんな日本社会の状況をなんとかしたい」。冒頭、吉良さんは調査の動機をこう述べ、性売買問題での日本の施策の深刻な遅れを指摘しました。
(写真)韓国視察報告公開収録会で報告する吉良よし子(中央)、仁比聡平(右)の両参院議員。左は梅村早江子党ジェンダー平等委員会委員=9月24日、党本部
「韓国で驚かされたのが、支援の枠組みです」。吉良さんたちは性平等家族省と女性自活支援センター「へボム」で話を聞きました。韓国では、性売買で「売る側」の人はすべて「被害者」として支援につなげるとりくみを進めており、同センターで最大4年間の生活再建(自活支援)が保障されています。借金の解決、医療支援、住居の確保などとともに資格取得などの教育支援や就労支援を受け、センター内の共同作業所やインターン参加で同国の最低賃金水準の賃金約15万円を得ます。費用負担なしで国家資格の取得を目指すこともできます。
全国に28カ所の性売買被害相談所、49カ所のシェルター(一時避難)、13カ所の自活支援センターがあります。その運営は民間に任されていますが、人件費など必要経費は全て公費です。吉良さんが「日本にはない支援だ」と、驚きを同省担当者に伝えると、「当たり前のことです。国の責任です」と応じました。
韓国の支援制度には、脱性売買の市民運動の要望が反映していました。2000、02年に性売買店舗で火災が相次ぎ、多くの女性が犠牲になりました。女性団体などが国の責任を訴え、法改正の機運を高めました。「性売買は女性に対する暴力」「性売買従事者は保護の対象」だと明記した性売買防止法が04年に成立。「売る側」が性売買を脱し、生活を再建する国家の責任を明確にしました。
吉良さんは「『売る側の女性たちは全て被害者』だという市民運動の認識を政府が共有していました。日本でも『性売買従事者は被害者』という認識に立った法改正を求めたい」と強調します。
買えば“犯罪者”
(写真)永登浦を調査し、「性売買NO(ダメ)人権KNOW(知ろう)」の動く電光マークを見る(右から)吉良さん、梅村さん、仁比さん=9月16日、ソウル市内
04年の法改正で「買春」に対する社会の認識も変わりました。性売買あっせん処罰法では「買春者」と性売買あっせん業者が処罰対象です。性売買経験当事者ネットワーク「ムンチ」のムム代表は、「警察は女性への取り締まりから業者の取り締まりへと変化している。法の力は大きい」と話しました。
法律にはジェンダー平等に基づく暴力の予防教育が義務づけられており、小中高の子どもたちだけでなく、公務員向けに性売買防止に関する性教育を行っています。
仁比さんは、ソウル市内唯一の性売買集結地「永登浦(ヨンドゥンポ)」の視察で、変化を実感しました。市内に四つあった性売買集結地は三つが消滅。永登浦は未成年の立ち入りを禁じ、道路には電光マークで「性売買NO、人権KNOW(知ろう)」との言葉を映し出しています。「性産業が公然と営業できない状況になっています。法改正で社会が変化していることを学ぶ必要があります」
韓国では、「買う側」だけでなく「売る側」も“自発的”であれば処罰対象です。「性売買問題解決のための全国連帯」のシンパク・ジニョン前代表は、処罰の規定が「“犯罪者”という烙印(らくいん)を押されれば、未来がなくなる」という恐怖を、「売る側」の女性に植え付けていると指摘。さらなる法改正に向け運動を広げる決意を語っていました。
日本の侵略に由来
調査団が視察した植民地歴史博物館のパンフレットには、日本帝国主義による侵略・植民地支配からの独立のたたかいを、現代につながる歴史として記述しています。戦後の軍事独裁政権に対する民主化闘争、さらに現在の人権尊重の取り組みに引き継がれているとしています。
懇談で、「共に民主党」のキム・ジュヨン議員は「日本は近くて遠い国です。近くて近い国になるために日本が国家として過去を清算することが必要です。日本の国会議員と連帯をしたい」と語りました。
韓国の性産業は、日本が侵略して持ち込んだ公娼制が由来です。
吉良さんは、「ムンチ」などとの懇談で、日本の侵略戦争と植民地支配のもとでの公娼制や、日本軍「慰安婦」として性的搾取したことへの謝罪を表明。日本共産党は日本政府に心からの反省と謝罪を求めていると伝えるとともに、過去の歴史への反省がない政府のもと遅れているジェンダー平等を前に進めたいと語り、大きな拍手で迎えられました。
吉良さんは、06年の志位和夫委員長(当時)の初訪韓以来、党が相互交流・連帯を続けてきたとして、こう強調しました。「戦前の日本の植民地支配と侵略戦争に命がけで反対し、朝鮮独立を求めてたたかったのが日本共産党です。私たちだからこそ、果たせる役割があります」
労働基準 是正こそ
(写真)「民主社会のための弁護士会」労働委員会と党調査団のメンバー=9月16日、ソウル市内
韓国では、長時間労働が社会問題化しています。政府は「ワーク・ライフ・バランス」の観点から「週4・5日制」へと、長時間労働の是正に取り組んでいます。賃金を下げずに労働時間短縮を行う企業に奨励金を出すなどしています。
一方、調査団が懇談した「民主社会のための弁護士会」(民弁)のキム・サンウン労働委員会委員長は、人工知能(AI)など特定産業や特区での規制緩和など、長時間労働の原因をつくってきたのは、政府であり、労働基準の見直しこそが必要だと批判しました。
民弁の弁護士は、企業労働者や非正規労働者、移住(外国人)労働者の運動に団結し、権利を守る裁判などでたたかっています。仁比さんは懇談で、自身も自由法曹団の一員として労働争議を弁護してきたとして、「民弁の皆さんとお会いでき、胸を熱くしている」と語りました。
「韓国政府は、基本的人権の尊重など国際人権の水準に引き上げる努力をしています。他方で、グローバル経済のもと大企業・富裕層の利益を増大させ、その結果としての巨大な格差に葛藤している。労働時間の短縮をみすえた労働基準を取り戻すたたかいが必要だと、民弁の皆さんと確認し合えたことは重要でした」

