「何かを知りたいということにもともと興味があった」。ノーベル化学賞受賞が決まった後の記者会見でこう語った硤合憲三(そあい・けんそう)・東京理科大学名誉教授。そこからは26年前に取材した時と同様、変わらぬ真理探究への熱い思いを感じました▼生物はタンパク質を構成するアミノ酸など、鏡に映る右手と左手のように重なり合わない構造の2種類の化学物質の一方だけをつくりだします▼硤合さんたちは、長年の謎だったそのしくみの解明に迫る化学反応を発見し実証しました。研究成果は生命の起源の解明へとつながると期待されています▼ノーベル物理学賞では、千葉大学の研究者が参加する南極点の氷の下の素粒子ニュートリノの観測装置(アイスキューブ)の発案者が選ばれました。遠い宇宙からやってくる超高エネルギーニュートリノを検出し、宇宙や地上の望遠鏡と連携することで、不明だった発生源の特定に成功しました▼毎年のように日本人がノーベル賞を受賞しながら、日本の研究力の低下が問われています。基礎研究を支える研究予算が不足する一方で、大軍拡予算の流れが強まっているのが実態です▼1960年代の米国で、大型加速器の建設に対し「国の防衛に役立つのか」と問われ研究所長はこう答えたといいます。「防衛にはまったく貢献できないが、米国は(文化や科学の発展において)守るに値する国になる」。どちらの道を進むべきか、明らかではないでしょうか。
2026年10月10日

