「学者の国会」とされる日本学術会議が1日、「国の特別の機関」から特殊法人に移行しました。
昨年6月に成立した学術会議法人化法は、▽首相任命の監事や内閣府の評価委員会▽外部者による運営助言委員会▽会員の選定助言委員会―を設置し、学術会議の運営、財政、人事に政府が幾重にも介入できるしくみを規定しています。学術会議側の度重なる懸念や抜本修正の意見を顧みず、政府が強行しました。
法人化法の下で学術会議の活動がゆがめられれば、歴代会長6氏が危惧した「日本の学術の終わりの始まり」になりかねません。学術会議は科学者の代表機関としての独立性を堅持できるのか、歴史的岐路にあります。
■国策への貢献要求
1日の総会で新会長に選ばれた加藤和人・大阪大学名誉教授は「学術の独立性と自主性を守り、社会から信頼され、必要とされる組織をつくる」と表明しました。政府はこの立場を尊重し、いかなる介入もすべきではありません。
法人発足にあたって木原稔官房長官は「科学技術の種を社会実装することで新技術立国を実現していけるよう期待している」とし、学術会議が国策に役立つよう求めました。
高市早苗政権は「戦争する国づくり」への科学者の動員を図り、デュアルユース(軍民両用)技術を広く取り込んで軍事研究に誘導する「学術の軍事化」をすすめています。こうした国策におとなしく従う学術会議に変質させるのが、政府・自民党が学術会議法人化を推進した最大の狙いです。
学術会議は、戦前の科学者が戦争に協力したことへの反省から設立されました。8月の総会では日本学術会議憲章(案)を法人となる学術会議に申し送りました。そこでも「(学問上の)真理は、人類の知的公共財であり、現在及び未来の人々に豊かさと幸福、そして平和をもたらされねばならない」とのべています。
法人化法の付帯決議も「科学者の総意の下に」「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献する」という学術会議設立の原点をのべ、その尊重を求めました。政府はこれを守るべきです。
法人化の発端は、2020年10月の菅義偉首相(当時)による会員任命拒否です。「学問の自由を侵害する」との批判に対して政府・自民党が、学術会議の組織形態見直しにすり替えました。政府は任命拒否をいまだに撤回していません。
法人化法の国会付帯決議は、任命拒否について「国民への説明責任を果たす」よう政府に求めています。加藤新会長は「納得できる説明はあるべきだ」とのべています。政府は任命拒否の経過と理由を全面的に明らかにすべきです。
■市民との共同広げ
学術会議の独立性は、科学者コミュニティーと国民からの支持に支えられています。学術会議も「市民社会との対話による学術の信頼確保」(憲章案)を重視しています。日本の平和と民主主義に関わる問題として、多くの科学者と市民が共同し、学術会議の独立性を守る運動を広げることが求められます。

